秘すれば花 テスト対策問題28問|風姿花伝・解答つきPDF

定期テスト対策

世阿弥『風姿花伝』第七「別紙口伝」の一節「秘すれば花」は、能楽論の核心「秘するがゆゑに大用(大きな効果)がある」を説く定番教材です。「べからず」「なり」「ば」の識別、逆説的な内容の読み取り、対句表現がよく問われます。

本文(傍線①〜⑮)

秘(ひ)する花を知る事。秘すれば花なり秘せずば花なるべからずとなりこの分け目を知る事、肝要(かんえう)の花なり。そもそも、一切(いつさい)の事、諸道芸(しよだうげい)において、その家々に秘事(ひじ)と申すは、秘するによりて大用(だいよう)あるが故(ゆゑ)なり。しかれば、秘事といふ事をあらはせばさせる事にてもなきものなり。これを「させる事にてもなし」と言ふ人は、いまだ秘事といふ事の大用を知らぬ故なり。
ただ珍(めづら)しきが花ぞと、みな人知るならば、「さては珍しき事あるべし」と思ひまうけたらん見物衆(けんぶつしゆ)の前にては、たとひ珍しき事をするとも見手(みて)の心に珍しき感はあるべからず。見る人のため、花ぞとも知らでこそ、為手(して)の花にはなるべけれ。されば、見る人の、ただ思ひのほかに面白(おもしろ)き上手(じやうず)とばかり見て、これは花ぞとも知らぬが、為手の花なり。さるほどに、人の心に思ひもよらぬ感を催(もよほ)す手立(てだて)、これ花なり。たとへば、弓矢(ゆみや)の道の手立にも……
〈中略〉
敵方(てきはう)用心をせぬときは、こなたの勝つこと、なほたやすかるべし。人に油断をさせて勝つ事を得るは、珍しき理(ことわり)の大用なるにてはあらずや。さるほどに、わが家の秘事とて、人に知らせぬをもて、生涯(しやうがい)の主(ぬし)になる花とす。秘すれば花、秘せずば花なるべからず。

語注 諸道芸=あらゆる芸の道。 思ひまうく=前もって予想して待ち構える。 手立=方法。やり方。 敵方=敵。相手方。 なほ=いっそう。さらに。 理=道理。わけ。 さるほどに=そういうわけで。 生涯の主になる花=役者の一生を支える中心となる花。 ※「花」はここでは植物の花ではない。この文章全体の鍵になる語。 ※「秘事」「大用」「させる」「見物衆・見手」「為手」「上手」は意味を答える問題があるので、ここでは意味を示さない。 ※「大用」の読みは「たいよう」「だいよう」「だいゆう」と本によって分かれる。お使いの教科書のふりがなに合わせること。 ※〈中略〉の部分では、弓矢(戦)のたとえを引き、思いもよらぬ手立てで強敵に勝つことがあると説いている。 ※本文は『風姿花伝』第七「別紙口伝」から。「大用あるが故なり」を「大用のあるがゆゑなり」とする本もある。冒頭の言い回しも教科書によって異なる場合があるので、お使いの教科書の本文に合わせて読むこと。

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使い方のおすすめ。①まず何も見ずに解く → ②解答で答え合わせ → ③まちがえた設問の番号と同じ傍線を本文で探して読み直す。

設問

A 語句の意味と読み

  1. ③「この分け目を知る事、肝要(かんえう)の花なり」の「肝要」の意味を書け。
  2. ④「秘事(ひじ)」の意味を書け。
  3. ⑤「大用(だいよう)」の意味を書け。
  4. ⑦「させる事にてもなきものなり」の「させる」の品詞と意味を書け。
  5. ⑨「たとひ珍しき事をするとも」の「珍し」の、ここでの意味を書け。
  6. ⑩「見手(みて)の心に珍しき感はあるべからず」の「見手」とは誰のことか。同じ段落にある別の言い方も挙げて答えよ。
  7. ⑪「花ぞとも知らでこそ、為手(して)の花にはなるべけれ」の「為手」とはどのような人か。今の能では何と呼ばれるかもあわせて書け。

B 文法

  1. ①「秘すれば花なり」の「秘すれ」について、終止形と活用の種類を書け。また、そう判断できる根拠を本文中の語から示せ。
  2. ①「秘すれば」と②「秘せずば」では、「ば」の表す条件がどうちがうか。接続する活用形にふれて書け。
  3. ②「秘せずば花なるべからずとなり」の「なる」と「べから」を、それぞれ文法的に説明せよ。
  4. ⑥「あらはせば」の「ば」は、①「秘すれば」の「ば」と同じ用法か。理由もつけて答えよ。
  5. ⑧「思ひまうけたらん」の「たら」と「ん」を、それぞれ文法的に説明せよ。
  6. ⑨「たとひ珍しき事をするとも」の「とも」の意味・用法を書け。
  7. ⑪「花ぞとも知らでこそ、為手(して)の花にはなるべけれ」について、「で」の意味・用法と、係り結びの係助詞・結びの語を書け。

C 指す内容

  1. ③「この分け目を知る事、肝要(かんえう)の花なり」の「この分け目」とは、何と何の分かれ目か。
  2. ⑫「思ひのほかに面白(おもしろ)き上手(じやうず)」とは、観客が誰をどのように見ていることを言うのか。「上手」の意味も明らかにして書け。
  3. ⑬「これ花なり」の「これ」は何を指すか。本文中から抜き出して答えよ。
  4. ⑭「人に油断をさせて勝つ事を得る」の「人」とは、このたとえの中では誰を指すか。本文中の語で答えよ。

D 口語訳

  1. ①②「秘すれば花なり。秘せずば花なるべからずとなり」を口語訳せよ。
  2. ⑥⑦を含む「秘事といふ事をあらはせば、させる事にてもなきものなり」を口語訳せよ。
  3. ⑪「花ぞとも知らでこそ、為手(して)の花にはなるべけれ」を、直前の「見る人のため」も含めて口語訳せよ。
  4. ⑮を含む「わが家の秘事とて、人に知らせぬをもて、生涯(しやうがい)の主(ぬし)になる花とす」を口語訳せよ。

E 内容・記述

  1. ⑩「見手(みて)の心に珍しき感はあるべからず」とあるが、それはなぜか。四十字以内で書け。
  2. ⑭「人に油断をさせて勝つ事を得る」という戦のたとえを引くことで、世阿弥は何を言おうとしているのか。七十字以内で説明せよ。
  3. ⑮「生涯(しやうがい)の主(ぬし)になる花」とあるが、世阿弥は何を役者一生の花だと言っているのか。四十字以内で書け。

F 文学史・思想

  1. この文章の出典の書名・作者と、この一節が収められている巻の名を書け。
  2. ①「秘すれば花なり」の「花」のように、『風姿花伝』でいう「花」とはどのようなものか。簡潔に書け。
  3. 世阿弥が父とともに能を大成した時代と、その芸を保護した室町幕府の将軍の名を書け。

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解答と解説

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A 語句の意味と読み

問1 いちばん大切なこと。肝心なこと。
└ 「要(かなめ)」=物事の中心。ここは「何より大切な花」

問2 家々に代々伝えられる秘密の技や工夫。秘伝。
└ 外に漏らさず、後継者だけに伝えるもの

問3 大きな働き。大きな効果。
└ 「用」=はたらき。「秘するによりて大用あるが故なり」=秘密にするからこそ大きな効果が出る、という文脈から考える

問4 連体詞。下に打消の語(なき)を伴って「たいした〜(ではない)・これといった〜(ない)」の意を表す。
└ ★使役の助動詞ではない。下の打消とセットで見る

問5 (観客にとって)思いがけない。意外だ。(一般には「目新しい・新鮮だ」の意)
└ 「めったにない」より「思いがけない」でとると通る

問6 見る人。観客。同じ段落の「見物衆」と同じものを指す。
└ 「〜手」は人を表す。「見る手=見る人」と考える

問7 演じ手。能役者。今の能の「シテ(主役)」にあたる。
└ 「為(す)る手」=演じる人。「見手」と対になる語

B 文法

問8 終止形=秘す。サ行変格活用。連体形が「秘する」となる(「秘(ひ)する花」「秘するによりて」)ことから分かる。
└ ★サ変は「せ・し・す・する・すれ・せよ」。連体形「秘する」が決め手

問9 ①は已然形「秘すれ」+「ば」で順接の確定条件(〜ので・〜すると)。②は打消の助動詞「ず」の未然形に「ば」が付いた形と見るのが標準で、順接の仮定条件(もし〜ないならば)を表す。
└ ★なお②は「ず(連用形)+係助詞『は』」が濁ったものと見る説もあるが、仮定条件になる点は変わらない。お使いの教科書の説明に合わせること

問10 「なる」=断定の助動詞「なり」の連体形。「べから」=助動詞「べし」の未然形。下の打消「ず」と続いて「べからず」となり、「〜はずがない」(打消当然)の意を表す(「〜できない」と不可能でとる説もある)。
└ ★「べからず」は打消当然(〜はずがない)とする説と不可能(〜できない)とする説がある。どちらでも「花にはなり得ない」という結論は変わらない。教科書の説明に合わせること

問11 同じ。四段動詞「あらはす」の已然形「あらはせ」に付いた「ば」で、順接の確定条件(〜すると)を表すから。
└ ★仮定なら「あらはさば」と未然形になるはず。ここは「〜するといつも」という恒常条件なので、「明かせば」ではなく「明かすと」と訳す

問12 「たら」=完了(存続)の助動詞「たり」の未然形。「ん(む)」=助動詞「む」の連体形で、婉曲(〜ような)を表す。
└ 下に体言「見物衆」が続くので連体形。「待ち構えているような観客」

問13 逆接の仮定条件を表す接続助詞。「たとえ〜しても」の意。
└ 上の副詞「たとひ」と呼応する

問14 「で」=未然形に付く接続助詞で、打消接続(〜ないで)。係助詞は「こそ」、結びは「べけれ」(助動詞「べし」の已然形)で、強意を表す。
└ ★「こそ」の結びは已然形。「知らで」=「気づかないで」

C 指す内容

問15 秘めておくか、秘めずに明かしてしまうか、の分かれ目。
└ 直前の「秘すれば/秘せずば」の対を受けている

問16 観客が演者(為手)を、「思いがけずおもしろい名人だ」とだけ見ているということ。工夫やしかけには気づいていない。
└ 「上手」は「じやうず」と読み、ここは「上手だ」ではなく「芸のすぐれた人・名人」という人を指す名詞

問17 人の心に思ひもよらぬ感を催す手立(=観客が思いもよらない感動を呼び起こす工夫)。
└ 直前の一続きがそのまま答えになる。「手立」=方法・やり方

問18 敵方(=戦う相手の敵)。
└ 直前の「敵方用心をせぬときは」を受けている

D 口語訳

問19 秘めるからこそ花なのであって、秘めなければ花ではあり得ない、ということだ。

問20 秘事というものを明かすと、たいしたものでもなくなってしまうのである。

問21 見る人にとって、それが花だとも気づかれないでこそ、演者の花になるのである。

問22 わが家の秘事として人に知らせないでおくこと、それを(役者の)一生涯の主となる花とするのである。

E 内容・記述

問23 観客が珍しい事があると予期して身構え、思いがけなさが失われるから。(三十三字)
└ 直前の「思ひまうけたらん見物衆の前にては」が手がかり

問24 相手が警戒していないところを突けば勝ちやすいのと同じで、工夫を秘めておくからこそ観客の意表をつき、大きな効果が生まれるということ。(六十五字)

問25 秘事を人に知らせず秘めておいて、観客の意表をつき続けられること。(三十二字)

F 文学史・思想

問26 『風姿花伝』/世阿弥/第七「別紙口伝」
└ 父・観阿弥の教えをもとにまとめた、日本最古の演劇論(能楽論)

問27 観客を感動させる、芸の魅力・面白さ。植物の花ではない。
└ ★「花」を植物の意味で答えると、記述問題がすべてくずれる

問28 室町時代/足利義満
└ 父は観阿弥。世阿弥は将軍義満の保護のもとで一座を率いた

【テスト直前チェック】この三つ
「秘すれば」と「秘せずば」は対。已然形+ば=確定条件、「ずば」=仮定条件。対句で並ぶので、かならず二つセットで問われる。
「花なるべからず」は品詞分解。「なる」=断定「なり」の連体形、「べから」=「べし」の未然形、「ず」=打消。訳は「花ではあり得ない」。
「知らでこそ…なるべけれ」は係り結び。「で」は打消接続(〜ないで)、結びは已然形「べけれ」。記述の答えは「観客に気づかれないからこそ花になる」に集まります。

現代語訳(全文)

「秘めておく花」というものを知ること。秘めるからこそ花なのであって、秘めなければ花ではあり得ない、ということだ。この(秘めるか秘めないかの)境目を知ることこそ、何より肝心な花なのである。そもそも、すべての物事、あらゆる芸の道において、それぞれの家に「秘事(秘伝)」というものがあるのは、秘密にすることによって大きな効果が生まれるからである。だから、秘事というものを明かすと、たいしたものでもなくなってしまう。これを「たいしたことでもない」と言う人は、まだ秘事というものの大きな効果を知らないからなのである。

ただ「珍しいものこそが花だ」と、人がみな知っているならば、「さては何か珍しいことがあるだろう」と前もって予想して待ち構えているような観客の前では、たとえ珍しいことをしても、見る人の心に「珍しい」という感動は起こりようがない。見る人にとって、それが花だとも気づかれないでこそ、演者の花になるのである。だから、見る人が、ただ思いがけずおもしろい名人だとだけ思って、これが花だとも気づかない、それが演者の花なのである。そういうわけで、人の心が思いもよらない感動を呼び起こす手立て、これが花なのである。たとえば、弓矢の道(武芸)のやり方においても……

〈中略〉

敵が警戒していないときは、こちらが勝つことは、いっそうたやすいだろう。相手に油断をさせて勝ちを得るのは、珍しさという道理が大きな効果をあらわしたものではないか。そういうわけで、わが家の秘事として人に知らせないでおくこと、それを役者一生涯の主となる花とするのである。秘めれば花、秘めなければ花ではあり得ないのだ。

※この問題は誰でも古典塾のオリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。

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