古文の読解でつまずく原因の多くは、「同じ形なのに意味がちがう語(まぎらわしい語)」の見分けです。ここでは入試で最頻出の同形異義語を集め、見分けの決め手(直前の語の品詞・活用形など)を最優先にした早見表にまとめました。試験中にパッと確認できる「決定版の一覧」として使ってください。
くわしい解説はそれぞれの個別記事にゆずり、このページは「決め手だけを一気に確認する」ための早見ページです。なお接続の説明は通説(学校文法)にしたがっています。例外的に判断が分かれる箇所には「〜の場合あり」と注記しました。

「なり」の識別

「なり」は出題のいちばん多い語です。まず直前が連体形か終止形かを見て、断定(連体形・体言に付く)か伝聞推定(終止形に付く)かを分けるのが基本です。ラ変型の語は終止形も連体形も「〜る」で同じ形になるため、その場合は意味(音・伝聞が根拠かどうか)で判断します。
| 正体 | 見分けの決め手(直前の語など) | 例 |
|---|---|---|
| 断定の助動詞「なり」 | 直前が体言または連体形。「〜である」と訳せる。「に+あり」に開けることが多い | 男なり/花の咲くなり(=咲くのである) |
| 伝聞・推定の助動詞「なり」 | 直前が終止形(ラ変型は連体形)。音・声・人のうわさが根拠で「〜という/〜ようだ・〜が聞こえる」と訳せる | 笛の音すなり(=笛の音が聞こえるようだ)/男ありけりとなむ言ふなる |
| 形容動詞(ナリ活用)の活用語尾 | 「〜げ」や状態・性質を表す語の一部。「静かなり」「あはれなり」のように一語で意味を持つ | 静かなり/あはれなり/うつくしげなり |
| ラ変動詞「成る/鳴る」 | 「〜になる」「鳴る」の意味。動詞そのもの | 春になりぬ/鐘の鳴る |
| 四段動詞の一部(〜る+活用) | 動詞の活用形として「なり」の音になる場合。文意で動詞と判断 | (文脈により動詞と判断) |
ポイント:迷ったら「に+あり」に置きかえられるかを試すと断定が見抜けます。逆に、音や人の話が根拠で「〜らしい・〜が聞こえる」と訳せれば伝聞推定です。
「に」の識別

「に」は種類が多く、まず直前の品詞・活用形を確認します。とくに重要なのは、断定の助動詞「なり」の連用形「に」(下に「あり・侍り・て」が来やすい)と、完了「ぬ」の連用形「に」(下に「き・けり・たり」が来やすい)の区別です。「に」のすぐ下にある語を手がかりにすると速く解けます。
| 正体 | 見分けの決め手(直前・直後の語など) | 例 |
|---|---|---|
| 格助詞「に」 | 直前が体言(連体形)。場所・時・対象・帰着点などを示す | 京に着く/夜に語る |
| 接続助詞「に」 | 直前が連体形。下に文が続き順接・逆接・単純接続(〜ところ・〜けれども・〜ので)を表す | 見るに(=見ると)/待てど来ぬに(=来ないのに) |
| 断定の助動詞「なり」の連用形「に」 | 直前が体言・連体形で、下に「あり・侍り・おはす」や「て」が来る。「〜である」と訳せる | 京にてありし(=京であった)/武士にてはべり |
| 完了の助動詞「ぬ」の連用形「に」 | 直前が連用形で、下に「き・けり・たり・けむ」が来る。「〜てしまった」と訳せる | 散りにけり(=散ってしまった)/往にき |
| 形容動詞(ナリ活用)の活用語尾 | 「静かに」「あはれに」のように一語で状態を表す。連用形の「〜に」 | 静かに過ぐ/あはれに思ふ |
| 副詞の一部 | 「げに」「さらに」「つひに」など一語の副詞に含まれる「に」 | げに/さらに/つひに |
ポイント:「にき・にけり・にたり」=完了の「に」、「にて・にあり」=断定の「に」と、下の語でセット暗記しておくと試験で迷いません。
「る」の識別

「る」は直前の活用形で大きく分かれます。サ未四已(サ変の未然形・四段の已然形)に付くのが完了・存続「り」、未然形に付くのが受身・尊敬・自発・可能の「る」です。動詞そのものの活用語尾である場合もあります。
| 正体 | 見分けの決め手(直前の活用形など) | 例 |
|---|---|---|
| 完了・存続の助動詞「り」の連体形「る」 | 直前がサ変の未然形・四段の已然形(サ未四已)。「〜ている・〜てある・〜た」と訳せる | 咲ける花(=咲いている花)/せる(サ変+り) |
| 受身・尊敬・自発・可能の助動詞「る」 | 直前が四段・ナ変・ラ変の未然形(ア段音)。「〜れる・お〜になる・自然と〜・〜できる」 | 人に笑はる(受身)/帝、思さる(尊敬) |
| 自発の「る」 | 受身・尊敬などと同じ「る」だが、心情語(思ふ・泣く・案ず等)に付いて「自然と〜される」 | 昔のことぞ思ひ出でらる(=自然と思い出される) |
| 動詞の活用語尾(一部) | 下二段・上一段などの動詞そのものの語尾 | (文脈により動詞と判断) |
ポイント:「る」の上がア段(〜あ・〜ら・〜な…の未然形)なら受身系、エ段+る(四段已然)/サ変未然+る なら完了「り」と覚えると速いです。自発は「る/らる」の意味の一つで、心情語とセットで出ます。
「ぬ」「ね」の識別

「ぬ」「ね」は、打消「ず」なのか完了「ぬ」なのかを直前の活用形で見分けます。直前が未然形なら打消、連用形なら完了が大原則です。形(連体形・終止形・已然形・命令形)と合わせて整理します。
| 正体 | 見分けの決め手(直前の活用形など) | 例 |
|---|---|---|
| 打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」 | 直前が未然形。「〜ない」と訳し、下に体言が続く・連体形で結ぶ | 知らぬ人(=知らない人) |
| 完了の助動詞「ぬ」の終止形「ぬ」 | 直前が連用形。「〜てしまった・〜た」と訳し、言い切る | 花散りぬ(=散ってしまった) |
| 打消の助動詞「ず」の已然形「ね」 | 直前が未然形。下に「ば・ど・ども」が来る、または係助詞「こそ」の結び | 知らねば(=知らないので)/来ねども |
| 完了の助動詞「ぬ」の命令形「ね」 | 直前が連用形。「〜てしまえ」と命令・強い意志で言い切る | とく往にね(=早く行ってしまえ) |
ポイント:まず上が未然形か連用形かだけを確認すれば、打消か完了かは即決できます(未然形=打消/連用形=完了)。「ね」も同じ手順で、下に「ば・ど」が続けば打消の已然形です。
「な」の識別
「な」は完了「ぬ」の未然形、終助詞、禁止の構文「な〜そ」、形容動詞の語尾など。直前の活用形と、下に続く語で見分けます。
| 正体 | 見分けの決め手(直前・直後の語など) | 例 |
|---|---|---|
| 完了の助動詞「ぬ」の未然形「な」 | 直前が連用形で、下に「ば・む・まし」などが来る。「〜てしまう(なら/だろう)」 | 散りなば(=散ってしまったら) |
| 終助詞「な」(詠嘆・禁止) | 文末に付く。詠嘆は「〜なあ」、禁止は終止形(ラ変は連体形)に付いて「〜するな」 | うつくしきかな(詠嘆)/行くな(=行くな・禁止) |
| 禁止の副詞「な」(な〜そ) | 「な」+連用形+「そ」の形(カ変・サ変は未然形)。「〜してくれるな」とやわらかい禁止 | な散りそ(=散ってくれるな) |
| 形容動詞(ナリ活用)の活用語尾 | 「静かなら」「あはれなる」など一語の状態語の一部 | 静かなる夜/あはれなり |
ポイント:「連用形+な+ば/む」=完了「ぬ」の未然形。文をはさんで「な…そ」の形が見えたら禁止です。文末で「〜なあ」と訳せれば詠嘆の終助詞です。
「し」の識別
「し」は過去「き」の連体形、強意の副助詞「し」、形容詞の活用語尾、サ変動詞「す」の連用形など。直前の活用形と、訳して意味が通るかで判断します。
| 正体 | 見分けの決め手(直前の語など) | 例 |
|---|---|---|
| 過去の助動詞「き」の連体形「し」 | 直前が連用形。「〜た」と訳せ、下に体言が続く・連体形で結ぶ | 見し人(=見た人)/ありし日 |
| 副助詞「し」(強意) | 取り去っても意味が通る。「しも」「しぞ」の形が多く、訳す必要のない強め | 今しも/世にしあらば(=この世にあるならば) |
| 形容詞の活用語尾「し」 | 「美し」「をかし」など一語の形容詞の終止形。「〜い」と訳せる | うつくし/をかし |
| サ変動詞「す」の連用形「し」 | 「〜をする」の意味の動詞。下に「て・けり」などが続く | 用意して/物見しけり |
ポイント:連用形+「し」+体言 なら過去「き」。取り去っても文が成り立てば強意の副助詞、「〜い」と訳せれば形容詞語尾です。
「らむ」の識別
「らむ」は現在推量の助動詞が基本ですが、用法(ただの現在推量か・原因推量か・伝聞婉曲か)で訳が変わります。また直前が終止形かサ変未然・四段已然かで、助動詞「らむ」か「完了り+推量む」かを見分ける場合があります。
| 正体・用法 | 見分けの決め手(直前の活用形・文脈) | 例 |
|---|---|---|
| 現在推量の助動詞「らむ」 | 直前が終止形(ラ変型は連体形)。今ごろ起きていることを推量し「(今ごろ)〜ているだろう」 | 都は今ごろ雨降るらむ(=降っているだろう) |
| 現在の原因推量「らむ」 | 同じ助動詞「らむ」だが、文中に疑問語(など・いかに等)があり「(どうして)〜なのだろう」と原因を推量 | など鳴くらむ(=どうして鳴いているのだろう) |
| 伝聞・婉曲の「らむ」 | 同じ助動詞「らむ」が連体形などで文中に使われ「〜という・〜ような」とやわらげる | 男ありけるらむ家(=男がいたとかいう家) |
| 完了「り」+推量「む」(らむ) | 直前がサ変未然・四段已然(サ未四已)のとき。「〜てしまっているだろう/〜ているだろう」と存続・完了を含む場合あり | 咲けらむ花(=咲いているだろう花)※「り」の未然形+「む」 |
ポイント:直前が終止形なら助動詞「らむ」。直前がサ変未然・四段已然(エ段音)なら、完了・存続「り」+推量「む」の可能性があります。用法(ただの推量/原因推量/伝聞婉曲)は文中の疑問語や文脈で判断します。
「なむ」の識別
「なむ」は四つの可能性があります。直前の活用形がいちばんの決め手で、未然形なら他への願望の終助詞、連用形なら強意「ぬ」+推量「む」、それ以外(取り去れる位置)なら係助詞です。
| 正体 | 見分けの決め手(直前の活用形など) | 例 |
|---|---|---|
| 係助詞「なむ」(強意) | 取り去っても文が成り立つ。文中に置かれ、結びは連体形(係り結び)。訳す必要のない強め | 花なむ咲きける(=花が咲いた/「なむ」は強め) |
| 強意の助動詞「ぬ」未然形+推量「む」 | 直前が連用形。「きっと〜だろう・〜てしまうだろう」と訳せる | 散りなむ(=きっと散るだろう・散ってしまうだろう) |
| 他への願望の終助詞「なむ」 | 直前が未然形。「(他者に)〜してほしい」と訳せる | 早く咲かなむ(=早く咲いてほしい) |
| ナ変動詞の未然形+推量「む」 | 「死ぬ」「往ぬ(去ぬ)」のナ変の未然形「な」+「む」。「死ぬだろう/行くだろう」 | 往なむ(=行ってしまおう・行くだろう)/死なむ |
ポイント:判別の順番は①直前が未然形→願望の終助詞か、ナ変未然+む(語が「死ぬ・往ぬ」ならナ変)/②直前が連用形→強意「ぬ」+「む」/③取り去れる位置で結びが連体形→係助詞。この三段階で確実に見分けられます。
まとめ:迷ったらここを見る「決め手」一覧
| 語 | いちばんの決め手 |
|---|---|
| なり | 直前が連体形・体言=断定/終止形+音や伝聞が根拠=伝聞推定。「に+あり」に開ければ断定 |
| に | 下が「き・けり・たり」=完了「ぬ」/下が「あり・て」=断定「なり」/体言+に=格助詞 |
| る | 直前がア段(未然形)=受身系/サ変未然・四段已然=完了「り」 |
| ぬ・ね | 直前が未然形=打消「ず」/連用形=完了「ぬ」 |
| な | 連用形+な+ば/む=完了「ぬ」未然/「な…そ」=禁止/文末「〜なあ」=詠嘆 |
| し | 連用形+し+体言=過去「き」/取り去れる=強意の副助詞/「〜い」=形容詞語尾 |
| らむ | 直前が終止形=現在推量「らむ」/サ変未然・四段已然=完了「り」+「む」の場合あり |
| なむ | 未然形=願望の終助詞/連用形=強意「ぬ」+「む」/取り去れて結び連体形=係助詞 |
このページは識別の「入口」です。それぞれの語について、もっとくわしい例文や練習問題は各識別記事をあわせてご覧ください。まずはこの早見表で「決め手」を頭に入れ、本文の中で実際に当てはめていくのが上達の近道です。
もっとくわしく:各語の識別記事
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