古文「し」の識別を完全攻略|直前の語の形から一発で判断できる3ステップ

古文識別図解 shi_v2 第1枚 古典文法

古文の「し」は、高校生がもっともつまずきやすい識別問題のひとつです。同じ「し」一文字が、品詞も意味もまったく違う複数の語として現れるからです。

古典って何くん
古典って何くん

「し」って全部「した」の意味じゃないの?

古典の先生
古典の先生

違うよ。「し」には大きく分けて過去助動詞「き」の連体形形容詞の終止形、それに副詞・終助詞などの一部がある。直前の語の形を見れば見分けられるよ。

この記事では「し」の識別を、最終確認できる早見表 → 全体像をつかむ判別フローチャート → 例外を先につぶすSTEP 0 → 本丸のSTEP 1・2 → 例文で仕上げるSTEP 3、の順で解説します。読み終えたあとは、入試の「し」識別問題で迷うことがほぼなくなります。

【結論】古文「し」の識別、これで完結

古文「し」の識別、これで完結。連用形接続→過去(き連体形)/語幹接続→形容詞(終止形)

「し」の識別は、直前の語の形を見ればほぼ決まります。原則は2本柱、例外がひとつ。

  • 直前が連用形(動詞・助動詞) → 過去の助動詞「き」の連体形 訳:〜た/〜ていた
  • 直前が形容詞の語幹(美・悲・楽など) → 形容詞の終止形 訳:〜い
  • 「もし」「よしや」「かし」など → 副詞・終助詞の一部。これは分解せず、ひとつの語として扱う

係り結び(ぞ・なむ・や・か)が文中にあるときは、文末の「し」は過去助動詞「き」の連体形(係助詞「ぞ・なむ」「や・か」の結びは連体形)と即決できます。先に係助詞の有無を確認する癖をつけましょう。

「し」の識別:判別フローチャート【図解】

判別フローチャート:直前の語は何形? 連用形+し→過去助動詞き連体形/語幹+し→形容詞終止形

まず「直前の語は何形か」を必ず確認します。これだけで2大分類に振り分けられます。

  • 連用形+し → 【過去】の助動詞「き」の連体形。訳「〜た/〜ていた」。特徴は体言(名詞)にかかること。
  • 語幹+し → 【形容詞】の終止形。訳「〜い」。特徴は言い切り(文末)で使われること。

「直前の語の活用形を見る」→「直後が体言か文末かを見る」の2段で、ほぼすべての「し」が分類できます。ただし、これに入れてはいけない例外があります。それを次のSTEP 0で先につぶしておきます。

【STEP 0】まず確認!「し」が一語の例外

STEP 0 まず確認!『し』が一語の例外。副詞の一部(もし・よしや・いまし)/終助詞の一部(〜かし)/副助詞「し」(君しのみ・我しなくに)

STEP 1・2に進む前に、「し」がそもそも助動詞ではないパターンを先に除外します。ここを飛ばすと、フローチャートに無理やり当てはめてしまい誤答します。

  • 副詞の一部:もし/よしや/いまし など → ひとつの副詞として扱う
  • 終助詞の一部:〜かし など → 文末の念押し表現。分解しない
  • 副助詞「し」:君のみ/ただ今も/我なくに など → 強意の副助詞

たとえば「もし誰か来たらん」の「もし」は副詞ひとつで「もしも」の意味。「も」+「し」と分解してはいけません。同様に「急ぎ参れかし」の「かし」は文末の念押しで、「か」(係助詞)+「し」(助動詞)に分解せず、ひとまとまりとして「〜してほしいものだなあ」と訳します。

つまり「し」を見たら、まずこれは『もし』『かし』のような決まった語の一部ではないか?を確認する。ここを通過してから、STEP 1・2へ進みます。

【STEP 1】連用形+し=過去の助動詞「き」の連体形

STEP 1 連用形+し=過去の助動詞「き」の連体形。体言にかかるのが基本

直前が動詞・助動詞の連用形なら、その「し」は過去の助動詞「き」の連体形です。「き」の活用は「(せ)/○/き//しか/○」。連体形が「し」、已然形が「しか」になります。

  • 訳:〜た/〜ていた
  • 活用形:連体形(已然形は「しか」)
  • 特徴:体言(名詞)にかかるのが基本

例:「見夢」は「見る」の連用形「見」+「し」で、訳は「見た夢」。「来方(きしかた)」はカ変「来」の連用形「き」+「し」で、訳は「来た方向」「過去の方角」。

連用形かどうかは、その語に「」や「けり」を続けて自然なら連用形、と判定できます(「見て」「思ひけり」など)。

カ変・サ変の特殊接続に注意
「来」(読み:きし) = カ変「来」の連用形「き」+過去助動詞「し」
しし」 = サ変「す」の連用形「し」+過去助動詞「し」

「来し」は受験頻出。漢字だけ見ると「来」の現在形に見えますが、読みは「きし」で意味は「来た」。カ変・サ変はセットで暗記しておきましょう。

【STEP 2】語幹+し=形容詞の終止形

STEP 2 語幹+し=形容詞の終止形。文末の言い切りが基本。例:めでたし/悲し/楽し

直前が形容詞の語幹なら、その「し」は形容詞の終止形を作る「し」です。ク活用なら「美」「悲」「楽」、シク活用なら「久」「恋」など。

  • 訳:〜い
  • 活用形:終止形
  • 特徴:文末で言い切るのが基本

例:「月いとめでた」(月はとても素晴らしい)の「めでた」は形容詞「めでたし」の語幹。語幹+「し」で終止形になります。

STEP 1(過去助動詞)との見分けは、直前の語に活用形があるかどうか。動詞・助動詞の連用形なら過去助動詞、形容詞の語幹(変化しない部分)なら形容詞、と判断します。

確認テクニックは「い」を付けて現代語の形容詞として成立するか。「めでた」→「めでたい」、「久」→「久しい」、「恋」→「恋しい」のように、現代語で形容詞になれば形容詞の終止形と確定できます。

【STEP 3】例文5選で総仕上げ

STEP 3 例文5選で総仕上げ。実戦で見分ける!直前の接続を見れば一発!

ここまでの3STEP(0・1・2)を、5つの例文で一気に確認します。直前の接続を見ながら「過去助動詞・形容詞・例外」のどれかを瞬時に判断しましょう。

例文1:見『し』夢のごとし

正体:過去助動詞「き」の連体形 訳:見た夢のようだ

「見」は「見る」の連用形。連用形+し=過去助動詞「き」の連体形。直後の「夢」(体言)にかかっているのが決め手。

例文2:いみじう美『し』

正体:形容詞の終止形 訳:とても美しい

「美」は形容詞「美し」の語幹。語幹+し=形容詞の終止形。文末で言い切っているのもポイント。

例文3:『もし』誰か来たらん

正体:副詞の一部・分解しない 訳:もし誰かが来たならば

「もし」は仮定を導く副詞ひとつ。「も」+「し」と分解せず、まるごと副詞として扱う。STEP 0で除外すべき例外パターン。

例文4:昔見『し』花

正体:過去助動詞「き」の連体形 訳:かつて見た花

「見」は上一段「見る」の連用形。連用形+し=過去助動詞「き」連体形。直後に体言「花」があるので連体形と確定。「き」の連体形は「し」、終止形は「き」と形が変わるので要注意。

例文5:世のはかな『し』

正体:形容詞の終止形 訳:世は儚い

「はかな」は形容詞「はかなし」の語幹。語幹+し=形容詞の終止形。文末の言い切り。

テスト直前|「し」3秒チェックリスト

  • □ 「もし」「よしや」「かし」のような決まった語の一部ではないか(STEP 0)
  • □ 直前は連用形(動詞・助動詞)? → 過去助動詞「き」の連体形(STEP 1)
  • □ 直前は形容詞の語幹? → 形容詞の終止形(STEP 2)
  • □ 文中に「ぞ・なむ・や・か」あり? → 係り結びで連体形=過去助動詞
  • □ 「来し」「しし」「かし」? → 特殊パターン、暗記で対応

まとめ|「し」は直前の語で見抜く

「し」の識別は、直前の語の形がすべての出発点です。例外(副詞・終助詞)を先に除外して、連用形なら過去助動詞、語幹なら形容詞、と振り分ける。この3段で、入試の「し」識別問題は確実に得点源になります。

係り結びとカ変・サ変の特殊接続は別枠で頭に入れておきましょう。文中に「ぞ・なむ・や・か」を見つけたら、文末の「し」は連体形=過去助動詞と即決できます。

例文を声に出して何度も読み、「直前の語→正体」の反応を体に染み込ませてください。本番で迷うことはなくなります。

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