古文の重要名詞をやさしく解説|つとめて・ほど・ありさま・よし など頻出語

古文の重要名詞 図解(つとめて=早朝、ほど=時・身分、よし=理由・由緒) 古文単語

古文の名詞には、形は今と同じなのに意味が大きくずれているものがたくさんあります。たとえば「つとめて」は「勤めて(がんばって)」ではなく「早朝」。「ほど」のように時間・距離・身分など意味がいくつもある多義語もあります。こうした名詞を現代語の感覚のまま読むと、文の意味が丸ごとずれてしまいます。

生徒
生徒先生、「つとめて」って「がんばって」じゃないんですか…?意味が全然ちがってびっくりしました。
先生
先生いいところに気づいたね。「つとめて」は「早朝」。形が今と同じ名詞ほど、現代語の感覚をいったん横に置くのがコツだよ。

この記事では、入試で頻出の「現代語と意味がずれる名詞」「時を表す古語」を、表と作例でやさしく整理します。とくに一つの言葉が複数の意味を持つ多義語は、「文のどこで、どう訳し分けるか」までセットで押さえましょう。読み終えるころには、知っている名詞でも油断せず正しい意味を選べるようになります。

時を表す古語──「つとめて」「あけぼの」「おり」「ついで」

まずは「時」に関する名詞です。とくに「つとめて」は最頻出。現代語の「勤めて」とまったく関係がなく、「早朝」、または「(何かがあった)次の朝=翌朝」を表します。「あけぼの」は夜が明けてほのぼのと明るくなるころ、つまり「夜明け」です。下の表でまとめて覚えましょう。

意味ひとことメモ
つとめて①早朝 ②(何かがあった)翌朝「勤めて」と無関係。前夜の出来事を受けると「翌朝」
あけぼの夜明け・明け方「春はあけぼの」。空がほのぼの明るくなるころ
あした(朝)①朝 ②翌朝「あした=明日」ではない。夜に対する「朝」
おり(折)時・場合・季節・機会「その折=そのとき」。タイミングの良い「おり」も
ついで(序)①順序・次第 ②機会・おり「事のついで=物事の順序」。今の「ついでに」とは別

※「あした」は現代語の「明日(みらいの日)」ではなく、夜と対になる「朝」のこと。前夜の出来事を受けて「翌朝」の意味にもなります。「ついで」も、今の「ついでに買う」のような軽い意味より、「順序・次第」「ちょうどよい機会」を指すのが古文の基本です。

現代語と意味がずれる頻出名詞──表でまとめて確認

次に、様子・理由・気持ちなどを表す名詞です。「ありさま」「ゆゑ」「け」「けしき」「こころ」「ほい」はどれも頻出で、現代語のままでは取りにくいものばかり。多義語には複数の意味を並べてあるので、文脈に合うものを選ぶ練習をしましょう。

意味(おもなもの)ひとことメモ
ありさま様子・状態・ようす「在り様」。人や物事のありよう
ゆゑ(故)①理由・原因 ②由緒・由来「〜のゆゑに=〜なので」。「ゆゑある=由緒がある・趣がある」
け(気)様子・気配・感じ「け疎し」「け近し」など他語と結びつく。「〜のけ=〜の感じ」
けしき(気色)①様子・ありさま ②きげん・意向 ③きざし自然の「景色」ではない。人の様子・機嫌を表すのが基本
こころ①心・気持ち ②趣意・意味 ③分別・思慮 ④情趣を解する心「歌のこころ=歌の意味・趣旨」。今より広い
ほい(本意)かねてからの望み・本来の願い/本来の趣旨「ほいなし=不本意だ・残念だ」。発音は「ほい」

※注意したいのが「けしき(気色)」です。現代語では「景色(自然のながめ)」を思い浮かべますが、古文の「けしき」は人の「様子」や「機嫌・意向」を表すのが基本。「けしきあし=機嫌が悪い」のように使います。「こころ」も、気持ちだけでなく「歌のこころ(=歌の意味・趣旨)」「こころなし(=思慮・情趣がない)」のように広く使われます。

先生
先生「けしき」を「景色」と訳すのが、いちばん多いミスなんだ。古文では人の様子や機嫌。ここでしっかり切り替えておこう。

最重要の多義語「ほど」──時間・距離・身分まで

名詞の多義語の代表が「ほど」です。一語で時間・距離(広さ)・程度・身分(年齢)と、いくつもの意味を持ちます。どれになるかは、いっしょに使われている言葉や文脈で決まります。下の表で意味の幅をつかみ、訳し分けの感覚を養いましょう。

「ほど」の意味訳の例見分けの手がかり
時間・ころ・あいだ〜のころ・〜のあいだ・しばらく時を表す語と一緒(「そのほど」「ほどなく」)
距離・広さ・大きさ〜ほどの距離・広さ・大きさ場所・空間の話の中で
程度・ぐあい〜の程度・〜のぐあい状態の度合いを言うとき
身分・年齢身分・分際・年ごろ人の格や年について述べるとき(「ほどほど=身分相応」)

たとえば「ほどなく」は時間で「まもなく」、「ほどへて」は「時がたって」。一方、人の話の中で「ほど」が出れば「身分・年齢」を指すことが多い、というように、まわりの言葉から意味を絞り込みます。

生徒
生徒同じ「ほど」なのに、時間だったり身分だったり…どうやって見分けるんですか?
先生
先生まわりの言葉が手がかりだよ。「ほどなく」のように時を表す形なら時間、人の格を述べる流れなら身分。文脈で一つに絞るのがポイントだ。

多義語「よし(由)」の訳し分け

形容詞「よし(良い)」とまぎらわしいですが、名詞の「よし(由)」も超頻出の多義語です。大きく①理由 ②由緒・いわれ ③手段・方法 ④〜とのこと(伝え聞いた内容・趣旨)の意味があります。とくに④の「〜とのこと・〜という趣旨」は、手紙や報告・伝聞の場面で頻出なので必ず押さえましょう。

「よし(由)」の意味訳の例使われる場面
理由・わけ〜の理由・わけ原因や事情を述べるとき
由緒・いわれ由緒・趣・風情「よしある=由緒がある・趣がある」
手段・方法〜する方法・手だて「よしなし=方法がない・つまらない」
〜とのこと・趣旨〜という趣旨・〜とのこと伝聞・手紙・報告(「〜よし申す=〜と申し上げる)」

※「よしなし」は文脈で「①方法がない ②由緒がない ③つまらない・どうしようもない」と訳が変わります。「ゆゑ(故)」と「よし(由)」はどちらも「理由・由緒」の意味を持つ近い言葉ですが、「よし」だけが「〜とのこと(趣旨)」の意味を持つ点が大きな違いです。

例文で確認しよう

  • 「冬はつとめて」(枕草子)=冬は早朝(が趣深い)
  • ほどなく夜も明けぬ」=まもなく(時間をおかず)夜も明けてしまった
  • 「その人のほどにあらず」=その人の身分(に釣り合う相手)ではない
  • 「来たらぬよしを告げけり」=(その人が)来ないということ(趣旨)を告げた
  • けしきあしくて立ち去りぬ」=機嫌が悪くて立ち去ってしまった
  • 「年ごろのほいかなひぬ」=長年の願い(かねての望み)がかなった

※一つめは『枕草子』の有名な一節、ほかは文法的に正しく作った例文(作例)です。「ほど」が時間か身分かは、まわりの言葉で決まるのがよく分かります。「来たらぬよし」のように、「よし」は前の文全体を受けて「〜ということ・〜という趣旨」とまとめる働きをすることも覚えておきましょう。

覚え方のポイント

  • 「つとめて=早朝」を最優先で暗記…「勤めて」と無関係。前夜の出来事の話なら「翌朝」と訳し分ける。「あけぼの=夜明け」「あした=朝・翌朝」もセットで。
  • 多義語は「意味の地図」で覚える…「ほど」は時間・距離・程度・身分の4方向、「よし」は理由・由緒・手段・〜とのことの4方向。一語に複数の引き出しがあると意識する。
  • 「けしき=景色」は誤り…古文では人の「様子・機嫌」。「けしきあし=機嫌が悪い」。自然のながめではない、と現代語と切り離す。
  • 似た言葉の違いを押さえる…「ゆゑ」と「よし」は両方「理由・由緒」だが、「〜とのこと(趣旨)」になるのは「よし」だけ。「こころ」は気持ちだけでなく「意味・趣旨・分別」まで広い。
  • 多義語は必ず文脈で決める…一つの意味で暗記して終わりにせず、「この文ではどれ?」と当てはめて訳す練習をする。

名詞は「知っているつもり」で読み飛ばしがちですが、現代語とずれる頻出名詞こそ得点の分かれ目です。まずは「つとめて」「ほど」「よし」「けしき」の四つを完璧にし、そこから表のほかの語へ広げていきましょう。意味と「訳し分けの手がかり」をセットで覚えれば、読解でそのまま点になります。

つまずきやすいポイントと入試での問われ方

古文の名詞でつまずく最大の原因は、「形が現代語と同じだから意味も同じだろう」と思い込んでしまうことです。「つとめて」を「つとめる(がんばる)」、「けしき」を「景色(風景)」、「あした」を「明日」と読んでしまうと、文の意味が根本からずれてしまいます。これらは同じ形でも意味だけが変わった語なので、まずは「現代語の意味は一度わきに置く」という意識が大切です。

もう一つのつまずきが多義語の訳し分けです。「ほど」「よし」「こころ」のように一語で複数の意味を持つ語は、「どの意味かを文脈で決める」という一手間が必要になります。一つの意味だけ覚えて満足すると、別の意味で出てきたときに対応できません。下に、入試でねらわれやすい三つの落とし穴を整理します。

  • 「つとめて」を動詞と勘違いする…「つとめて参りぬ」を「努力して参上した」と訳すのは誤り。「つとめて」は名詞で「早朝」なので、「早朝に参上した」が正しい。
  • 「けしき」を「景色」と訳す…古文の「けしき(気色)」は人の「様子・機嫌・意向」。「けしきばむ=それらしいそぶりをする」のように、人の内面のあらわれを表すことが多い。
  • 「ほど」「よし」をいつも同じ意味で訳す…「ほど」は時間・距離・程度・身分のどれか、「よし」は理由・由緒・手段・趣旨のどれかを、毎回まわりの言葉から判断する必要がある。
先生
先生入試では、多義語の別の意味の訳を誤りの選択肢に混ぜてくるのが定番だよ。意味の幅を全部知ってから文脈で絞る、これが得点に直結する。

入試では、これらの語は傍線部の現代語訳「傍線部の意味として最も適当なものを選べ」という選択問題でよく問われます。とくに多義語は、誤りの選択肢に「別の意味での訳」を混ぜてくるのが定番の作り方です。たとえば「ほど」を含む傍線部で、「時間」が正解なのに「身分」と訳した選択肢を紛れ込ませる、といった具合です。だからこそ、「意味を一つ覚える」ではなく「意味の幅をすべて知ったうえで、文脈で一つに絞る」練習が得点に直結します。

もう少しくわしく──まぎらわしい語の使い分け

意味の近い名詞どうしは、違いをはっきりさせておくと混乱しません。とくに次の組み合わせは、入試でも区別が問われやすいところです。

  • 「ゆゑ(故)」と「よし(由)」…どちらも「理由・由緒」を表すが、「〜とのこと・〜という趣旨」(伝聞・報告の内容)になるのは「よし」だけ。手紙や報告の場面で「〜よし申す」とあれば「〜と申し上げる」と訳す。
  • 「ありさま」と「けしき」…「ありさま」は人や物事の「様子・状態」を広く指す。「けしき」も様子を表すが、人の「機嫌・意向・きざし」に重きがあり、「けしきあし=機嫌が悪い」のように使う。
  • 「おり(折)」と「ついで(序)」…「おり」は「時・場合・機会」。「ついで」は本来「順序・次第」で、そこから「ちょうどよい機会」の意味にもなる。現代語の「ついでに」より重い意味で使われる。
  • 「こころ」の広さ…「気持ち・心」だけでなく、「歌のこころ=歌の意味・趣旨」「こころなし=思慮・情趣がない」のように、意味・分別・情趣まで含む。文脈で「気持ち」か「意味・趣旨」かを見分ける。

こうした語は、「決まり文句(連語)」とセットで覚えるのも効果的です。「ほどなく=まもなく」「ほどへて=時がたって」「よしなし=方法がない・つまらない」「ほいなし=不本意だ・残念だ」「けしきあし=機嫌が悪い」などは、そのまま訳語として暗記しておくと、本文で出会ったときに迷いません。

ミニ練習問題(解答つき)

次の傍線部の名詞の意味を考えてみましょう。すぐ下に解答と解説があります。まずは自分で訳を考えてから答え合わせをしてください。

  1. つとめて、いとすずしき風吹きけり。(傍線部「つとめて」)
  2. 都を出でて、ほどなく関に着きぬ。(傍線部「ほど」を含む「ほどなく」)
  3. 主人、けしきあしくて物も言はず。(傍線部「けしき」)
  4. 使ひ、帰り来たらぬよしを申す。(傍線部「よし」)
  5. その人のほどにはあらぬ縁談なり。(傍線部「ほど」)

【解答と解説】

  1. 早朝。…「早朝に、たいそう涼しい風が吹いた」。「つとめて」は名詞で「早朝」。動詞「つとめる」ではない点に注意。
  2. まもなく(時間)。…「都を出て、まもなく関所に着いた」。「ほどなく」は「時間をおかず=まもなく」。ここでの「ほど」は時間の意味。
  3. 機嫌(様子)。…「主人は、機嫌が悪くて何も言わない」。「けしきあし」で「機嫌が悪い」。「景色」ではない。
  4. 〜とのこと・〜という趣旨。…「使いの者が、(先方が)帰って来ないということを申し上げる」。「よし」は前の内容を受けて「〜ということ」とまとめる。
  5. 身分(分際)。…「その人の身分には釣り合わない縁談だ」。人の格を述べているので「ほど」は身分の意味。

2と5はどちらも「ほど」ですが、2は「時間」、5は「身分」と訳が変わりました。これが多義語を「文脈で決める」ということです。同じ語でも、まわりの言葉(「ほどなく」のように時を表す形か、人の格を述べる流れか)で意味が切り替わる、と体感できれば合格です。

よくある質問(Q&A)

Q. 「つとめて」と「あした」はどう違うのですか?

A. どちらも「朝」に関わる名詞ですが、「つとめて」は「早朝」を指すのが基本で、前夜の出来事を受けると「翌朝」になります。「あした」は夜と対になる「朝」で、こちらも前夜を受けて「翌朝」の意味になります。現代語の「明日(未来の日)」とは別物だ、という点が両方に共通する注意点です。

Q. 多義語は、ぜんぶの意味を暗記しないとダメですか?

A. 全部の意味の「方向」を知っておくことが大切です。たとえば「ほど」なら〈時間・距離・程度・身分〉、「よし」なら〈理由・由緒・手段・趣旨〉という具合に、「この語にはこういう引き出しがある」と意識できれば十分です。そのうえで、本文では「まわりの言葉からどれかに決める」という手順をふめば、丸暗記しなくても正しく訳せます。

Q. 「けしき」を「景色」と訳してはいけないのですか?

A. 古文の「けしき(気色)」は、人の「様子・機嫌・意向」を表すのが基本です。自然のながめ(現代語の「景色」)の意味で使われることはまれなので、入試では「景色」と訳すと誤りになることがほとんどです。「けしきあし=機嫌が悪い」「けしきばむ=それらしいそぶりをする」のように、人の内面のあらわれと結びつけて覚えましょう。

まとめ

古文の重要名詞は、「形は同じでも意味がずれる語」「一語で複数の意味を持つ多義語」の二つに気をつけるのがコツです。とくに次の四つは出題頻度が高いので、最優先で完璧にしておきましょう。

  • つとめて=早朝(前夜を受けると翌朝)。動詞「つとめる」と混同しない。
  • ほど=時間・距離・程度・身分。まわりの言葉で意味を決める。
  • よし=理由・由緒・手段・〜とのこと(趣旨)。伝聞・報告では「〜ということ」。
  • けしき=人の様子・機嫌・意向。「景色」ではない。

名詞は「知っているつもり」で読み飛ばしやすいぶん、正しく訳せると差がつくところです。意味と「訳し分けの手がかり」をセットで覚え、文脈に当てはめて決める──この練習を重ねれば、読解でそのまま得点に結びつきます。下のドリルで、実際に手を動かして定着させましょう。

先生
先生まずは「つとめて」「ほど」「よし」「けしき」の四つから。あせらず一つずつ、文脈で決める練習を重ねれば必ず力になるよ。下のドリルで仕上げよう!

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