古文の副詞には、文の意味を一瞬で決める「重要副詞」があります。とくに大切なのが、下に決まった言葉を呼び寄せる「呼応(こおう)の副詞」です。たとえば文のはじめに「え」があれば、下のほうに必ず打消の「ず」が来て「〜できない」という意味になります。この「上の副詞」と「下の決まり文句」のセットを覚えてしまえば、知らない単語があっても文の大きな意味がつかめるようになります。
この記事では、入試で頻出の「呼応(陳述)の副詞」と、なるほど・かえって・やはり…といった気持ちを表す「程度・状態の副詞」を、表と作例でやさしく整理します。意味と「セットになる言葉」をまとめて覚えれば、読解でも文法問題でもそのまま点になります。
呼応(陳述)の副詞とは?──下に決まった言葉を呼ぶ副詞

「呼応の副詞」とは、その副詞が出てきたら文の終わりのほうに決まった言葉(打消・禁止・反語・願望など)がセットでやってくる副詞のことです。「陳述(ちんじゅつ)の副詞」「叙述の副詞」とも呼ばれます。難しそうな名前ですが、要するに「この言葉が来たら、下はこう来る」という二つで一組のお約束のことです。
このお約束を知っていると、二つの得があります。一つめは、下の言葉が省略されていたり離れていたりしても意味を補えること。二つめは、「え」とくれば必ず下に打消、というふうに文の意味の方向(できない・するな・〜したい)を先読みできることです。まずは下の表で、代表的な組み合わせを丸ごと覚えましょう。
| 上の副詞 | 下にくる決まった語 | 意味 |
|---|---|---|
| な | 〜そ | 〜するな(禁止。やわらかい禁止) |
| え | 〜ず(打消) | 〜できない(不可能) |
| をさをさ | 〜ず(打消) | ほとんど〜ない |
| つゆ・さらに・たえて | 〜ず・〜なし(打消) | まったく〜ない(全否定) |
| よも | 〜じ(打消推量) | まさか〜ないだろう |
| いかで・いかでか | 〜む・〜ばや(意志・願望) | なんとかして〜したい |
| あに | 〜や(反語) | どうして〜か、いや〜ない |
※「いかで」は下に「〜む・〜ばや」が来ると願望・意志(なんとかして〜したい)、下に反語の「〜か(は)」が来ると反語(どうして〜か、いや〜ない)になります。文末がどちらかを見て判断しましょう。
禁止の「な〜そ」──「な」と「そ」で動詞をはさむ

「な〜そ」は「〜してくれるな/〜しないでほしい」というやわらかい禁止を表します。形は「な+動詞の連用形+そ」で、動詞を「な」と「そ」ではさむのがポイントです。ただし、カ変(来)とサ変(す)だけは未然形を使い、「な来(こ)そ」「なせそ」となります。
- 例:「な泣きそ」=泣かないでおくれ(「泣き」は連用形)
- 例:「な散りそ」=散らないでくれ
- 例:「な来(こ)そ」=来てくれるな(カ変は未然形「こ」)
同じ禁止でも、終止形に付く「な」(例「行くな」)は強い禁止、「な〜そ」はやわらかい禁止・懇願、と覚えておくと訳し分けができます。
不可能の「え〜ず」と、全否定の「つゆ・さらに・たえて〜なし」

「え〜ず」は「〜できない」という不可能を表します。下の打消は「ず」だけでなく、「え〜じ(〜できないだろう)」「え〜で(〜できないで)」のように打消の仲間に変わることもありますが、「え」が来たら下は必ず打消系と覚えれば大丈夫です。
- 例:「え行かず」=行くことができない
- 例:「え言はず」=(うまく)言うことができない
一方、「つゆ・さらに・たえて」+打消は「まったく〜ない」という全否定です。「をさをさ〜ず」はそれより少しやわらかく「ほとんど〜ない」。下に打消の「ず」や「なし」を伴う点は共通です。
- 例:「つゆ知らず」=まったく知らない
- 例:「さらにあらず」=まったく〜ではない
- 例:「をさをさ見えず」=めったに(ほとんど)見えない
打消推量の「よも〜じ」と願望の「いかで〜む/ばや」

「よも〜じ」は「まさか〜ないだろう」という打消推量です。下にくる「じ」は「〜ないだろう・〜まい」という打消推量・打消意志の助動詞。「よも」を見たら下に「じ」を探しましょう。
- 例:「よも忘れじ」=まさか忘れることはないだろう
「いかで〜む/ばや」は「なんとかして〜したい」という願望・意志を表します。「いかで」はもともと「どうやって」と方法を問う言葉ですが、下に意志の「む」や願望の「ばや」が来ると「なんとかして実現したい」という強い気持ちになります。下が反語のときは「どうして〜か、いや〜ない」と訳します。
- 例:「いかで都へ帰らばや」=なんとかして都へ帰りたい(願望)
- 例:「いかで見む」=なんとかして見たい(意志)
程度・状態の重要副詞──気持ちと様子を表す頻出語

呼応の副詞のように決まった相手はありませんが、訳が難しく入試で問われやすいのが次の副詞です。とくに「なかなか(かえって)」「さすがに(そうはいってもやはり)」は現代語の感覚で訳すと間違えるので要注意です。下の表でまとめて押さえましょう。
| 副詞 | 意味 | ひとことメモ |
|---|---|---|
| げに | なるほど・本当に | 相手の言葉に納得・同意する気持ち |
| なかなか | かえって・むしろ | 「中途半端」が語源。現代語「なかなか良い」とは別物 |
| さすがに | そうはいってもやはり | 一方を認めつつ、もう一方も…の気持ち |
| あながちに | 無理に・強引に・ひたすら | 下に打消で「必ずしも〜ない」になることも |
| すなはち | すぐに・即座に | 「即座」の「即」。時間的にすぐ |
| やがて | そのまま/すぐに | 現代語「やがて=そのうち」と逆。間をおかない |
| いと | たいへん・とても | 下に打消で「いと〜ず=たいして〜ない」 |
| いとど | いっそう・ますます | 「いと」より程度が増す |
例文で確認しよう(程度・状態の副詞)
- 「げにさることありけり」=なるほどそういうこともあったのだなあ
- 「なかなか言はぬぞよき」=かえって言わないほうがよい
- 「さすがにあはれなり」=そうはいってもやはりしみじみと趣がある
- 「やがて出でぬ」=そのまま(すぐに)出て行ってしまった
- 「いとど悲しさまさりけり」=いっそう悲しさがつのった
※「やがて」は現代語の「そのうち・まもなく」とは意味がずれ、古文では「そのまま」「すぐに」です。「なかなか」も「けっこう良い」ではなく「かえって・むしろ」。この二語は特に狙われるので、現代語につられないようにしましょう。
覚え方のポイント
- 「上が来たら下を探す」癖をつける…「え」を見たら打消、「な」を見たら「そ」、「よも」を見たら「じ」、と下を先読みする。
- 打消グループはまとめて…「え(不可能)」「つゆ・さらに・たえて(全否定)」「をさをさ(ほとんど〜ない)」は、ぜんぶ下に打消が来る仲間として一括で覚える。
- 「な〜そ」は連用形ではさむ…ただしカ変「な来(こ)そ」・サ変「なせそ」だけ未然形、と例外を一緒に暗記。
- 現代語と意味が違う三語に注意…「なかなか=かえって」「やがて=そのまま/すぐに」「さすがに=そうはいってもやはり」。現代語訳に引っぱられない。
呼応の副詞は、覚えた数だけ読解スピードが上がります。まずは「な〜そ」「え〜ず」「よも〜じ」「いかで〜む/ばや」の四つを完璧にし、次に程度・状態の副詞へ広げていきましょう。


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