重要古文動詞まとめ|ながむ・ねんず・わぶ…現代と意味がちがう頻出動詞

「現代と同じ意味」だと思い込むと失点する──重要古文動詞を一気に整理

古文の動詞には、形は今と同じなのに意味がまるで違うものがたくさんあります。たとえば「ののしる」は現代語では「悪口を言う」ですが、古文では「大声で騒ぐ」「評判が高い」という意味で使われます。こうしたズレを知らずに現代語の感覚で読むと、本文の内容を取り違え、定期テストでも入試でも確実に失点します。

この記事では、敬語以外で入試・定期テストに頻出する重要動詞を、〈読み・漢字〉〈意味〉〈例〉〈注意点〉の形で網羅的にまとめました。意味のグループごとに表を分け、現代語とズレるポイントを太字で強調しています。多義語としての詳しい解説は古文の多義語の記事も合わせて確認してください。効率的な暗記法は単語の覚え方、似た形の語の見分けは古今異義語まとめが役立ちます。

① 心の動き・感情をあらわす動詞

まずは「物思い・我慢・嘆き」など、心の中の動きを表す動詞です。古文は和歌や物語が中心なので、この系統の語は最頻出。とくに「ながむ」「ねんず」「わぶ」「かこつ」は和歌・随筆の読解で何度も出会います。

語〈読み/漢字〉 意味(入試標準訳) 注意点
ながむ
〈眺む・詠む〉
①(眺む)物思いにふける・じっと見やる
②(詠む)和歌を口ずさむ・声に出して歌う
ながめつつ過ぐす(物思いにふけりながら過ごす) 「ぼんやり外を見る=物思い」が①。今の「景色を眺める」より心の方に重点。漢字「詠む」なら②で別語に近い
ねんず
〈念ず〉
我慢する・じっとこらえる
②心の中で(神仏に)祈る
痛きをねんず(痛いのを我慢する)/仏をねんず(仏に祈る) ①の「我慢」が現代語にない訳で最頻出。「念じる=祈る」だけと思うと誤読する
わぶ
〈侘ぶ〉
つらく思う・困る・がっかりする・心細く思う
②(動詞の連用形+わぶ)〜しかねる・〜することがつらい
世をわぶ(世の中をつらく思う)/言ひわぶ(言いかねる) ②の「〜しかねる」用法に注意。「待ちわぶ=待ちきれずつらい」など。マイナス感情が核
かこつ
〈託つ〉
口実にする・他のせいにする・かこつける
②嘆く・愚痴を言う
用ありとかこつ(用事があるのを口実にする) 「かこつける」と語源が同じ。責任を他へ転嫁するニュアンス。現代語にはない意味
まどふ
〈惑ふ〉
途方にくれる・どうしてよいか分からない・心が乱れる・道に迷う
②(連用形+まどふ)ひどく〜する・〜して取り乱す
思ひまどふ(思い乱れる)/泣きまどふ(ひどく泣く) ②の補助動詞用法が重要。「逃げまどふ=あわてて逃げ回る」のように程度を強める。「子を思ふ道にまどひぬるかな」は超頻出

このグループはマイナスの感情がベースになっている語が多いのが特徴です。「わぶ」「まどふ」の連用形に付く補助動詞用法(〜しかねる/ひどく〜する)は記述・選択問題の両方で狙われます。

② 様子・状態の変化をあらわす動詞

次は「色があせる」「みすぼらしくなる」など、見た目や状態が変わることを表す動詞です。「うつろふ」「やつる」は、物理的な変化と心の変化の両方を表すため、文脈判断が問われます。

語〈読み/漢字〉 意味(入試標準訳) 注意点
うつろふ
〈移ろふ〉
①(色が)あせる・散る・盛りを過ぎる
心変わりする・気持ちが移る
花の色はうつろひにけり(花の色はあせてしまった) 「移る」の継続・進行形。花=あせる/人の心=心変わりで訳し分ける。小野小町の歌が代表例
やつる
〈窶る〉
みすぼらしくなる・やせ衰える
目立たない姿になる・お忍びする(地味な身なりに変える)
いたうやつれたまへり(ひどく地味な姿でいらっしゃる) ②が重要。貴人がわざと身分を隠して質素な格好をすること。「やつし姿」は変装・微行。今の「やつれる(病的に痩せる)」だけではない
おとろふ(参考)
〈衰ふ〉
衰える・弱る・盛りを過ぎる 家やうやく衰ふ(家が次第に衰える) 「うつろふ」「やつる」と意味が近く対比されやすい。ほぼ現代語通り

「うつろふ」は主語が植物(花・紅葉)か人の心かで訳が決まります。和歌では「移ろふ」に「色あせる」と「心変わり」を掛ける掛詞表現が頻出なので、両方の意味を必ず押さえましょう。

③ 行動・知覚をあらわす動詞(プラス評価への転化に注意)

最後は「騒ぐ」「理解する」「連れ立つ」など、具体的な行動や知覚を表す動詞です。とくに「ののしる」「おどろく」は現代語と意味が大きくズレるので最重要。「ぐす」「ゐる」は紛らわしい別語との区別がポイントです。

語〈読み/漢字〉 意味(入試標準訳) 注意点
ののしる
〈罵る〉
大声で騒ぐ・大騒ぎする・声高に言う
②(よい意味で)評判が高い・もてはやされる・世間で評判になる
都ののしる(都で評判になる)/泣きののしる(大声で泣き騒ぐ) 現代語の「悪口を言う」ではない。②のプラス評価(評判が高い)は見落としやすい最重要ポイント
こころう
〈心得〉
理解する・納得する・承知する・心づもりする その意をこころう(その意味を理解する) 下二段活用。「心得ず=理解できない・納得がいかない」の形で頻出。「得る」も忘れず確認
ぐす
〈具す〉
連れ立つ・一緒に行く・連れて行く
備わる・備える・付き添う
人をぐして行く(人を連れて行く)/才ぐす(学才が備わる) ①の「連れて行く」が頻出。「率る(ゐる)」と意味が近いが別語。②「備わる」も入試で問われる
ゐる
〈居る〉
座る・すわっている
②(その場に)とどまる・じっとしている
縁にゐる(縁側に座る) 「立つ」の反対で「座る」が基本。今の「いる(存在する)」とずれる。同音の「率る(=引き連れる)」はまったくの別語なので要区別
わづらふ
〈煩ふ・患ふ〉
思い悩む・苦労する
病気になる・患う
③(連用形+わづらふ)〜しかねる
胸をわづらふ(病気になる)/思ひわづらふ(思い悩む) ②「病気になる」が現代語にない訳。③の補助動詞「〜しかねる」は「わぶ」と同系。三つの意味を文脈で判別

④ 多義語記事と重複する語(ここでは一覧確認のみ)

次の語は古文の多義語の記事で詳しく扱うため、ここでは頻出の核となる意味だけを確認します。形が現代語と同じなぶん油断しやすいので、訳のズレだけ押さえておきましょう。

語〈読み/漢字〉 意味(入試標準訳) 注意点
おどろく
〈驚く〉
はっと気づく
目を覚ます・眠りからさめる
今の「びっくりする」より「気づく・目覚める」が重要。「おどろかす=目を覚まさせる・気づかせる・促す」も頻出
ありく
〈歩く〉
あちこち動き回る・出歩く
②(連用形+ありく)〜して回る
単に「歩く」ではなく「うろうろ移動する・〜してまわる」。「歩む(あゆむ)」が一歩ずつ歩く意で対照的
おこたる
〈怠る〉
なまける・油断する
②(病気が)よくなる・回復する
②「病気が治る」が現代語にない訳で最重要。「わづらふ(病気になる)」とセットで覚える

使い分け・識別のコツ

意味が複数ある動詞は、「主語が何か」「どんな漢字か」「下に何が続くか」の3点で訳を絞り込みます。代表的な見分け方を整理します。

判別ポイント 見分け方
「ながむ」=物思い/詠む 漢字や文脈で判断。和歌を「□□」む文脈や「歌を」が付けば詠む(口ずさむ)、ぼんやり外を見る・物思いなら眺む
「うつろふ」=色/心 主語が花・紅葉なら「あせる・散る」人の心なら「心変わり」
「ののしる」=騒ぐ/評判 悪い文脈なら「大声で騒ぐ」よい評価の文脈なら「評判が高い・もてはやされる」
連用形+「わぶ/わづらふ/まどふ/ありく」 上に別の動詞の連用形が付くとき=補助動詞。わぶ・わづらふ=〜しかねる、まどふ=ひどく〜する、ありく=〜して回る
「ゐる」=座る/「率る」=連れる 同じ「ゐる」でも、立つの反対なら「座る」(居る)下に人・物が来て「引き連れる」なら別語の「率る」
「ねんず/わづらふ/おこたる」=病気系 体調・病の文脈では、ねんず=我慢する、わづらふ=病気になる、おこたる=病気がよくなると覚えるとセットで使える

入試・定期テスト対策(設問例)

これらの動詞は、傍線部訳・語句の意味・内容説明の形で出題されます。「現代語と違う意味を選ばせる」のが定番なので、紛らわしい選択肢に注意しましょう。

設問例1(傍線部の意味)「この若君、世にののしりたまふ」の「ののしり」の意味として最も適当なものを選べ。
正解:世間で評判が高い(もてはやされる)。「悪口を言う」を選ぶと誤り。よい人物の描写なのでプラスの「評判」と判断します。

設問例2(傍線部訳)「いと苦しきを念じて起きゐたり」を口語訳せよ。
正解:とても苦しいのを我慢して起き上がって座っていた。「念じて=我慢して」「ゐ=座っ(て)」が両方ポイント。「祈って」「いて」では減点。

設問例3(内容説明)「花の色はうつろひにけり」とあるが、何が起きたのか説明せよ。
正解:花の色があせて(盛りが過ぎて)しまった、ということ。和歌では人の「心変わり」が掛けられる場合もあり、その文脈なら両義に触れると加点されます。

設問例4(語句の意味)「日ごろのおこたり」の「おこたり」の意味を答えよ。
→ 文脈しだいで「油断・なまけ」または「(病気が)よくなること」。前後で病気の話なら回復、行動の話なら怠慢と判断します。

暗記の際は、「現代語とズレる訳」だけをカードにして集中的に覚えるのが効率的です。具体的な方法は単語の覚え方を参考にしてください。形は同じでも意味が違う語の全体像は古今異義語まとめでつかめます。

まとめ

古文の重要動詞は、「形は同じでも、現代語とは意味がちがう」という前提で読むことが、読解・得点の第一歩です。最後に最重要ポイントをおさらいします。

これだけは押さえる 核となる訳
ののしる 大声で騒ぐ/評判が高い(悪口ではない)
ねんず 我慢する/心の中で祈る
わぶ・わづらふ つらく思う・思い悩む/(連用形+で)〜しかねる
うつろふ (花)色あせる/(心)心変わりする
やつる みすぼらしくなる/お忍び姿になる
まどふ 途方にくれる/(連用形+で)ひどく〜する
おどろく・おこたる はっと気づく・目覚める/(病気が)よくなる
ゐる ⇔ 率る 座る・とどまる ⇔ 引き連れる(別語)

これらの語は一度ズレを理解すれば一気に読みやすくなるものばかりです。多義語の深掘りは古文の多義語の記事へ進み、繰り返し本文の中で出会って定着させていきましょう。

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