古文「最高敬語」の識別を完全攻略|「させたまふ」で見抜く最上級の尊敬表現

古典文法

古文の敬語表現の中で、ひときわ特別な地位を占めているのが「最高敬語」です。最高敬語とは、天皇・中宮(ちゅうぐう)・上皇(じょうこう)など、位の最も高い人物にしか使われない、最上級の尊敬表現のことです。「させたまふ」「おはします」「きこしめす」などがその代表例で、これらを正確に識別できるかどうかが、古文読解の得点を大きく左右します。

最高敬語の核心は、「す・さす(尊敬の助動詞)+たまふ(尊敬の補助動詞)」という二重の尊敬の組み合わせにあります。「させたまふ」「せたまふ」の「す・さす」は、ここでは使役ではなく尊敬の助動詞として機能しており、それに尊敬の補助動詞「たまふ」が重なることで、最上級の敬意を表します。最初から尊敬として読むことが大切です。

この記事では、最高敬語の基本的な意味と形から、識別の手順、試験でよく出るミスポイントまで、例文を交えながら丁寧に解説します。読み終えた後には、「させたまふ」を見た瞬間に「これは最高敬語だ」と判断できる力が身についているはずです。

「最高敬語」の基本(意味・形・使われ方)

最高敬語とは、最上位の人物への最上級の敬意を表す敬語表現です。通常の尊敬語(たまふ・おはすなど)よりも一段高い敬意を表すために使われ、その対象はほぼ必ず天皇・中宮・上皇・法皇といった、当時の社会における最高位の人物に限られます。

なぜ「最高」と呼ばれるのか

古文の敬語には、尊敬語・謙譲語・丁寧語の三種類があります。さらにその中でも、二つの尊敬要素を重ねて最上級の敬意を表す表現を「最高敬語(二重尊敬)」と呼びます。たとえば「たまふ」は一般的な尊敬の補助動詞として広く使われますが、「させたまふ」という形になると、尊敬の助動詞「す・さす」と尊敬の補助動詞「たまふ」が重ねられ、敬意の度合いが格段に上がります。これが最高敬語の本質です。なお「最高敬語」と似た用語に「絶対敬語」がありますが、絶対敬語は「奏す(帝への申し上げ)」「啓す(中宮・東宮への申し上げ)」のように、特定の人物にのみ用いる謙譲語を指す別概念です。本記事では両者を区別して扱います。

最高敬語の主な形

最高敬語には、いくつかの代表的な形があります。まず最も重要なのが「させたまふ・せたまふ」です。尊敬の助動詞「す・さす」に、尊敬の補助動詞「たまふ(給ふ)」が続いた形で、二つの尊敬要素が重なることで「〜なさる」という最高の尊敬の意味を表します。ここでの「す・さす」は使役ではなく尊敬として機能している点を最初からはっきり押さえてください。

次に「おはします」があります。これは存在・移動を表す尊敬語「おはす」よりもさらに高い敬意を持ち、天皇や中宮などが「いらっしゃる・おいでになる」という場面で使われます。「おはす」だけでも十分高い敬意ですが、「おはします」はそれをさらに上回る表現で、単体で最高敬語と判断できます。

また「きこしめす(聞こし召す)」も単体で最高敬語にあたる動詞です。「聞く」「食べる・飲む」「知る・治める」などの意味を持ち、天皇が何かを「お聞きになる・召し上がる・お治めになる」という場面で登場します。

最高敬語と二方面敬語の違い

ここで重要な区別をしておきます。最高敬語は尊敬+尊敬の二重尊敬であり、対象は一人(最高位の動作主)です。これに対し「申したまふ(まうしたまふ)」「奉りたまふ(たてまつりたまふ)」は謙譲+尊敬の組み合わせで、動作の客体(受け手)への謙譲と動作の主体への尊敬を同時に表す「二方面敬語」と呼ばれる別の構造です。敬意の向かう方向が一つ(主体のみ)か二つ(客体と主体の両方)かが本質的な違いで、二方面敬語は最高敬語ではありません。試験で混同しないよう、必ず区別して覚えてください。

「最高敬語」の識別方法(ステップごとに解説)

最高敬語を見抜くためには、一定の手順を踏むことが大切です。特に「させたまふ・せたまふ」の識別は、試験で頻繁に問われるポイントです。以下のステップで確認することで、正確に判断できるようになります。

ステップ一:文中に「す・さす」の形を見つける

まず文中に「す・さす」の形が現れているかを確認します。「す」は四段・ナ変・ラ変動詞の未然形に接続し、「さす」はそれ以外の動詞の未然形に接続するというのが基本のルールです。「す・さす」は本来「使役(〜させる)」と「尊敬(〜なさる)」の両方の意味を持つ助動詞ですが、次のステップで最高敬語の構成要素として尊敬で取るかどうかを判断します。

ステップ二:直後に「たまふ」が続いているかを確認する

「す・さす」の直後に「たまふ(給ふ)」が続いているかどうかを確認します。「させたまふ」「せたまふ」という形になっていれば、最高敬語と判断します。このとき「す・さす」は尊敬の助動詞として機能し、尊敬の補助動詞「たまふ」と重なって二重の尊敬(最高敬語)を構成します。訳は「〜なさる」という純粋な尊敬になります。「たまふ」が続かず、文脈に「誰かに〜させる」という使役の意味が読み取れる場合は、「す・さす」を使役として取り、最高敬語ではないと判断してください。

ステップ三:主語が天皇・中宮クラスかを確認する

「させたまふ・せたまふ」という形が確認できたら、その動作の主語が誰であるかを確認します。最高敬語は天皇・中宮・上皇・法皇など、最高位の人物にのみ使われます。文中に主語が明示されていないことも多いのが古文の特徴ですが、その場合は最高敬語が使われているという事実そのものが「この動作の主語は最上位の人物だ」という手がかりになります。つまり、最高敬語を識別できれば、逆に主語を特定することにも活用できます。この双方向の読み方を意識することが古文読解の力を高めます。

ステップ四:「おはします」「きこしめす」は単体で最高敬語

「おはします」と「きこしめす」は、「させたまふ」のような組み合わせ型ではなく、単体で最高敬語になります。「おはします」が出てきたら即座に「天皇クラスの人物がいらっしゃる・おいでになる」という意味で読み、「きこしめす」が出てきたら「天皇クラスの人物がお聞きになる・召し上がる・お治めになる」と解釈します。これらは語形そのものを覚えてしまうことが最も確実な対策です。単体で判断できる表現なので、見つけ次第すぐに最高敬語と認定できるようにしておきましょう。

ステップ五:二方面敬語(まうしたまふ等)と区別する

「申したまふ」「奉りたまふ」のように、謙譲語+尊敬語「たまふ」の形は二方面敬語であって最高敬語ではありません。前半が謙譲語(申す=言うの謙譲、奉る=差し上げるの謙譲)なので、客体(動作の向かう相手)への敬意も同時に含まれているのが特徴です。最高敬語(尊敬+尊敬の二重尊敬)と二方面敬語(謙譲+尊敬)は構造が違うため、形を見て即座に区別できるようにしてください。

よくある誤解・ミスポイント

最高敬語の識別で受験生がよく陥るミスには、いくつかのパターンがあります。あらかじめ知っておくことで、同じ失敗を避けられます。

誤解その一:「させたまふ」を使役+尊敬と分けて読んでしまう

最も多いミスが、「させたまふ」を「させ(使役:〜させる)+たまふ(尊敬:〜なさる)」と分解して、「〜させなさる」と訳してしまうパターンです。しかし「させたまふ・せたまふ」の「す・さす」は尊敬の助動詞として機能しており、最初から使役ではなく尊敬として読むのが正解です。「す・さす(尊敬)+たまふ(尊敬)」の二重尊敬で「〜なさる」と訳します。文法説明を求められた場合は「す・さすは尊敬の助動詞、たまふは尊敬の補助動詞で、両者あわせて二重尊敬(最高敬語)」と答えるのが正解です。

誤解その二:「たまふ」の四段と下二段を混同する

「たまふ」には四段活用と下二段活用の二種類があり、それぞれ意味が異なります。四段活用の「たまふ」は尊敬の補助動詞(〜なさる)で、最高敬語の「させたまふ」に使われるのはこちらです。一方、下二段活用の「たまふ」は謙譲の補助動詞専用で、本動詞用法はありません。一人称の話し手が「思ふ」「見る」「聞く」など知覚・思考の動詞に付けて「〜ております・〜ます」と聞き手に丁寧に述べる用法です。見分け方は活用語尾です。四段活用の連体形は「たまふ」、下二段活用の連体形は「たまふる」、已然形は「たまふれ」になります。この活用形の違いを確認する習慣をつけておくと、混同を防げます。

誤解その三:二方面敬語を最高敬語と混同する

「申したまふ」「奉りたまふ」のように、前半が謙譲語+後半が尊敬「たまふ」の形は二方面敬語であって最高敬語ではありません。最高敬語は尊敬+尊敬で動作の主体一人に最大の敬意を向ける表現、二方面敬語は謙譲+尊敬で客体と主体の二方向に敬意を向ける表現です。構造も敬意の方向も異なるので、形と意味の両面から区別してください。試験で「最高敬語の例を選べ」と問われたとき、「申したまふ」を選ぶと誤答になります。

誤解その四:最高敬語が出れば必ず天皇本人が主語だと思い込む

最高敬語が使われていても、必ずしも天皇本人だけが主語になるとは限りません。文脈によっては中宮・上皇・法皇なども主語になり得ます。高校の試験範囲では基本的に「最高敬語=天皇・中宮・上皇クラスが主語」というルールで対応できますが、「天皇本人のみ」と限定しすぎると文脈の読み誤りにつながることがあります。前後の文脈と登場人物の情報をあわせて確認する姿勢を大切にしてください。

例文で確認(古文+現代語訳)

実際の古文の例文を通じて、最高敬語の識別を確認しましょう。例文を読みながら、どの部分が最高敬語にあたるのかを意識してみてください。

例文一:「おはします」の用例(『竹取物語』より)

古文:「帝おはしまして、御覧じければ」(『竹取物語』を踏まえた構文)

現代語訳:「帝がいらっしゃって、ご覧になったところ」

解説:「おはしまして」は「おはします」の連用形で、天皇などに使う単体で最高敬語となる動詞です。「おはす(尊敬)」よりも一段上の敬意を持ちます。主語「帝」に対して使われており、最高敬語の典型的な用例です。「おはします」という語形を見た瞬間に最高敬語と判断できるようにしておきましょう。

例文二:「させたまふ」の用例(『大鏡』より)

古文:「位をさらせたまひて後も」(『大鏡』花山院段を踏まえた構文)

現代語訳:「(天皇の)位をお譲りになった後も」

解説:「さらせたまひ」は「さる(去る・譲る)の未然形+せ(尊敬の助動詞「す」の連用形)+たまひ(尊敬の補助動詞「たまふ」の連用形)」の形で、尊敬+尊敬の二重尊敬=最高敬語を構成しています。主語は譲位した上皇で、最高位の人物です。「〜させた」という使役の訳にせず、「お譲りになった」という最高の尊敬として読むのが正解です。

例文三:「きこしめす」の用例【練習例】

古文:「君、かかる御事をきこしめして」

現代語訳:「帝がこのようなことをお聞きになって」

解説:「きこしめして」は「きこしめす(聞こし召す)」の連用形で、「お聞きになる」という意味の単体で最高敬語となる動詞です。主語の「君」は帝を指しており、最上位の人物に対して使われています。「きこしめす」は「聞く・食べる・治める」など複数の意味を持つので、文脈に応じてどの意味かを判断することも忘れずに。

例文四:二方面敬語の用例(最高敬語との対比)【練習例】

古文:「かの大将、帝に申したまふやう」

現代語訳:「あの大将が帝に申し上げなさるには」

解説:「申したまふ」は二方面敬語であって最高敬語ではありません。「申す(まうす)」は謙譲語で動作の対象である「帝」への敬意を示し、「たまふ(四段活用・尊敬)」は動作の主語である「大将」への敬意を示しています。客体と主体の二方向への敬意が同時に表される構造で、最高敬語(尊敬+尊敬)とは別概念である点を確認してください。

例文五:「させたまふ」と使役の区別【練習例】

古文A:「帝、御歌詠ませたまふ」

現代語訳:「帝がお歌をお詠みになる」

古文B:「大臣、家人に文を書かせたり」

現代語訳:「大臣が家来に手紙を書かせた」

解説:Aは「詠ませたまふ」で最高敬語です。「ませ」は尊敬の助動詞「す」の連用形、「たまふ」は尊敬の補助動詞で、二重尊敬を構成します。主語が帝で「たまふ」が続いているため、「す」は尊敬として取ります。Bは「書かせたり」で「せ」は使役の助動詞「す」の連用形です。「たまふ」が続かず、主語の大臣が家来に書かせていることが明らかなので、使役として「〜させる」と訳します。「たまふ」が続くか/主語の地位/使役を受ける相手が文脈に出ているかの3点を比べることで、識別のポイントが明確にわかります。

まとめ

最高敬語は、古文の敬語体系の中で最も高い地位を持つ表現です。天皇・中宮・上皇といった最上位の人物にのみ使われるという特徴があり、文章の主語を特定したり文脈を正確に把握したりするうえで非常に重要な手がかりになります。

識別の核心は「させたまふ・せたまふ」の形です。尊敬の助動詞「す・さす」+尊敬の補助動詞「たまふ」の二重尊敬で、最初から尊敬として読むのが正解です。「使役+尊敬」と分解して「〜させなさる」と訳すのは誤答ですので注意してください。

「おはします」「きこしめす」は単体で最高敬語を構成するため、語形を見た瞬間に最上位の人物が登場していると判断してください。一方、「申したまふ」「奉りたまふ」のような謙譲語+「たまふ」は二方面敬語であって最高敬語ではありません。最高敬語(尊敬+尊敬)と二方面敬語(謙譲+尊敬)は構造も敬意の方向も異なるため、必ず区別して覚えましょう。

よくあるミスとして、「させたまふ」を使役と尊敬に分けて「〜させなさる」と訳してしまうこと、「たまふ」の四段活用と下二段活用を混同してしまうこと、二方面敬語を最高敬語と混同してしまうことが挙げられます。これらは繰り返し練習することで確実に克服できます。連体形「たまふ」か「たまふる」かを確認する習慣をつけるだけで、混同は大幅に減ります。

最高敬語を正確に識別できるようになると、古文の場面理解が大きく深まります。誰が主語なのか、その人物がどんな地位なのかが、敬語表現から自然に読み取れるようになるからです。今回紹介した識別ステップを繰り返し使いながら例文で練習を積み重ね、入試本番でも迷わず得点できる力を養っていきましょう。

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