古文の重要動詞「おぼゆ・おどろく・ありく・ののしる」をやさしく解説|現代と意味がちがう動作の言葉

古文単語

この記事でわかること

古文には、今の言葉と形は同じなのに、意味がちがう動詞がたくさんあります。形が見なれているぶん、つい現代語の感覚で訳してしまい、点を落としやすいところです。

この記事では、その中でもよく出る4つの動作の言葉――おぼゆ・おどろく・ありく・ののしる――をとりあげます。それぞれ「今の意味」と「古語の本当の意味」を見くらべ、例文と現代語訳でかくにんしていきます。読み終わるころには、テストや入試でこの4語が出ても、落ち着いて正しく訳せるようになります。

むずかしい文法用語はできるだけ使いません。中学・高校はじめの人でも読めるように、ゆっくり進みます。

まずは4語を一覧でチェック

くわしい説明の前に、全体像をつかんでおきましょう。下の表で「現代語のイメージ」と「古語の意味」のちがいを見くらべてください。

古語 現代語のイメージ 古語の本当の意味
おぼゆ (覚える) ①自然に思われる・感じられる ②(自然と)似る ③思い出される
おどろく びっくりする ①はっと気づく ②目を覚ます
ありく 歩く あちこち動き回る・出歩く(移動全般)
ののしる 悪口を言う・どなる ①大声で騒ぐ ②世間で評判になる・もてはやされる

どれも、現代語のイメージのまま訳すと意味がずれてしまいます。ひとつずつ見ていきましょう。

4つの動詞を一語ずつくわしく

おぼゆ ― 「覚える」ではなく「自然に思われる・似る」

(1) 現代語の感覚
今の「おぼえる」は「暗記する」「記憶する」という意味ですね。「単語をおぼえる」のように使います。

(2) 古語の本当の意味
古文の「おぼゆ」は、もともと「思ふ」に「ゆ(自然にそうなる、の意味を足す部分)」がついてできた言葉です。そのため、中心の意味は「(自分の意志とは関係なく)自然に思われる・感じられる」です。「がんばって考える」のではなく、心にふっとうかんでくる感じを表します。

そこから、「(だれかに)似ている」という意味や、「(自然と)思い出される」という意味も生まれました。どれも「心にふっとうかぶ」という同じ感覚からつながっています。文脈でどの意味かを見分けます。

(3) 例文と現代語訳

  • 例文:いと あはれ におぼゆ。
    現代語訳:とてもしみじみと感じられる
    → ここは①の意味。「自然にそう思われる」という気持ちを表しています。
  • 例文:この子は、母君に いとよう おぼえ たり。
    現代語訳:この子は、母君にたいそうよく似ている
    → ここは②の意味。人物どうしの話なので「似ている」と訳します。

ポイントは、「おぼゆ=暗記する」ではないこと。まずは「自然に思われる」を思いうかべ、人物どうしの話なら「似る」を考える、と覚えておきましょう。

おどろく ― 「びっくりする」ではなく「はっと気づく・目を覚ます」

(1) 現代語の感覚
今の「おどろく」は「びっくりする」「おどろき桃の木」のように、急なことにびっくりする意味ですね。

(2) 古語の本当の意味
古文の「おどろく」の中心は「(それまで気づかなかったことに)はっと気づく」です。そして、ねむっていた人が「はっと気づく」=「目を覚ます」という意味でもよく使われます。今のような「びっくりする」だけの意味とは少しちがうので注意しましょう。

(3) 例文と現代語訳

  • 例文:秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ おどろか れぬる(『古今和歌集』秋歌上・藤原敏行)
    現代語訳:秋が来たと目にははっきり見えないけれど、風の音で(秋の訪れに)はっと気づかされたことだ
    → ①「はっと気づく」の代表例です。「びっくりした」ではなく「気づいた」と訳します。
  • 例文:ものに襲はるる心地して、おどろき たまへれば、火も消えにけり。(『源氏物語』夕顔)
    現代語訳:何かにおそわれるような気持ちがして、目をお覚ましになると、灯火も消えてしまっていた。
    → ②「目を覚ます」の意味。ねむり(夢)から覚める場面で使われています。

見分け方のコツは、前後にねむり・夢の話があれば「目を覚ます」、そうでなければ「はっと気づく」と考えることです。

ありく ― 「歩く」よりも広く「あちこち動き回る・出歩く」

(1) 現代語の感覚
今の「歩く」は、足で一歩ずつ進むこと。「歩いて学校へ行く」のように使います。

(2) 古語の本当の意味
古文の「ありく」は、足で歩くことだけでなく、「あちこち動き回る」「出歩く」という、もっと広い移動全般を表します。人だけでなく、馬や舟など乗り物の移動にも使われます。なお、一歩一歩「歩く」ことだけをいうときは、古文では「あゆむ」という別の語を使う、と知っておくと区別しやすいです。

また、ほかの動詞のあとについて「~してまわる・あちこちで~する」という意味をそえる使い方(補助動詞)もあります。たとえば「尋ねありく」なら「あちこち探してまわる」となります。

(3) 例文と現代語訳

  • 例文:京にはあらず、はるかなる国に ありき て、
    現代語訳:都ではなく、遠い国をあちこち動き回って
    → ただ「歩いて」ではなく、広く「移動してまわる」ニュアンスです。
  • 例文:所々を尋ね ありき けり。
    現代語訳:あちらこちらを尋ねてまわった
    → 「尋ねありく」で「あちこち探してまわる」。動詞のあとについて「~してまわる」をそえる使い方(補助動詞)です。

テストでは「ありく」を機械的に「歩く」と訳さないのがコツ。「動き回る・出歩く・~してまわる」のどれが合うか、場面で選びましょう。

ののしる ― 「悪口」ではなく「大声で騒ぐ・評判になる」

(1) 現代語の感覚
今の「ののしる」は「人を悪く言う」「ひどい言葉でどなる」という、悪い意味で使いますね。

(2) 古語の本当の意味
古文の「ののしる」は、悪口とはかぎりません。中心は「大声で騒ぐ・声を立ててやかましくする」です。さらにそこから、「世間で評判になる・もてはやされる」という意味にも広がります。みんなが声をあげて話題にするほど有名だ、という良い文脈でも使われるのです。

(3) 例文と現代語訳

  • 例文:いみじう ののしり て、人々あつまりたり。
    現代語訳:たいそう大声で騒いで、人々が集まっている。
    → ①「大声で騒ぐ」の意味。けんかや悪口ではなく、にぎやかさを表します。
  • 例文:その人、世に ののしり たまふ。
    現代語訳:その人は、世間で評判が高くていらっしゃる
    → ②「評判になる・もてはやされる」の意味。良い意味で使われています。

見分け方は、「世に」などとともに、人やものごとが話題になっている文脈なら「評判になる」、その場でガヤガヤ声がしている場面なら「大声で騒ぐ」と考えることです。

なぜ意味がズレるのか ― 「語の中心イメージ」で覚える

4語に共通するのは、その言葉のいちばん奥にある「中心イメージ」をつかむと、現代語とのちがいがスッと分かるということです。バラバラに暗記するより、ずっとラクで忘れにくくなります。

  • おぼゆ=「自然に心にうかぶ」というイメージ。だから「自然に思われる」、人なら「似て見える」、過去のことなら「思い出される」。
  • おどろく=「はっと意識が立ち上がる」というイメージ。だから「気づく」、ねむりからなら「目を覚ます」。
  • ありく=「あちこち動く」というイメージ。だから「歩く」に限らず「動き回る・出歩く」。
  • ののしる=「大きな声がわき上がる」というイメージ。だから「大声で騒ぐ」、世間でなら「評判になる」。

現代語は、このうちの一部の意味だけが強く残った形だと考えると分かりやすいです。たとえば「ののしる」は、昔は広く「大声を出す」全般でしたが、今は「悪口の大声」だけが残った、というわけです。「昔のほうが意味が広い」と覚えておくと、多くの古今異義語に応用できます。

1分チェック(3問)

仕上げに、3問で確認しましょう。下線部の意味を、現代語で答えてみてください。

  • 第1問:風の音にぞおどろかれぬる。 → 「おどろく」の意味は?
  • 第2問:この子は母君にいとようおぼえたり。 → 「おぼゆ」の意味は?
  • 第3問:その人、世にののしりたまふ。 → 「ののしる」の意味は?

解答

  • 第1問:はっと気づく(気づかされる)。「びっくりする」ではありません。風の音で秋に気づいた、という場面です。
  • 第2問:似ている。人物どうしの話なので「暗記する」ではなく「似る」と訳します。
  • 第3問:世間で評判が高い(もてはやされる)。「悪口を言う」ではなく、良い意味の評判です。

全問できたら、この4語はもうあなたの味方です。古文は「現代語と同じ形なのに意味がちがう言葉」さえ押さえれば、ぐっと読みやすくなります。中心イメージごと覚えて、ほかの単語にも広げていきましょう。

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