高校漢文の定番教材、白居易『長恨歌(ちょうごんか)』の定期テスト対策問題です。全百二十句と長い詩ですが、テストに出るところはほぼ決まっています。書き出しの「漢皇 色を重んじて傾国を思ふ」、楊貴妃の美しさをうたう「眸を回らして一笑すれば百媚生じ」、そしてしめくくりの「在天願作比翼鳥、在地願為連理枝」。語句の意味、再読文字「未」、「願はくは〜ん」の願望、そして「長恨」という題名の意味が、くり返しねらわれます。
ここでは、教科書によく採られるその三か所を本文にして、傍線①〜⑮に沿って全28問。語句・句法・指す内容・口語訳・記述・文学史の順に並べてあるので、自分がどこで落としているのかがはっきりします。問題編・解答編とも縦書きの無料PDFつき(印刷OK)で、本番と同じ形で手を動かして確かめられます。
先に物語の流れをつかみたい人は、白居易(白楽天)と『長恨歌』のやさしい解説へどうぞ。玄宗皇帝と楊貴妃の話の全体像と、『源氏物語』桐壺とのつながりまで確認できます。
白文(原文)
漢皇重色思傾国 御宇多年求不得 楊家有女初長成 養在深閨人未識 天生麗質難自棄 一朝選在君王側 回眸一笑百媚生 六宮粉黛無顔色
(中略)
承歓侍宴無閑暇 春従春遊夜専夜 後宮佳麗三千人 三千寵愛在一身
(中略)
臨別殷勤重寄詞 詞中有誓両心知 七月七日長生殿 夜半無人私語時 在天願作比翼鳥 在地願為連理枝 天長地久有時尽 此恨綿綿無絶期
書き下し文(傍線①〜⑮)
漢皇(かんこう)①色を重んじて②傾国(けいこく)を思ふ 御宇(ぎょう)多年 ③求むれども得ず
楊家(ようか)に女(むすめ)有り 初めて長成す 養はれて深閨(しんけい)に在り ④人未(いま)だ識(し)らず
⑤天生(てんせい)の麗質(れいしつ) ⑥自(みづか)ら棄て難く ⑦一朝(いっちょう)選ばれて君王の側(かたはら)に在り
⑧眸(ひとみ)を回(めぐ)らして一笑(いっしょう)すれば百媚(ひゃくび)生じ ⑨六宮(りくきゅう)の粉黛(ふんたい)顔色(がんしょく)無し
(中略)
歓(かん)を承(う)け宴に侍して 閑暇(かんか)無く 春は春の遊びに従ひ 夜は夜を専(もっぱ)らにす
後宮の佳麗(かれい)三千人 ⑩三千の寵愛(ちょうあい) 一身に在り
(中略)
別れに臨みて殷勤(いんぎん)に重ねて詞(ことば)を寄す 詞中(しちゅう)に誓ひ有り ⑪両心(りょうしん)のみ知る
⑫七月七日 長生殿(ちょうせいでん) 夜半(やはん)人無く 私語(しご)の時
天に在(あ)りては⑬願はくは比翼(ひよく)の鳥と作(な)り 地に在りては願はくは⑭連理(れんり)の枝と為(な)らん
天は長く地は久しきも 時有りて尽きん ⑮此(こ)の恨みは綿綿(めんめん)として 絶ゆる期(とき)無からん
語注 漢皇=漢の皇帝。実際は唐の玄宗皇帝をさす(前の時代にことよせた言い方)。 傾国(けいこく) 御宇=天下を治めている間。 長成=成長して年ごろになること。 深閨=家の奥にある女性の部屋。 天生の麗質(てんせいのれいしつ) 一朝(いっちょう) 君王(くんおう) 眸=ひとみ。 百媚=あふれるほどのなまめかしさ・愛らしさ。 六宮=後宮。きさきたちの住まい。 粉黛(ふんたい) 閑暇=ひま。 佳麗=美しい女性。 殷勤=ねんごろに。心をこめて。 長生殿=宮中の御殿の名。驪山(りざん)の華清宮にあったとされる。 私語=二人だけのささやき。 比翼の鳥=めすとおすが目も翼も一つずつしかなく、二羽並んではじめて飛べるという伝説の鳥。 連理の枝=別々の木の枝が途中でつながって一本になったもの。 綿綿(めんめん) ※(中略)=一つめは華清池での入浴など寵愛の場面、二つめは安史の乱(七五五年)での死別、玄宗の嘆き、道士が楊貴妃の魂をたずねる場面。
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使い方のおすすめ。①まず何も見ずに解く → ②解答で答え合わせ → ③まちがえた設問の番号と同じ傍線を本文で探して読み直す。
設問
A 語句の意味と読み
- ①「色を重んじて」とは、皇帝が何を第一にしていたということか。
- ②「傾国(けいこく)」の意味を書け。
- ⑤「天生(てんせい)の麗質(れいしつ)」の意味を書け。
- ⑦「一朝(いっちょう)選ばれて君王の側(かたはら)に在り」の「一朝」の意味を書け。
- ⑨「六宮(りくきゅう)の粉黛(ふんたい)顔色(がんしょく)無し」の「粉黛」は、もともと何を指す語か。またここでは何をたとえているか。
- ⑫「七月七日」は何の日か。
- ⑮「此(こ)の恨みは綿綿(めんめん)として 絶ゆる期(とき)無からん」の「綿綿」の意味を書け。
B 句法
- ③「求むれども得ず」の「ども」は、前後をどのような関係でつなぐ語か。順接・逆接のどちらかで答え、そう判断できる根拠(直前の活用形)も書け。
- ④「人未(いま)だ識(し)らず」の「未」のような字を何というか。名称と、ここでの読み方・意味を書け。
- ⑥「自(みづか)ら棄て難く」の「難」の意味を書け。また、白文「難自棄」に返り点を付けよ。
- ⑧「眸(ひとみ)を回(めぐ)らして一笑(いっしょう)すれば百媚(ひゃくび)生じ」の「すれば」は、どのような条件を表すか。
- ⑬「願はくは比翼(ひよく)の鳥と作(な)り」・⑭「連理(れんり)の枝と為(な)らん」の「願はくは」は何を表す言い方か。また、それを受けて文末はどう結んでいるか。
- ⑮の「絶ゆる期(とき)無からん」の「ん」の意味・用法を書け。
C 主語・指す内容
- ⑥「自(みづか)ら棄て難く」とあるが、棄てられず(埋もれさせておけず)にいたのは何か。
- ⑦「一朝(いっちょう)選ばれて君王の側(かたはら)に在り」の「君王」とは、だれのことか。
- ⑪「両心(りょうしん)のみ知る」の「両心」とは、だれとだれの心か。
- ⑬「願はくは比翼(ひよく)の鳥と作(な)り」・⑭「連理(れんり)の枝と為(な)らん」は、もともとだれとだれが、いつ・どこで交わした言葉か。
D 口語訳
- ③「求むれども得ず」を口語訳せよ。
- ⑧「眸(ひとみ)を回(めぐ)らして一笑(いっしょう)すれば百媚(ひゃくび)生じ」を口語訳せよ。
- ⑨「六宮(りくきゅう)の粉黛(ふんたい)顔色(がんしょく)無し」を口語訳せよ。
- ⑮「此(こ)の恨みは綿綿(めんめん)として 絶ゆる期(とき)無からん」を口語訳せよ。
E 内容・記述
- ⑩「三千の寵愛(ちょうあい) 一身に在り」とあるが、これは楊貴妃がどのような立場にあったことを表しているか。三十五字以内で書け。
- ⑬「願はくは比翼(ひよく)の鳥と作(な)り」・⑭「連理(れんり)の枝と為(な)らん」で、二人はこの二つを重ねて何を表そうとしているか。また、ここから生まれた四字の言葉を書け。
- ⑮「此(こ)の恨みは綿綿(めんめん)として 絶ゆる期(とき)無からん」は、題名『長恨歌』とどう結びついているか。説明せよ。
- (あらすじ欄も参考にして)この詩は、前半(傍線①〜⑩のあたり)と後半(傍線⑪〜⑮のあたり)とで、二人の関係がどのように変わっているか。四十字以内で書け。
F 文学史
- この詩の作者はだれか。本名と字(あざな)、および唐のどの時期の人かを書け。
- この詩の詩形を書け。また、全体で何句あるか。
- この詩を下敷きにしていることで知られる『源氏物語』の巻の名を書け。また、その巻でこの詩の二人と重ねて描かれるのはだれとだれか。
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解答と解説
▼ 解答・解説を見る
A 語句の意味と読み
問1 女性の美しさ(美人を手に入れること)を、何よりも大切にしていたということ。
└ 「色」=女性の美しさ
問2 国をかたむける(ほろぼす)ほどの絶世の美女。
└ 「国を傾ける」が、そのまま美女をさす語になった
問3 生まれつきそなわった美しさ(美貌)。
└ 「天生」=天が生んだ=生まれつき
問4 ある朝。ある日。ひとたび。
└ 「一朝一夕」と同じ「一朝」。ここは「ある日・ひとたび」の意
問5 もとは、おしろい(粉)とまゆずみ(黛)=化粧の道具。ここでは、化粧をした後宮の女性たちをたとえている。
└ 道具で、それを使う人をたとえる言い方
問6 七夕。牽牛(けんぎゅう)と織女(しょくじょ)が、年に一度だけ会うとされる夜。
└ ★二人が永遠の愛を誓う夜としてふさわしい日
問7 細く長く続いて、いつまでも絶えないようす。
└ 「綿」=糸が長く続くイメージ
B 句法
問8 逆接(の確定条件)。「ども」の上の「求むれ」が已然形だから。=求めたけれども、得られなかった。
└ 已然形+「ども(ど)」で逆接の確定条件。ここは下二段「求む」の已然形「求むれ」に付いている
問9 再読文字。「いまだ〜ず」と二度読み、「まだ〜ない」の意。ここは「(世間の)人はまだ知らなかった」。
└ ★ほかに将・且・当・応・宜・須・猶・盍など
問10 「難シ」で「〜しにくい・〜するのがむずかしい」の意。返り点は「難」に二点、「棄」に一点を付ける(難[二]自 棄[一])。自→棄→難の順に読み、二字以上さかのぼって返るのでレ点は使えない。読みは本文どおり「自ら棄て難く」。
└ 反対の「易(やす)シ」=〜しやすい とセットで覚える。一字だけ返るときがレ点、二字以上返るときが一・二点
問11 已然形「すれ」+「ば」で、順接の確定条件。ここは「〜するといつも」という恒常条件にあたる。※教科書によっては「〜すると」と仮定ふうに説明することもあるので、お使いの教科書の説明に合わせること。
└ ★未然形+「ば」(仮定条件)との区別が頻出
問12 願望(どうか〜したい・〜してほしい)を表す。文末は⑭の「為らん」のように「〜ん(む)」で結ぶ。
└ 「願ハクハ〜ント」の形で覚える
問13 推量の助動詞「む(ん)」で、「〜だろう」の意。※「無し」は状態を表す形容詞なので、ここに意志の「む」は付かない。文末の「ん」は推量と判断してよい。
└ 「無し」+「ん」=「ないだろう」
C 主語・指す内容
問14 (楊貴妃の)天生の麗質=生まれつきそなわった美しさ。「自ら棄て難し」の主語は人ではなく「麗質」で、そのまま埋もれさせておくことができなかった、の意。※「自」を「おのずと(棄てられない)」と説明する教科書もあるので、お使いの教科書の説明に合わせること。
└ 主語は直前の「天生の麗質」。人を主語にすると訳が通らない
問15 唐の玄宗皇帝。(詩の書き出しでは「漢皇」と呼ばれている人物)
└ 詩の書き出しの「漢皇」と同じ人物をさす
問16 玄宗皇帝と楊貴妃、二人の心。
└ 別れぎわに誓いを交わしたのは二人だけ、という場面
問17 玄宗皇帝と楊貴妃が、七月七日の夜、長生殿で交わした誓いの言葉。(詩の中では、楊貴妃の魂がたずねてきた道士に託して伝えている)
└ 七月七日の夜、長生殿でのささやき。それを楊貴妃の魂が道士に託している
D 口語訳
問18 (絶世の美女を)求めたけれども、得られなかった。
└ 「求むれ+ども」=逆接、「得ず」=得られなかった
問19 (楊貴妃が)ひとみをめぐらしてにっこり笑うと、あふれるほどの愛らしさ・なまめかしさが生まれ、
└ 「一笑すれば」=にっこり笑うと、「百媚生じ」=あふれる愛らしさが生まれ
問20 後宮にいる化粧をした女性たちは、(彼女とくらべると)まるで色あせて見えてしまった。
└ 「粉黛」=化粧をした女性たち、「顔色無し」=色あせて見える
問21 この(別れの)恨みは、いつまでも長く続いて、絶えるときがないだろう。
└ 「綿綿」=長く続く、「期無からん」=時がないだろう
E 内容・記述
問22 後宮の三千人の中で、皇帝の愛を一身に独占する立場。(二十五字)
└ 「三千」と「一身」の数の対比が答えの骨
問23 どちらも「二つがそろって、はじめて一つになる」もので、決して離れない深い男女の愛を表している。ここから「比翼連理(ひよくれんり)」という言葉が生まれた。
└ 比翼の鳥も連理の枝も、単独では成り立たない点が共通
問24 「長恨」=長く続く、いつまでも消えない恨み(深い悲しみ・心残り)の意。この最後の一句が題名の意味をそのまま言いあらわし、詩全体をしめくくっている。
└ 「長恨」=長く消えない恨み
問25 前半は寵愛を独占する幸福な日々、後半は死別し、誓いの言葉だけが残る悲しみ。(三十七字)
└ (中略)の間に安史の乱と死別が起きている
F 文学史
問26 白居易(はくきょい)。字は楽天で、「白楽天」とも呼ばれる。中唐の詩人(七七二〜八四六年)。
└ 平易でわかりやすい詩風。日本でも『白氏文集』が愛読された
問27 七言古詩。全百二十句。
└ 一句が七字。句数の決まっていない古体詩
問28 桐壺(第一帖)。帝(桐壺帝)と桐壺更衣が、玄宗皇帝と楊貴妃に重ねて描かれている。
└ ★『桐壺』には、絵に描かれた「長恨歌」を見て嘆く場面がある
【テスト直前チェック】この三つ
❶再読文字「未」は「いまだ〜ず」。④「人未だ識らず」=「(世間の)人はまだ知らなかった」。名称・読み方・意味の三つをまとめて聞かれます。
❷「願はくは〜ん」は願望。⑬「願はくは比翼の鳥と作り」・⑭「連理の枝と為らん」。二つセットで「比翼連理」=決して離れない深い愛、と答えられるように。
❸記述の答えは最後の一句に集まる。⑮「此の恨みは綿綿として絶ゆる期無からん」が、そのまま題名「長恨(=長く消えない恨み)」の意味です。
現代語訳(全文)
漢の皇帝(=玄宗)は女性の美しさを何より大切にし、国をかたむけるほどの絶世の美女を求めていた。天下を治めて長い年月がたったが、求めても得られなかった。
楊家に一人の娘がいて、ちょうど年ごろになったばかりであった。家の奥深い部屋で大切に育てられていて、世間の人はまだだれも知らなかった。
生まれつきの美しさは、そのまま埋もれさせておくことができず、ある日、選ばれて皇帝のおそばに上がった。
(楊貴妃が)ひとみをめぐらしてにっこり笑うと、あふれるほどの愛らしさ・なまめかしさが生まれ、後宮の化粧をした女性たちは、(彼女とくらべると)まるで色あせて見えてしまった。
(中略)
皇帝の歓心を受け、宴席にはべって、ひまなときとてなく、春は春の遊びのお供をし、夜は夜で皇帝をひとりじめにした。後宮には美しい女性が三千人もいたが、その三千人分の寵愛が、彼女ひとりの身に集まっていた。
(中略)
別れぎわに、(楊貴妃の魂は)心をこめて、重ねて言葉を託した。その言葉の中には誓いがあって、二人の心だけが知っているものであった。
「七月七日、長生殿で、夜ふけにだれもいない、二人だけでささやき合ったとき(に、こう誓ったのです)。天上に生まれ変わるならば、どうか比翼の鳥になりたい。地上に生まれ変わるならば、どうか連理の枝になりたい、と。」
天は長く地は久しいものだが、それでもいつかは尽きるときがあろう。しかしこの(別れの)恨みは、いつまでも長く続いて、絶えるときがないだろう。
※この問題は誰でも古典塾のオリジナルです。本文は古典(著作権の対象外)から正確に引用しています。
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