枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取りを100問で完全習熟
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このドリルでわかること
はじめに:和歌の主要修辞法
| 修辞 | 効果 | 例 |
|---|---|---|
| 枕詞 | 特定語を導く5音の修飾語(訳さない) | あしひきの→山 |
| 序詞 | 7音以上の修辞、特定語を導く | 風吹けば沖つしらなみ→たつ |
| 掛詞 | 1語に2つ意味を重ねる | まつ=松/待つ |
| 縁語 | 関連語を散りばめる | 「松」と「枝」「葉」など |
| 本歌取り | 古歌を踏まえる | 古歌の語句を借用 |
| 体言止め | 文末を体言で締める | 〜山。〜風。 |
| 倒置法 | 語順を入れ替える | 普通文の逆順 |
| 対句 | 同形の句を並べる | 〜+〜の対比 |
主要な枕詞(暗記必須)
| 枕詞 | 導く語 |
|---|---|
| あしひきの | 山・峰 |
| ひさかたの | 光・空・雲・天・月 |
| たらちねの | 母・親 |
| くさまくら | 旅 |
| ちはやぶる | 神 |
| しろたへの | 衣・袖・雪 |
| からごろも | 着る・裁つ |
| あらたまの | 年・月・春 |
| あをによし | 奈良 |
| わかくさの | 妻・新 |
| ぬばたまの | 夜・黒・髪 |
| あかねさす | 日・昼・紫 |
| たまきはる | 命・世 |
| あづさゆみ | 引く・張る・射る |
| もののふの | 八十・矢 |
頻出の掛詞
| 掛詞 | 二重の意味 |
|---|---|
| まつ | 松・待つ |
| ふる | 経る・降る・古る |
| ながめ | 眺め・長雨 |
| あき | 秋・飽き |
| かれ | 枯れ・離れ |
| いる | 入る・射る |
| ふみ | 文・踏み |
| よ | 世・夜・節 |
| すむ | 住む・澄む |
| うき | 浮き・憂き |
識別の鉄則
- 枕詞:ほぼ5音で、かかる語が決まっている(あしひきの→山)。ふつう訳さない。
- 序詞:7音以上で、作者がその歌のために作る前置き。比喩・掛詞・同じ音のくり返しで下の語を導く。
- 掛詞:1つの音に2つの意味を重ねる(地名や植物の名と、心の動きを表す語の組み合わせが多い)。答えは2つの意味を両方書く。
- 縁語:中心の語と意味のつながる語を、わざと詠みこむ(掛詞のもう一方の意味でつながることが多い)。
- 歌の終わり:名詞で終われば体言止め。係助詞(ぞ・なむ・や・か・こそ)があれば、結びの活用形を確かめる(係り結び)。
🎯 解き方のコツ(時短テクニック)
修辞法は丸暗記が王道。
こちらは 試験本番ですばやく見抜く ための実戦テクニックです。
コツ① 歌の冒頭5音が「あしひきの/ひさかたの/たらちねの…」なら即「枕詞」
歌の最初の5音に違和感のある言葉が来ていたら、まず枕詞を疑う。 – 「あしひきの」が来たら次は山 → 枕詞 – 「ひさかたの」が来たら次は光・空・月 → 枕詞 – 「ぬばたまの」が来たら次は夜・黒 → 枕詞
主要15個を覚えておけば、枕詞の問題の多くに対応できる。ただし、枕詞は第三句に来ることもある(「田子の浦にうち出でて見ればしろたへの富士の高嶺に…」)。
コツ② 「同じ音で意味が2つに取れそう」と感じたら掛詞
歌の中で 「これ、2通りに読めるな?」 という言葉が出てきたら掛詞。 – 「まつ」(松+待つ)「ふる」(経る+降る+古る)「あき」(秋+飽き)がよく出る – 季節(春・秋)と恋(待つ・飽き)が同居していたら掛詞を疑う
「植物名 + 心情語」のセットを見たら反射で掛詞をチェック。
コツ③ 序詞は「7音以上で、ある語を導く前置き」
枕詞との違いは 長さ。 – 5音で、かかる語がほぼ決まっている → 枕詞 – 7音以上で、作者がその歌のために作る → 序詞
「風吹けば沖つしらなみ」(7音以上)→「たつ」を導く序詞。 「あしひきの」(5音)→「山」を導く枕詞。
序詞が下の語を導くつながり方は3つ。 – 比喩(〜のように):「あしひきの山鳥の尾のしだり尾の」→「ながながし」 – 掛詞(同じ音で別の意味):「風吹けば沖つしらなみ」→「たつ」(白波が立つ・たつた山) – 同じ音のくり返し:「浅茅生の小野の篠原」→「しのぶ」
コツ④ 縁語は「テーマ単語の家族探し」
歌の中心テーマ(松・衣・舟・水)に関連する単語が散りばめられていたら縁語。 – 「松」 → 「枝」「葉」「色」「常磐」 – 「衣」 → 「袖」「裾」「縫ふ」「裁つ」 – 「水」 → 「流れ」「淀む」「波」「澄む」
「主役の単語の家族」がいたら縁語と判定する。ただし、歌の内容をそのまま言っているだけ(「雪」が「降る」、「衣」を「うつ」など)は縁語と言わない。縁語は、掛詞などのもう一つの意味で主役の語とつながることが多い(「玉の緒」の「緒」→「絶え」「ながらへ」「弱り」)。
試験本番でのチェック順序
- 冒頭5音 をチェック(枕詞リストにあるか)
- 同音異義に取れる単語 をチェック(掛詞)
- 7音以上で後半につながる句 をチェック(序詞)
- テーマ単語の関連語が散りばめられて いないか(縁語)
→ この順番で見ていけば、見落としが減ります。
よくある引っかけ
- 枕詞と序詞を 長さ で区別せず誤答(5音か7音以上かが目安)
- 「あしひきの山」を「あしひき+の」と切って枕詞だと気づかない
- 掛詞を どちらか一方の意味 でしか取らない(必ず2つ書く)
問題(Q1〜Q100)
ここから100問を表示します。スマホでも解けるよう、答えと解説は各問の直下に表示しています。「解答が見えると解いた気にならない」という方は、上のPDFをダウンロードして印刷で解いてください。
【第1部】基礎編(Q1〜Q20)
主要な枕詞・代表的な掛詞・体言止め等の基礎修辞。
Q1.修辞法を答えよ。
あしひきの山鳥の尾の…
答え:枕詞「あしひきの」(→山) 解説:「山」を導く枕詞。訳さない。
Q2.修辞法を答えよ。
ひさかたの光のどけき春の日に…
答え:枕詞「ひさかたの」(→光) 解説:「光」「空」「天」「月」を導く枕詞。
Q3.修辞法を答えよ。
たらちねの母…
答え:枕詞「たらちねの」(→母) 解説:「母」「親」を導く枕詞。
Q4.修辞法を答えよ。
くさまくら旅にしあれば…
答え:枕詞「くさまくら」(→旅) 解説:「旅」を導く枕詞。
Q5.修辞法を答えよ。
ちはやぶる神代もきかず竜田川…
答え:枕詞「ちはやぶる」(→神) 解説:「神」を導く枕詞。在原業平の有名な歌。
Q6.修辞法を答えよ。
しろたへの衣干したり…
答え:枕詞「しろたへの」(→衣) 解説:「衣」「袖」「雪」を導く枕詞。
Q7.修辞法を答えよ。
風吹けば沖つしらなみたつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ
答え:序詞「風吹けば沖つしらなみ」(→たつ)/掛詞「たつ」(立つ・龍田) 解説:「風吹けば沖つしらなみ」が、白波が「立つ」と同じ音で「たつた山」を導く序詞。「たつ」は「(白波が)立つ」と「龍田(山)」の掛詞。伊勢物語の有名な歌。
Q8.修辞法を答えよ。
夢と知りせば覚めざらましを
答え:反実仮想「せば〜まし」 解説:「せば〜まし」反実仮想。「夢だと知っていたなら、目を覚まさなかっただろうに」。「せ」は過去の助動詞「き」の未然形。小野小町。
Q9.修辞法を答えよ。
花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせし間に
答え:掛詞「ふる」(経る・降る)「ながめ」(眺め・長雨) 解説:小野小町の有名な歌。1語に2意味の掛詞。
Q10.修辞法を答えよ。
あらざらむ此の世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな
答え:願望の終助詞「もがな」 解説:和泉式部の歌。「(私はまもなくこの世からいなくなるでしょう。)あの世への思い出に、せめてもう一度だけあなたに逢いたいものです」。「もがな」は願望の終助詞(〜があればなあ)で、詠嘆ではない。
Q11.修辞法を答えよ。
あらたまの年の暮れになりにけり…
答え:枕詞「あらたまの」(→年) 解説:「年」「月」「春」を導く枕詞。
Q12.修辞法を答えよ。
あをによし奈良の都は…
答え:枕詞「あをによし」(→奈良) 解説:「奈良」を導く枕詞。
Q13.修辞法を答えよ。
わかくさの妻…
答え:枕詞「わかくさの」(→妻) 解説:「妻」「新」を導く枕詞。
Q14.修辞法を答えよ。
ぬばたまの黒髪…
答え:枕詞「ぬばたまの」(→黒) 解説:「夜」「黒」「髪」を導く枕詞。
Q15.修辞法を答えよ。
春過ぎて夏来たるらししろたへの衣干したり天の香具山
答え:体言止め(「天の香具山」) 解説:万葉集・持統天皇の有名な歌。「春が過ぎて夏が来たらしい。真っ白な衣が干してある、天の香具山に」。名詞「天の香具山」で終わる体言止め。「しろたへの」は「衣」の枕詞(Q6と同じ)。百人一首(新古今集)では「春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」の形。
Q16.修辞法を答えよ。
名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
答え:擬人法(「都鳥」への呼びかけ) 解説:伊勢物語(古今集)・在原業平の歌。「(都という)名を持っているのなら、さあ尋ねよう、都鳥よ。私の恋しく思う人は無事でいるのかいないのかと」。鳥に人のように呼びかけて問う擬人法。歌末は「ありやなしやと」で、体言止めではない。
Q17.修辞法を答えよ。
たまきはる命を…
答え:枕詞「たまきはる」(→命) 解説:「命」「世」を導く枕詞。
Q18.修辞法を答えよ。
人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける
答え:係り結び「ぞ〜ける」(連体形結び) 解説:紀貫之の歌(古今集・百人一首)。「ぞ」(強調)の係り結びで、結びは過去・詠嘆の助動詞「けり」の連体形「ける」。「人の心は、さあどうだかわからない。でも昔なじみのこの里では、梅の花が昔のままの香りで咲きにおっていることだ」。修辞というより文法。
Q19.修辞法を答えよ。
月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身ひとつはもとの身にして
答え:係り結び「や〜ぬ」(疑問) 解説:在原業平の歌。「や」は疑問の係助詞で、結びは打消「ず」の連体形「ぬ」。「月は昔の月ではないのか。春は昔の春ではないのか。わが身ひとつだけはもとのままであって(あの人はもういない)」。「や」を反語と取り、「いや、月も春も昔のままだ」と訳す説もある。
Q20.修辞法を答えよ。
桜散る木のしたかぜは寒からでそらに知られぬ雪ぞふりける
答え:見立て(散る桜の花びらを雪に見立てる) 解説:紀貫之の歌(拾遺集)。「桜が散る木の下を吹く風は寒くはなくて、空の知らない雪が降っていることだ」。散る花びらを、空から降ったのではない「空に知られぬ雪」に見立てている。「雪」が「降る」のはそのままの言い方なので縁語とはいわず、「古り」を掛けた掛詞でもない。
基礎編 /20
【第2部】標準編(Q21〜Q50)
枕詞・序詞の応用、掛詞・縁語の標準問題。
Q21.修辞法を答えよ。
あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る
答え:枕詞「あかねさす」(→紫) 解説:額田王の歌。「紫」「日」「昼」を導く。
Q22.修辞法を答えよ。
からごろも着つつなれにし妻しあれば…
答え:枕詞「からごろも」(→着) 解説:在原業平(伊勢物語・古今集)。「からごろも(唐衣)」は「着る」にかかる枕詞。この歌では「からごろも着つつ」までを「なれ」を導く序詞とみる説明もある。各句の頭の音をつなぐと「かきつばた」になる折句の歌。
Q23.修辞法を答えよ。
あづさゆみ春の山辺を越え来れば…
答え:枕詞「あづさゆみ」 解説:「あづさゆみ(梓弓)」は本来「引く・張る・射る・本・末」を導く枕詞。ここでは弓を「張る」と春の「はる」の同音利用で「春」にかかる用法。枕詞自体は訳出しないのが原則。
Q24.修辞法を答えよ。
わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり
答え:掛詞「うぢ」(宇治・憂し) 解説:喜撰法師の歌(古今集・百人一首)。「私の庵は都の東南にあり、このように(心静かに)住んでいる。それなのに、世をつらいと思って逃れ住む宇治山だと、世間の人は言っているそうだ」。「宇治山」の「うぢ」に「憂し」を掛ける。
Q25.修辞法を答えよ。
立ちわかれいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む
答え:掛詞「まつ」(松・待つ)/「いなば」(往なば・因幡) 解説:在原行平。地名「因幡」と「往なば」、植物「松」と動詞「待つ」の二重掛詞。
Q26.修辞法を答えよ。
大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立
答え:掛詞「ふみ」(文・踏み) 解説:小式部内侍。「踏み」(道)と「文」(手紙)の掛詞。
Q27.修辞法を答えよ。
心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花
答え:体言止め(「花」) 解説:凡河内躬恒。「花」で締める体言止め。
Q28.修辞法を答えよ。
風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりける
答え:掛詞「なら」(楢・ならの小川)/係り結び「ぞ〜ける」(連体形結び) 解説:従二位家隆の歌。「風が楢の葉をそよがせる、ならの小川の夕暮れは(秋のように涼しいが)、みそぎ(陰暦六月末の夏越の祓)が行われていることだけが、夏であるしるしなのだなあ」。みそぎは実際に行われている行事で、何かのたとえではない。
Q29.修辞法を答えよ。
君がため春の野に出でて若菜つむ我が衣手に雪は降りつつ
答え:つつ止め(反復・継続の「つつ」で終えて余情を残す) 解説:光孝天皇。「あなたのために春の野に出て若菜を摘む私の袖に、雪がしきりに降りかかっている」。歌を接続助詞「つつ」で終え、情景がその後も続く余情を残す。語の順はふつうで、倒置法ではない。
Q30.修辞法を答えよ。
しのぶれど色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで
答え:倒置法(ふつうの順は「わが恋はしのぶれど色に出でにけり」) 解説:平兼盛。「(人に知られまいと)こらえてきたが、顔色に出てしまったことだ、私の恋は。物思いをしているのかと人が尋ねるほどに」。主語「わが恋は」が後ろに回った倒置法(二句切れ)。「しのぶ」は「忍ぶ(こらえる)」の意味だけで掛詞ではなく、「色」「出づ」も縁語ではない。
Q31.修辞法を答えよ。
来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの身もこがれつつ
答え:掛詞「まつ」(待つ・松帆の浦)/縁語「焼く」「もしほ」「こがれ」 解説:藤原定家。「来ない人を待つ私は、松帆の浦の夕なぎのころに焼く藻塩のように、身も恋い焦がれている」。「まつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの」は「こがれ」を導く序詞。「焼く」「もしほ(藻塩)」「こがれ」は火に縁のある語で、縁語。
Q32.修辞法を答えよ。
田子の浦にうち出でて見ればしろたへの富士の高嶺に雪は降りつつ
答え:枕詞「しろたへの」 解説:「しろたへの(白妙の)」は本来「衣・袖・雪・雲・たもと」などを導く枕詞。この歌では富士の白さを修飾する転用例。山部赤人。この形は『新古今和歌集』『百人一首』のもので、もとの『万葉集』の歌は「田子の浦ゆうち出でて見ればま白にそ富士の高嶺に雪は降りける」で、「しろたへの」はない。「白妙」は楮(こうぞ)の繊維で織った白い布で、白色のイメージを喚起する。
Q33.修辞法を答えよ。
あけぼのぞ春のあはれと知らるらむ
答え:係り結び「ぞ〜らむ」(連体形結び) 解説:「ぞ」の強調+「らむ」の現在推量。
Q34.修辞法を答えよ。
世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし
答え:反実仮想「せば〜まし」 解説:在原業平の歌(古今集・伊勢物語)。「世の中にまったく桜がなかったならば、春の人の心はのどかだっただろうに」。「せ」は過去の助動詞「き」の未然形。実際には桜があるので、散るのが気がかりで心が落ち着かない。
Q35.修辞法を答えよ。
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶる事の弱りもぞする
答え:縁語(「緒」の縁語「絶え」「ながらへ」「弱り」) 解説:式子内親王。「私の命よ、絶えるならば絶えてしまえ。生き長らえていると、(恋を)こらえる心が弱って(人に知られて)しまうといけないから」。「玉の緒」は命のこと。「緒」(ひも)に縁のある「絶え」「ながらへ」「弱り」を詠みこんでいる。
Q36.修辞法を答えよ。
春の夜の夢の浮橋とだえして峰にわかるる横雲の空
答え:体言止め(「空」) 解説:藤原定家。新古今集の象徴的歌。名詞「空」で終わる体言止め。(「浮橋」と「とだえ」の縁語はQ81)
Q37.修辞法を答えよ。
心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮
答え:体言止め(「夕暮」) 解説:西行。三夕の歌の一首。
Q38.修辞法を答えよ。
見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮
答え:体言止め(「夕暮」) 解説:藤原定家。三夕の歌。
Q39.修辞法を答えよ。
さびしさはその色としもなかりけり槙立つ山の秋の夕暮
答え:体言止め(「夕暮」) 解説:寂蓮。三夕の歌。
Q40.修辞法を答えよ。
久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
答え:擬人法(花を「しづ心なく」と人のように言う) 解説:紀友則。古今集の名歌。「日の光がのどかな春の日に、どうして落ち着いた心もなく花が散るのだろう」。花に「しづ心(落ち着いた心)」がないと、人のように言う擬人法。「ひさかたの」は「光」の枕詞(Q2)。
Q41.修辞法を答えよ。
夕されば門田の稲葉おとづれて葦のまろ屋に秋風ぞ吹く
答え:係り結び「ぞ〜吹く」(連体形結び) 解説:大納言経信。「ぞ」の強調。
Q42.修辞法を答えよ。
風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふ頃かな
答え:序詞「風をいたみ岩うつ波の」(→砕け) 解説:源重之。波の砕ける情景で恋心の砕けを導く序詞。
Q43.修辞法を答えよ。
嘆けとて月やはものを思はするかこち顔なるわが涙かな
答え:擬人法(涙を「かこち顔」と人のように言う)/反語「やは」 解説:西行。「嘆けといって月が私に物思いをさせるのか、いや、そうではない。それなのに、月のせいにするような顔つきでこぼれる私の涙だなあ」。涙に「かこち顔(恨めしそうな顔)」と人のような顔があると言う擬人法。
Q44.修辞法を答えよ。
山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば
答え:掛詞「かれ」(枯れ・離れ) 解説:源宗于。「人目が離れる」と「草が枯れる」の掛詞。
Q45.修辞法を答えよ。
滝の音はたえて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ
答え:縁語(「滝」の縁語「流れ」「聞こえ」) 解説:藤原公任。「滝の音は絶えて長い年月がたったけれど、その名声は世に流れ伝わって、今もなお聞こえていることだ」。「名」が「流れ」「聞こえ」ると言うところに、「滝」に縁のある語を使っている。「こそ〜けれ」は係り結び。
Q46.修辞法を答えよ。
千早ぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは
答え:倒置法(ふつうの順は「竜田川からくれなゐに水くくるとは神代もきかず」) 解説:在原業平。百人一首。「神代にも聞いたことがない。竜田川が(紅葉で)水を真っ赤にくくり染めにするとは」。歌末は助詞「とは」で終わっており体言止めではない。「からくれなゐに水くくるとは(神代にも聞かない)」と下から上へ返る倒置。「ちはやぶる」は「神」の枕詞(Q5)。
Q47.修辞法を答えよ。
吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ
答え:文字遊び(「山」+「風」=「嵐」)/掛詞「あらし」(嵐・荒らし) 解説:文屋康秀。「吹くとすぐに秋の草木がしおれるので、なるほど山から吹く風を『嵐(荒らし)』というのだろう」。「嵐」という漢字を「山」と「風」に分ける文字の遊び(離合)。「あらし」に草木を「荒らす」意を掛ける。古今集・百人一首22番。なお「折句」は各句頭の文字を続けて意味を作る修辞で、別の技法。
Q48.修辞法を答えよ。
あひ見ての後の心にくらぶれば昔は物を思はざりけり
答え:詠嘆「けり」 解説:権中納言敦忠。「逢って契りを結んだあとの恋しい心に比べると、昔の物思いは、物思いをしなかったのと同じだったのだなあ」。気づきを表す文末の詠嘆「けり」。
Q49.修辞法を答えよ。
由良のとを渡る舟人かぢをたえゆくへも知らぬ恋の道かな
答え:序詞「由良のとを渡る舟人かぢをたえ」(→ゆくへも知らぬ) 解説:曾禰好忠。舟が漂う情景で恋の不安を導く序詞。
Q50.修辞法を答えよ。
八重むぐら茂れる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり
答え:係り結び「こそ〜ね」(已然形結び、逆接) 解説:恵慶法師。「人は見えないけれど秋は来た」(逆接)。
標準編 /30
【第3部】応用編(Q51〜Q80)
掛詞・縁語・本歌取り中心の応用問題。
Q51.修辞法を答えよ。
月見れば千々にものこそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど
答え:係り結び「こそ〜けれ」(已然形結び) 解説:大江千里。「こそ」強調。
Q52.修辞法を答えよ。
このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに
答え:掛詞「たび」(旅・度) 解説:菅原道真。「このたび」の「たび」が「旅」と「度」の掛詞。
Q53.修辞法を答えよ。
名にし負はばあふさか山のさねかづら人に知られでくるよしもがな
答え:掛詞「あふ」(逢ふ・逢坂)「くる」(来る・繰る)/縁語「さねかづら」「くる(繰る)」 解説:三条右大臣。「逢坂山のさねかづらが(逢って共寝をするという)その名のとおりなら、つるをたぐり寄せるように、人に知られずに(あなたのもとへ)来る方法があればいいのに」。「さねかづら」の「さね」には「さ寝(共寝)」も掛かる。つる草の「さねかづら」と「繰る」は縁語。
Q54.修辞法を答えよ。
小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ
答え:擬人法 解説:藤原忠平。紅葉を人格化。
Q55.修辞法を答えよ。
君がため惜しからざりし命さへながくもがなと思ひけるかな
答え:願望の終助詞「もがな」 解説:藤原義孝。「あなたのためには惜しくなかった命までも、(逢えた今は)長くあってほしいと思うようになったことだ」。「もがな」は願望の終助詞(〜であってほしい)。
Q56.修辞法を答えよ。
山桜霞のまよりほのかにも見てし人こそ恋しかりけれ
答え:係り結び「こそ〜けれ」(已然形結び) 解説:紀貫之(古今集)。「山桜を霞の間からほのかに見るように、ほんの少し見たあの人が恋しいことだ」。「こそ」の結びは過去・詠嘆の助動詞「けり」の已然形「けれ」。
Q57.修辞法を答えよ。
瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ
答え:序詞「瀬をはやみ岩にせかるる滝川の」(→われても) 解説:崇徳院の歌(詞花集・百人一首)。「川の瀬の流れが速いので、岩にせき止められる急流が二つに分かれてもまた一つになるように、今は別れても、いつかはきっと逢おうと思う」。急流が岩で分かれる情景で「われても(別れても)」を導く序詞。
Q58.修辞法を答えよ。
長からむ心も知らず黒髪の乱れて今朝はものをこそ思へ
答え:縁語(「黒髪」の縁語「長から」「乱れ」) 解説:待賢門院堀河の歌(千載集・百人一首)。「(あなたの心が)いつまでも変わらないかどうかもわからず、今朝は黒髪が乱れているように心も乱れて、物思いをしている」。「長から」「乱れ」は「黒髪」に縁のある語。「こそ〜思へ」は係り結び(已然形)。
Q59.修辞法を答えよ。
春の夜のやみはあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる
答え:係り結び「こそ〜ね」(已然形、逆接)/反語「やは」 解説:凡河内躬恒。「春の夜の闇は筋が通らない。梅の花は、色こそ(闇で)見えないけれど、香りは隠れるだろうか、いや隠れはしない」。「やは」の結びは連体形「かくるる」。
Q60.修辞法を答えよ。
山深み春とも知らぬ松の戸に絶え絶えかかる雪の玉水
答え:体言止め(「玉水」) 解説:式子内親王。新古今集。「山が深いので春が来たとも気づかない松の戸に、とぎれとぎれに落ちかかる雪どけの玉のような水のしずくよ」。名詞「玉水」で終わる体言止め。
Q61.修辞法を答えよ。
駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮
答え:体言止め(「夕暮」) 解説:藤原定家。本歌取り(万葉集を踏まえる)。
Q62.修辞法を答えよ。
難波潟みじかき蘆のふしの間も逢はでこの世を過ぐしてよとや
答え:縁語(「蘆」の縁語「ふし」「よ(節)」)/掛詞「よ」(世・節) 解説:伊勢の歌(新古今集・百人一首)。「難波潟に生える短い蘆の節と節の間のような、ほんの短い間も逢わないで、この世を過ごせとおっしゃるのですか」。「ふし」「よ(節)」は「蘆」に縁のある語で、「世」に蘆の「節(よ)」を掛けている。「難波潟みじかき蘆の」は「ふしの間」を導く序詞。
Q63.修辞法を答えよ。
ほととぎす鳴きつる方を眺むればただ有明の月ぞ残れる
答え:係り結び「ぞ〜残れる」(連体形) 解説:後徳大寺左大臣。「ほととぎすが鳴いた方を眺めると、(姿は見えず)ただ有明の月だけが残っている」。結びの「る」は存続の助動詞「り」の連体形。
Q64.修辞法を答えよ。
いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな
答え:対比(「いにしへ」と「けふ」、「八重」と「九重」) 解説:伊勢大輔。「昔の奈良の都の八重桜が、今日は九重(宮中)で美しく咲きにおっていることだ」。「九重」は宮中のこと。「八重」に数を重ねた「九重」を合わせ、「いにしへ」と「けふ」も対にしている。文末の「かな」は詠嘆。
Q65.修辞法を答えよ。
朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木
答え:体言止め(「網代木」) 解説:藤原定頼。
Q66.修辞法を答えよ。
もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし
答え:擬人法(山桜への呼びかけ) 解説:行尊。山桜を人として語りかける。
Q67.修辞法を答えよ。
高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞たたずもあらなむ
答え:願望の終助詞「なむ」(他への願望) 解説:大江匡房。「遠くの高い山の峰の桜が咲いたなあ。手前の山の霞よ、立たないでいてほしい」。未然形「あら」に付く「なむ」は、他に対する願望の終助詞。
Q68.修辞法を答えよ。
憂かりける人をはつせの山おろしよはげしかれとは祈らぬものを
答え:擬人法(「初瀬の山おろし」への呼びかけ) 解説:源俊頼。「つれなかったあの人が私になびくようにと初瀬の観音に祈ったが、初瀬の山おろしよ、(お前のように)あの人の冷たさがますます激しくなれとは祈らなかったのに」。山から吹き下ろす風に人のように呼びかける。「初瀬」は長谷寺のある地名で、掛詞ではない。
Q69.修辞法を答えよ。
春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ
答え:掛詞「かひな」(腕・かひ無く) 解説:周防内侍の歌(千載集・百人一首)。「春の夜の夢のようにはかない(たわむれの)腕枕のために、何のかいもなく立ってしまうような浮き名が惜しいのです」。「かひな」は「腕(かひな)」と「かひ(甲斐)無く」の掛詞。「こそ〜けれ」は係り結び。
Q70.修辞法を答えよ。
嵐吹くみむろの山のもみぢ葉は龍田の川の錦なりけり
答え:見立て(紅葉を錦に) 解説:能因法師。「嵐が吹く三室の山の紅葉の葉は、竜田川の(水面をいろどる)錦なのであったよ」。紅葉を錦(美しい織物)に見立てる。「なりけり」は気づきの詠嘆。
Q71.修辞法を答えよ。
寂しさにやどを立ち出でて眺むればいづくも同じ秋の夕暮
答え:体言止め(「夕暮」) 解説:良暹法師。三夕系の歌。
Q72.修辞法を答えよ。
わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよあまの釣舟
答え:擬人法(「あまの釣舟」への呼びかけ)/倒置法(ふつうの順は「あまの釣舟、人には告げよ」) 解説:参議篁(小野篁)の歌(古今集・百人一首)。「大海原の多くの島々を目指して漕ぎ出していったと、都にいる人に告げてくれ、漁師の釣り舟よ」。釣り舟に人のように呼びかけて頼む擬人法。歌の終わりは名詞「釣舟」で、体言止めでもある。
Q73.修辞法を答えよ。
音にきく高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ
答え:掛詞「たかし」(高し・高師の浜)/縁語「かけ」「ぬれ」(「波」の縁語) 解説:祐子内親王家紀伊。「うわさに高い高師の浜のむやみに立つ波は(袖に)かけますまい(浮気なあなたの言葉は心にかけますまい)。袖がぬれる(涙でぬれる)といけないから」。「あだ波」は浮気な人のたとえ。「かけ」「ぬれ」は「波」の縁語。「もこそ」は懸念。
Q74.修辞法を答えよ。
ほのぼのと春こそ空に来にけらし天の香具山霞たなびく
答え:本歌取り(本歌は万葉集「ひさかたの天の香具山この夕べ霞たなびく春立つらしも」) 解説:後鳥羽院の歌(新古今集)。「ほのぼのと、春は空にやって来たらしい。天の香具山に霞がたなびいている」。万葉集の歌の「天の香具山」「霞たなびく」を借りて、新しい春の歌にしている。
Q75.修辞法を答えよ。
あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな
答え:詠嘆の終助詞「かな」 解説:謙徳公。「(私を)かわいそうだと言ってくれそうな人は思い浮かばず、(私は)きっとむなしく死んでしまうにちがいないなあ」。「ぬべし」は強意+推量。
Q76.修辞法を答えよ。
住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ
答え:序詞「住の江の岸による波」(→よる) 解説:藤原敏行の歌(古今集・百人一首)。「住の江の岸に寄る波の「よる」ではないが、夜までも、夢の中の通い路で、どうしてあなたは人目を避けているのだろう」。「寄る」と同じ音で「夜」を導く序詞。
Q77.修辞法を答えよ。
めぐりあひて見しやそれともわかぬまに雲がくれにし夜半の月かな
答え:縁語(「月」の縁語「めぐり」「雲がくれ」) 解説:紫式部。「久しぶりにめぐりあって、見たのがあなたかどうかも見分けがつかないうちに、雲に隠れてしまった夜中の月のように、(あなたは)帰ってしまったことだ」。「めぐり」「雲がくれ」は「月」に縁のある語。歌の終わりは「かな」(詠嘆)で、体言止めではない。
Q78.修辞法を答えよ。
有馬山ゐなの笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする
答え:序詞「有馬山ゐなの笹原風吹けば」(→いでそよ) 解説:大弐三位。笹のそよぐ音で「そよ(そうだ)」を導く序詞。
Q79.修辞法を答えよ。
夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関はゆるさじ
答え:掛詞「あふ」(逢ふ・逢坂の関) 解説:清少納言。「夜が明けないうちに、鶏の鳴きまねをしてだまそうとしても、(函谷関ならともかく)この逢坂の関は決して通しませんよ(あなたとは逢いません)」。「よに〜じ」は「決して〜まい」で、「よ」は掛詞ではない。鶏の鳴きまねは『史記』の孟嘗君の函谷関の故事をふまえたもので、古歌をふまえる本歌取りではない。
Q80.修辞法を答えよ。
わびぬれば今はた同じ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ
答え:掛詞「みをつくし」(澪標・身を尽くし) 解説:元良親王の歌(後撰集・百人一首)。「(うわさが立って)思い悩んでいるので、今となってはもう同じことだ。難波にある澪標ではないが、この身を滅ぼしてでも逢おうと思う」。「みをつくし」は、船の通り道を示す杭「澪標」と「身を尽くし」の掛詞。
応用編 /30
【第4部】入試レベル(Q81〜Q100)
難関大頻出の複合修辞・本歌取り・象徴的歌の総合判定。
Q81.修辞法を答えよ。
春の夜の夢の浮橋とだえして峰にわかるる横雲の空
答え:縁語(「浮橋」と「とだえ」) 解説:藤原定家。新古今集。「春の夜のはかない夢がとぎれて(目が覚めると)、峰から横にたなびく雲が離れてゆく明け方の空よ」。「とだえ」は橋がとぎれる意で、「浮橋」の縁語。「夢の浮橋」は『源氏物語』最後の巻の名でもあり、物語をふまえた表現。なお「峰にわかるる」は、古今集・壬生忠岑「風吹けば峰にわかるる白雲のたえてつれなき君が心か」をふまえた本歌取り。(体言止めはQ36)
Q82.修辞法を答えよ。
駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮
答え:本歌取り(万葉集・長奥麻呂「苦しくも降りくる雨か三輪の崎佐野のわたりに家もあらなくに」) 解説:藤原定家。万葉の本歌をふまえる。
Q83.修辞法を答えよ。
み吉野の山の秋風小夜ふけてふるさと寒く衣うつなり
答え:本歌取り(本歌は坂上是則「み吉野の山の白雪つもるらしふるさと寒くなりまさるなり」) 解説:参議雅経(藤原雅経)。新古今集。「吉野の山の秋風が夜ふけに吹いて、古い都の里は寒々として、衣を打つ(砧の)音が聞こえてくる」。本歌の冬の歌を秋の歌に作りかえている。「衣うつ」は砧で衣を打つそのままの言い方で、縁語ではない。文末の「なり」は音による推定。
Q84.修辞法を答えよ。
淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守
答え:体言止め(「須磨の関守」) 解説:源兼昌の歌(金葉集・百人一首)。「淡路島から通ってくる千鳥の鳴く声に、幾晩目を覚ましたことだろうか、須磨の関守は」。名詞「関守」で終わる体言止め。須磨は『源氏物語』で光源氏がわび住まいをした土地。
Q85.修辞法を答えよ。
玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶる事の弱りもぞする
答え:係り結び「もぞ〜する」(懸念:〜したら困る) 解説:式子内親王。「もぞ」は「〜したら困る・〜するといけない」という心配を表し、結びはサ変「す」の連体形「する」。「(このまま生き長らえると)こらえる心が弱って(恋が人に知られて)しまうと困るから」。縁語はQ35。
Q86.修辞法を答えよ。
見せばやな雄島のあまの袖だにもぬれにぞぬれし色はかはらず
答え:終助詞「ばや」(自己の願望)+終助詞「な」(詠嘆) 解説:殷富門院大輔。下二段「見す」未然形「見せ」+自己願望「ばや」+詠嘆「な」で「見せたいなあ」。願望と詠嘆の二語が連続した「ばやな」の形。百人一首90番、千載和歌集。
Q87.修辞法を答えよ。
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む
答え:本歌取り(本歌の一つは「あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」) 解説:後京極摂政(藤原良経)。新古今集。「こおろぎが鳴く霜の降りる寒い夜、むしろの上に衣の片袖を敷いて、ひとり寂しく寝るのだろうか」。「ひとりかも寝む」は柿本人麻呂の作とされる百人一首3番の歌、「さむしろに衣かたしき」は古今集の「さむしろに衣かたしき今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」をふまえる。
Q88.修辞法を答えよ。
我が袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそしらね乾く間もなし
答え:比喩(自分の袖を「潮干に見えぬ沖の石」にたとえる) 解説:二条院讃岐。「私の袖は、引き潮の時にも見えない沖の石のように、人は知らないけれど、(涙で)乾く間もない」。「沖の石の」の「の」は「〜のように」の意。この部分を序詞とみる説明もある。「こそ〜ね」は係り結びで逆接。
Q89.修辞法を答えよ。
世の中は常にもがもな渚漕ぐあまの小舟の綱手かなしも
答え:本歌取り(古今集・東歌「みちのくはいづくはあれど塩釜の浦こぐ舟の綱手かなしも」) 解説:鎌倉右大臣(源実朝)。「世の中はいつまでも変わらないでほしいなあ。渚を漕ぐ漁師の小舟が綱手で引かれていく様子は、しみじみと心ひかれる」。結句「綱手かなしも」を古今集の東歌から借りている。「もがもな」は願望(〜であってほしいなあ)、「かなしも」の「も」は詠嘆。
Q90.修辞法を答えよ。
花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり
答え:掛詞「ふり」(降り・古り) 解説:入道前太政大臣(藤原公経)の歌(新勅撰集・百人一首)。「花を誘って散らす嵐の吹く庭は、雪のように花が降っているが、その雪ではなくて、古びてゆく(年老いてゆく)ものは私の身であったのだなあ」。「ふり」は(花が)「降り」と(わが身が)「古り」の掛詞。散る花を雪に見立てる見立ても使っている。
Q91.修辞法を答えよ。
心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな
答え:詠嘆の終助詞「かな」 解説:三条院。「心ならずもこのつらい世に生き長らえたならば、(その時には)きっと恋しく思い出されるにちがいない、この夜ふけの月だなあ」。歌の終わりは「かな」で、体言止めではない。
Q92.修辞法を答えよ。
朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里にふれる白雪
答え:見立て(白雪を有明の月の光に)/体言止め(「白雪」) 解説:坂上是則。「夜がほのぼのと明けるころ、有明の月の光かと見まちがえるほどに、吉野の里に降り積もっている白雪よ」。
Q93.修辞法を答えよ。
浅茅生の小野の篠原しのぶれど余りてなどか人の恋しき
答え:序詞「浅茅生の小野の篠原」(同じ音で「しのぶ」を導く) 解説:参議等。「浅茅の生える小野の篠原の「しの」ではないが、(あなたへの思いを)こらえてきたけれど、こらえきれずに、どうしてこんなにあなたが恋しいのか」。「篠原」の「しの」と同じ音で「しのぶ」を導く序詞。「などか〜恋しき」は係り結び(連体形)。
Q94.修辞法を答えよ。
嘆きつつひとり寝る夜のあくる間はいかに久しきものとかは知る
答え:反語「とかは知る」 解説:右大将道綱母。「ご存じか、いや知らないでしょう」。
Q95.修辞法を答えよ。
秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ
答え:体言止め(「さやけさ」) 解説:左京大夫顕輔の歌(新古今集・百人一首)。「秋風にたなびいている雲の切れ間から漏れ出てくる月の光の、なんと澄みきって明るいことよ」。「さやけさ」は形容詞「さやけし」の語幹に「さ」が付いた名詞で、体言止め。
Q96.修辞法を答えよ。
やすらはで寝なましものをさ夜ふけてかたぶくまでの月を見しかな
答え:反実仮想「まし」(〜すればよかったのに) 解説:赤染衛門。「(あなたが来ないとわかっていたら)ためらわずに寝てしまえばよかったのに。(待っているうちに)夜がふけて、西に傾くまでの月を見てしまったことだ」。「な」は完了「ぬ」の未然形で、「ましものを」で「〜すればよかったのに」。文末の「かな」は詠嘆。
Q97.修辞法を答えよ。
大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立
答え:掛詞「いく野」(生野・行く)/体言止め(「天の橋立」) 解説:小式部内侍。「大江山を越え、生野を通って行く道が遠いので、まだ天の橋立の地を踏んでみたこともないし、(母からの)手紙も見ていない」。複合修辞の傑作。(掛詞「ふみ(踏み・文)」はQ26)
Q98.修辞法を答えよ。
今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな
答え:詠嘆の終助詞「かな」 解説:素性法師。「(あなたが)すぐに行こうと言ってきたばかりに、(私は待ち続けて)九月の長い夜の明け方に出る有明の月を待ち明かしてしまったことだなあ」。女の立場で詠んだ歌。
Q99.修辞法を答えよ。
山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり
答え:見立て(流れきれずにたまった紅葉を「しがらみ」に見立てる) 解説:春道列樹の歌(古今集・百人一首)。「山の中の川に風がかけた柵(しがらみ)は、流れきれずにたまっている紅葉であったのだなあ」。川にたまった紅葉を、水をせき止める「しがらみ」に見立てる。「なりけり」は気づきの詠嘆。
Q100.修辞法を答えよ。
かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを
答え:掛詞「いぶき」(言ふ・伊吹)「ひ」(思ひ・火) 解説:藤原実方の歌(後拾遺集・百人一首)。「こんなに(恋しい)とさえ言うことができようか、いやできない。伊吹山のさしも草ではないが、それほどまでとはあなたは知らないでしょうね、燃えるような私の思いを」。「いぶきのさしも草」は同じ音で「さしも」を導く序詞、「さしも草」「燃ゆ」「火」は縁語、「えやは」は反語、下の句は倒置。複合修辞の入試頻出歌。
入試レベル /20
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📖 この範囲のやさしい解説はこちら 和歌の修辞法|枕詞・序詞・掛詞・縁語・本歌取り
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