古文の「侍り」「候ふ」は、試験で頻出でありながら多くの高校生が苦手とする識別ポイントです。同じ語に見えて、本動詞として「ある/いる」を丁寧に表すこともあれば、他の動詞のあとに付いて補助動詞として「〜です/〜ます」の意味になることもあります。

「侍り」と「候ふ」って何が違うの?

基本は同じ機能だよ。どちらも本動詞か補助動詞かで2分類。直前が連用形なら補助動詞、単独なら本動詞、と機械的に判定できる。
この記事では「侍り・候ふ」の識別を、最終確認できる早見表 → 全体像をつかむ判別フローチャート → 基本パターンを一覧するSTEP 0 → 本丸のSTEP 1・2(本動詞と補助動詞) → 例文で仕上げる、の順で解説します。
【結論】古文「侍り・候ふ」の識別、これで完結

「侍り・候ふ」の判別は、直前の語が連用形か否かを見るだけ。原則は2パターンです。
- 単独で使われる(文末・体言のあと) → 本動詞・丁寧(あります/おります)
- 動詞・形容詞の連用形のあと → 補助動詞・丁寧(〜です/〜ます)
- 共通:話し手から聞き手・読み手への丁寧の敬意(尊敬・謙譲ではない)
「侍り」と「候ふ」は意味・用法がほぼ重なりますが、「侍り」は平安時代の物語・日記・随筆(『源氏物語』『枕草子』『土佐日記』など)に、「候ふ」は鎌倉時代以降の軍記物や武家の手紙文(『平家物語』以降)に多く登場します。
「侍り・候ふ」の識別:判別フローチャート【図解】

まず直前と直後を必ずセットで確認します。「侍り・候ふ」の前にあるのが何かで、本動詞か補助動詞かが決まります。
- 単独で使われている(直前が体言・副詞、または文頭) → 本動詞「あります/おります」
- 活用語の連用形のあとに接続 → 補助動詞「〜です/〜ます」
連用形とそれ以外で2分類するだけ。「書きて侍り」のように間に「て」が入る場合も、その前の「書き」が連用形であれば補助動詞と判定します。
【STEP 0】「侍り・候ふ」の基本パターン早見表

STEP 1・2に進む前に、「侍り・候ふ」の基本パターンを頭に入れておきます。直前と直後をセットで確認すれば、必ずこのどれかに収まります。
- ①本動詞(あります):単独で文末。例「花侍り」(花がございます)
- ②補助動詞(丁寧):連用形のあと。例「ここに候ふ」(ここにおります)
「侍り」「候ふ」の活用はラ変系(侍ら/侍り/侍り/侍る/侍れ/侍れ、候は/候ひ/候ふ/候ふ/候へ/候へ)。文中で「侍る」「候へば」などの形で出てきても、識別の手順は同じです。
【STEP 1】単独で文末=本動詞「あります」

「侍り・候ふ」が単独で文末に来る場合、それは本動詞です。「あり」「居り」の丁寧語として、「ある/いる」を丁寧に表します。話し手が聞き手に対して、自分や周囲の存在・状態を丁重に述べる場面で使われます。
- 訳:あります/おります/ございます
- 敬意:話し手から聞き手・読み手への丁寧
- 直前:体言・副詞、または文頭(連用形ではない)
例文:「花侍り」(花がございます)、「ここに候ふ」(ここにおります)。「あり・居り」を聞き手への敬意を込めて使った形、と理解すると意味の取り違えが減ります。
【STEP 2】連用形+侍り・候ふ=補助動詞

直前に動詞・形容詞・形容動詞の連用形がある場合、「侍り・候ふ」は補助動詞です。文全体に丁寧の意を添える働きで、「〜です/〜ます」と訳します。
- 訳:〜です/〜ます
- 敬意:話し手から聞き手・読み手への丁寧
- 直前:動詞などの連用形(または連用形+「て」)
例文:「読み侍り」(読みます)、「申し候ふ」(申します)、「思ひ侍る」(思っております)、「申し候へば」(申しますので)。直前の語に「て・けり」を続けて自然なら連用形と判定できます。
「て」が挟まる形にも注意。「書きて侍り」のように間に「て」が入っても、その前の「書き」が連用形なので補助動詞です。「て」だけ見て本動詞と判断しないようにしましょう。
例文5選で確認
本動詞と補助動詞の用例を5つの例文で確認します。直前が連用形かどうかに注目して判定しましょう。
例文1:かくなむ思ひ侍る
正体:補助動詞・丁寧 訳:このように思っております。なお係助詞「なむ」の結びとして「侍る」(ラ変連体形)で結ばれる係り結びの典型例。
「思ひ」は「思ふ」の連用形。連用形+侍る=補助動詞と確定。話し手が聞き手に対して自分の考えを丁寧に述べている。
例文2:ここに侍り
正体:本動詞・丁寧 訳:こちらにおります
直前「ここに」は場所を示す副詞句で、連用形ではない。本動詞「居る」の丁寧語と確定。話し手が自分の居場所を丁寧に告げている。
例文3:さやうに申し候ふ
正体:補助動詞・丁寧 訳:そのように申しております
「申し」は謙譲語「申す」の連用形。連用形+候ふ=補助動詞と確定。謙譲語に丁寧語が重なり、二重に敬意を表す武家書状の典型形。
例文4:御使ひぞ候ふ
正体:本動詞・丁寧 訳:お使いの者がおります(係助詞「ぞ」の結びで連体形「候ふ」)
直前「御使ひ」は体言(名詞)。連用形ではないので本動詞と確定。話し手が第三者の存在を丁寧に伝えている。
例文5:さ候へば、参り申すべく候ふ
正体:前半は本動詞・丁寧、後半は補助動詞・丁寧 訳:そうでございますれば、参上して申し上げるつもりでございます
前半「候へば」(候ふの已然形+ば)は副詞「さ」のあとに来る本動詞。後半「候ふ」は推量「べく」の前に置かれ、文末の丁寧表現で補助動詞。武家書状に頻出の二重敬語の形式。
よくある誤解・ミスポイント
「侍り・候ふ」を尊敬語・謙譲語と混同しない
「侍り・候ふ」は丁寧語です。尊敬語(動作の主体への敬意)でも、謙譲語(動作の客体への敬意)でもありません。敬意の方向は話し手から聞き手・読み手へ。試験で敬意の方向を問われたらこれを反射的に答えられるようにしましょう。
「あり・をり」との混同
「あり」「をり」も「ある/いる」の意味のラ変動詞ですが、丁寧の意味はありません。手紙文や敬語が多用される文脈で「ある/いる」が出てきたら「侍り・候ふ」、地の文や説明文なら「あり・をり」の可能性が高い、と意識すると判別しやすくなります。
「て」が挟まる場合の見落とし
「書きて侍り」のように、連用形と「侍り」の間に接続助詞「て」が入る形に注意。直前が「て」だからといって本動詞と判断せず、「て」の前の語まで確認してください。「書き」が連用形なので補助動詞です。
テスト直前|「侍り・候ふ」3秒チェックリスト
- □ 直前が動詞・形容詞・形容動詞の連用形? → 補助動詞(〜です/〜ます)
- □ 単独で文末・体言や副詞のあと? → 本動詞(あります/おります)
- □ 間に「て」が挟まっていないか? → その前の語まで確認
- □ 敬意の方向は話し手から聞き手・読み手(丁寧)
- □ 「侍り」は平安、「候ふ」は鎌倉以降に多い(時代も手がかりに)
まとめ|「侍り・候ふ」は直前の語で見抜く
「侍り・候ふ」の識別は、「直前が連用形か否か」の1点に尽きます。連用形なら補助動詞(〜です/〜ます)、それ以外なら本動詞(あります/おります)。どちらも敬意の方向は話し手から聞き手・読み手への丁寧です。
「侍り」は平安時代の物語・日記・随筆、「候ふ」は鎌倉時代以降の軍記物・武家書状に多く登場します。出典の時代背景も判別の手がかりになりますので、文章の雰囲気から推測する練習をしておきましょう。
例文を声に出して読み、「直前の語の形→正体」の反応を体に染み込ませてください。テスト直前のチェックリストを見直せば、本番で迷うことはありません。


コメント