古文の「奉る」は、敬語の識別問題で頻出のテーマです。同じ「奉る」でも、体言の後ろに来れば本動詞として「差し上げる」の意味になり、動詞の連用形の後ろに来れば補助動詞として「〜申し上げる」と訳します。

「奉る」って本動詞?補助動詞?どっちで使われてるか分からないよ。

直前を見るだけ。体言の後ろなら本動詞「差し上げる」、連用形の後ろなら補助動詞「〜申し上げる」じゃ。
この記事では「奉る」の識別を、最終確認できる早見表 → 全体像をつかむ判別フローチャート → 基本パターンを一覧するSTEP 0 → 本丸のSTEP 1・2(本動詞と補助動詞) → 例文で仕上げる、の順で解説します。
【結論】古文「奉る」の識別、これで完結

「奉る」の判別は、直前の語が体言か連用形かを見るだけ。原則は2パターンです。
- 体言(名詞)の後ろ → 本動詞・謙譲(差し上げる/献上する)
- 動詞の連用形の後ろ → 補助動詞・謙譲(〜申し上げる)
- 共通:話し手から動作の対象(貴人)への謙譲の敬意
「奉る」は基本的に謙譲語。話し手(または身分の低い者)が、動作の受け手である貴人への敬意を表します。
「奉る」の識別:判別フローチャート【図解】

まず直前の語が何かを必ず確認します。名詞か連用形かで、本動詞か補助動詞かが決まります。
- 左へ分岐:体言(名詞)の後 → 本動詞「差し上げる」
- 右へ分岐:動詞の連用形の後 → 補助動詞「〜申し上げる」
2分類だけ。文脈で迷っても、直前の品詞だけで決まります。
【STEP 0】「奉る」の基本パターン早見表

STEP 1・2に進む前に、「奉る」の基本パターンを頭に入れておきます。直前を確認すれば、必ずこのどちらかに収まります。
- ①本動詞(差し上げる):体言の後。例「歌奉る」(歌を差し上げる)
- ②補助動詞(〜申し上げる):連用形の後。例「申し奉る」(申し上げる)
STEP 1で①、STEP 2で②を詳しく見ていきます。
【STEP 1】体言+奉る=本動詞「差し上げる」

直前が体言(名詞)、特に目的物(差し出す対象)を表す体言のあとに「奉る」が来る場合、それは本動詞です。「与ふ」の謙譲語として「差し上げる/献上する」と訳します。
- 訳:差し上げる/献上する
- 主語:話し手・身分の低い者
- 敬意の方向:動作の受け手(貴人)への謙譲
例文:「歌奉る」(歌を差し上げる)、「文奉る」(手紙を差し上げる)、「御衣奉る」(お召し物を差し上げる)。差し出す物を示す体言が直前にあるのが典型形。
【STEP 2】連用形+奉る=補助動詞

直前が動詞の連用形のとき、「奉る」は補助動詞です。文全体に謙譲の意を添える働きで、「〜申し上げる」と訳します。
- 訳:〜申し上げる
- 主語:話し手・身分の低い者
- 敬意の方向:動作の受け手(貴人)への謙譲
例文:「申し奉る」(申し上げる)、「思ひ奉る」(お思い申し上げる)。動詞の連用形(「申し」「思ひ」など)の直後に「奉る」が続けば補助動詞と確定します。
例文5選で確認
本動詞と補助動詞の用例を5つの例文で確認します。直前が体言か連用形かに注目して判定しましょう。
例文1:歌奉る
正体:本動詞・謙譲 訳:歌を差し上げる
直前「歌」は体言(名詞)。本動詞「与ふ」の謙譲語と確定。
例文2:申し奉る
正体:補助動詞・謙譲 訳:申し上げる
「申し」は「申す」の連用形。連用形+奉るで補助動詞と確定。
例文3:文奉る
正体:本動詞・謙譲 訳:手紙を差し上げる
直前「文」は体言。本動詞と確定。
例文4:思ひ奉る
正体:補助動詞・謙譲 訳:お思い申し上げる
「思ひ」は「思ふ」の連用形。連用形+奉るで補助動詞と確定。話し手が貴人をお思いする心情の謙譲表現。
例文5:御衣奉る
正体:本動詞・尊敬(特殊用法) 訳:お召しになる
「御衣」の場合、文脈によっては尊敬の本動詞「お召しになる」の意味になります。「着る」「乗る」の尊敬語として使われる例外用法。基本は謙譲ですが、衣服や乗り物に関しては尊敬になる場合があるので注意。
よくある誤解・ミスポイント
「奉る」は基本謙譲、例外で尊敬
「奉る」のほとんどは謙譲ですが、「着る」「乗る」「食ふ」の尊敬語として使われる場合があります(「御衣奉る」=お召しになる、「御車奉る」=お乗りになる)。文脈で物が衣服・乗り物・飲食物なら尊敬の可能性を疑いましょう。
「参る」との使い分け
「参る」も謙譲語ですが、本動詞用法では「行く」の謙譲(参上する)に重点があり、「奉る」は「与ふ」の謙譲(差し上げる)に重点があります。両者は補助動詞用法では似た意味で重なるので、文脈で判別します。
敬意の方向に注意
「奉る」の敬意は動作の受け手(差し上げる相手)への謙譲です。動作の主体ではなく、客体(与えられる側)への敬意なので、試験で敬意の方向を問われたら間違えないようにしましょう。
テスト直前|「奉る」3秒チェックリスト
- □ 直前が体言(名詞)? → 本動詞(差し上げる/献上する)
- □ 直前が動詞の連用形? → 補助動詞(〜申し上げる)
- □ 直前の体言が衣服・乗り物・飲食物? → 尊敬の可能性
- □ 敬意の方向は動作の受け手(貴人)への謙譲
- □ 「参る」「申す」と混同していないか確認
「奉る」の活用を確認しよう(ラ行四段)
識別の前に、まず「奉る」の活用をおさえておきましょう。「奉る」はラ行四段活用の動詞です。本動詞でも補助動詞でも、活用のしかたは同じです。活用の形がわかれば、文中で「奉り」「奉れ」などと姿を変えていても、それが「奉る」だと見抜けるようになります。
- 未然形 奉ら(例:奉らず)
- 連用形 奉り(例:奉りて・奉りき)
- 終止形 奉る(例:歌奉る。)
- 連体形 奉る(例:奉る人)
- 已然形 奉れ(例:奉れども)
- 命令形 奉れ(例:奉れ。)
ポイントは、活用形が変わっても「本動詞か補助動詞か」の判別ルールは変わらないことです。「奉り」「奉れ」と形が変わっていても、見るのはあくまで直前の語が体言か連用形か。たとえば「歌奉りて」は直前が体言「歌」なので本動詞、「申し奉りて」は直前が連用形「申し」なので補助動詞、と判断します。語尾の形にまどわされないようにしましょう。
なぜ「奉る」は謙譲語になるのか
「奉る」がなぜ謙譲語なのかを理解しておくと、丸暗記せずに意味をつかめます。謙譲語とは、動作の受け手(=動作が向かう相手)を高めることで、間接的に敬意を表す敬語です。「奉る」は本来「(貴人に物を)たてまつる=差し上げる」が原義で、物を差し上げる相手(貴人)を高めています。だからこそ、敬意の方向は「動作をする人」ではなく「動作を受ける貴人」へ向くのです。
補助動詞「〜申し上げる」も同じ理屈です。「思ひ奉る」は「(貴人を)お思い申し上げる」で、思う対象である貴人を高めています。本動詞でも補助動詞でも、高めているのは動作の受け手(客体)だという一貫した感覚をもっておくと、敬意の方向の設問でミスをしなくなります。
作品から学ぶ「奉る」の実例
教科書や入試でよく出る文脈に近い形で、本動詞・補助動詞・尊敬の特殊用法をそれぞれ確認しましょう。原文の一節と現代語訳をセットで覚えると、直前の語に反応する力がつきます。
本動詞「差し上げる」の例
原文:かぐや姫、「文奉る」とて、筆を取りて書く。
現代語訳:かぐや姫は「(帝に)お手紙を差し上げます」と言って、筆を取って書く。
直前の「文(手紙)」は体言で、差し出す物を表しています。よって「奉る」は本動詞・謙譲で「差し上げる」。敬意は、手紙を受け取る貴人(帝)に向かいます。差し出す物(文・歌・贈り物など)が直前に来ていたら、まず本動詞を疑うのが鉄則です。
補助動詞「〜申し上げる」の例
原文:かくと申し奉れば、いみじく驚かせたまふ。
現代語訳:これこれだと(貴人に)申し上げると、たいそうお驚きになる。
直前の「申し」は動詞「申す」の連用形。連用形に直接ついているので「奉れ(奉る)」は補助動詞・謙譲で「〜申し上げる」。ここでは「申す」自体も謙譲語なので、謙譲が二重に重なって相手への敬意を強めています。連用形+奉る、という形を見たら補助動詞と即断してかまいません。
尊敬の特殊用法「お召しになる/召し上がる」の例
原文:上、御薬奉る。
現代語訳:帝が、お薬を召し上がる。
これは要注意の例です。直前は体言「御薬」ですが、主語が貴人(帝)で、対象が飲食物(薬)のとき、「奉る」は尊敬の本動詞「召し上がる」になります。同じく「御衣奉る」は「お召しになる」、「御車奉る」は「お乗りになる」。衣服・乗り物・飲食物+主語が貴人という条件がそろったら、尊敬を疑うのがコツです。基本は謙譲ですが、この例外を知っているかどうかで差がつきます。
入試・定期テストでの問われ方
「奉る」は敬語の単元で非常によく問われます。出題のされ方には決まったパターンがあるので、何を聞かれているのかを正しく読み取れるようにしておきましょう。
- 文法的説明を選ぶ問題:「この『奉る』の文法的説明として正しいものを選べ」。本動詞か補助動詞か、謙譲か尊敬かを答えます。まず直前の品詞を確認しましょう。
- 敬意の方向を問う問題:「誰から誰への敬意か」。「奉る」は原則、話し手(作者・語り手)から動作の受け手(貴人)への謙譲です。会話文の中なら「話している人物から」となる点に注意。
- 現代語訳の問題:本動詞なら「差し上げる」、補助動詞なら「〜申し上げる」、尊敬の特殊用法なら「お召しになる/召し上がる/お乗りになる」と訳し分けます。
- 同じ敬語の種類を選ぶ問題:「『奉る』と同じ種類(謙譲語)の語を選べ」。「申す」「参る」「給ふ(下二段)」などの謙譲語と並べて出されます。
どの問い方でも、出発点は同じ。「奉る」の直前の語をまず見る。これさえ徹底すれば、設問の形が変わってもぶれずに答えられます。
つまずきやすいポイント
- 活用語尾にまどわされる:「奉り」「奉れ」と形が変わると別の語に見えてしまう人がいます。語尾ではなく直前の語を見れば判別は同じです。
- 敬意の方向を主語にしてしまう:「奉る」は謙譲語なので、高めるのは主語ではなく動作の受け手です。「差し上げる相手」を答えましょう。
- 尊敬の特殊用法を見落とす:体言+奉るでも、主語が貴人で対象が衣服・乗り物・飲食物なら尊敬です。「御〜」がついた体言は特に要注意。
- 「参る」と混同する:「参る」は「行く・来」の謙譲(参上する)が中心、「奉る」は「与ふ」の謙譲(差し上げる)が中心。本動詞の意味の違いで区別します。
ミニ練習問題(解答つき)
ここまでの内容を、短い問題で確認しましょう。それぞれ「奉る」が本動詞か補助動詞か、訳とともに答えてください。まず自分で考えてから、解答を見ましょう。
- 御琴(おんこと)奉る。
- うれしと思ひ奉る。
- かくと聞こえ奉れば。
- 帝、御衣(おんぞ)奉る。
解答
- 本動詞・謙譲「お琴を差し上げる」。直前「御琴」は体言(差し出す物)。
- 補助動詞・謙譲「うれしくお思い申し上げる」。直前「思ひ」は「思ふ」の連用形。
- 補助動詞・謙譲「これこれと申し上げると」。直前「聞こえ」は「聞こゆ」の連用形(「聞こゆ」自体も謙譲語)。
- 尊敬の本動詞「(帝が)お召しになる」。主語が貴人(帝)で対象が衣服「御衣」なので、特殊用法の尊敬。
よくある質問(Q&A)
Q. 直前が体言か連用形か、見分けにくいときは?
A. その語を辞書の見出し(終止形)に戻せるか試しましょう。「申し」→「申す」、「思ひ」→「思ふ」のように動詞に戻れば連用形=補助動詞です。「歌」「文」のように動詞に戻せない名詞なら体言=本動詞です。連用形は直後に動詞・助動詞が続けられる形だ、と覚えておくと判断しやすくなります。
Q. 「奉る」が尊敬になるのはどんなとき?
A. 主語が貴人で、対象が衣服・乗り物・飲食物のときです。「御衣奉る(お召しになる)」「御車奉る(お乗りになる)」「御薬奉る(召し上がる)」が代表例。体言+奉るでも、この条件がそろったら謙譲ではなく尊敬になります。基本は謙譲、と覚えたうえで例外として押さえましょう。
Q. 「奉らす」や「奉らせ給ふ」も同じ?
A. 「奉る」の後ろに助動詞や別の敬語が続いても、「奉る」自体の判別ルールは変わりません。あくまで「奉る」の直前の語を見て本動詞か補助動詞かを決め、後ろに続く語は別途、文法的に分けて考えます。複数の敬語が重なる二重敬語・最高敬語は、一語ずつ分解して読むのがコツです。
まとめ|「奉る」は直前の語で見抜く
「奉る」の識別は、直前の語が体言か連用形かの1点に尽きます。体言なら本動詞(差し上げる)、連用形なら補助動詞(〜申し上げる)。どちらも謙譲の敬語で、動作の受け手である貴人への敬意を表します。
例外として「着る/乗る/食ふ」の尊敬の意味もあるので、文脈で「物」が衣服・乗り物・飲食物なら尊敬の可能性を疑いましょう。
例文を声に出して読み、「直前の語の形→意味」の反応を体に染み込ませてください。本番でも迷わず得点できるようになります。
[広告・PR]
動画で授業を受けたい人へ
誰でも古典塾は「読んで覚える」無料テキスト専門で、動画授業はありません。「文字だけだと入りにくい」「授業を聞いて理解したい」人は、動画授業のスタディサプリ(古文・漢文=岡本梨奈先生)が相棒になります。


コメント