結論から言うと、句切れとは「和歌(五・七・五・七・七)の途中で、意味やリズムが大きく切れるところ」のことです。ふつうの文に句点(。)があるように、和歌にも「ここで一度言い切っている」という切れ目があります。これがわかると、作者がいちばん言いたいこと(感動の中心)が見えてきます。この記事では句切れの種類と見分け方を、百人一首の実在の歌でやさしく整理します。
句切れとは?──和歌の中の「。(句点)」

和歌は五・七・五・七・七の三十一音ででき、前から順に第一句(初句)・第二句・第三句・第四句・第五句(結句)と呼びます。この五つの句のどこかで意味が一度切れる(言い切る)ことがあり、それが句切れです。いまの文章でいえば句点「。」が打たれる場所。一首の中に小さな区切りができる、と考えてください。
句切れの種類は5つ

句切れは、どの句の終わりで切れるかで名前が決まります。次の5種類です。
- 初句切れ……第一句の終わりで切れる。
- 二句切れ……第二句の終わりで切れる。
- 三句切れ……第三句の終わりで切れる。
- 四句切れ……第四句の終わりで切れる。
- 句切れなし……途中で切れず、最後までひとつづき。
見分け方──句末がこの形なら、そこで切れる

句切れは感(かん)で探すものではありません。句末が次のどれかの形になっていないかをチェックすれば、ほぼ機械的に見つけられます。
| 句末のサイン | 具体例 | なぜ切れる? |
| ①終止形(言い切りの形) | 咲く/なし/けらし など | 文がそこで言い切られているから |
| ②命令形(命じる形) | 思へ/とぢよ/絶えね など | 「〜せよ」と言い切っているから |
| ③係り結びの結び | 連体形(ける・らむ)/已然形(けれ・ね) | 係助詞を受けて文が結ばれるから |
| ④詠嘆・終助詞など | かな・や・よ/詠嘆の「けり」 | 「〜だなあ」と感動して言い切るから |
③の係り結びの結びは、句末に「ぞ・なむ・や・か」があれば連体形、「こそ」があれば已然形になります。これを見たら、その句で切れていないか確かめましょう。
百人一首で確かめてみよう
表を覚えたら、本物の和歌で確かめましょう。切れる場所を「/」で示します。
二句切れ──終止形「けらし」で言い切る

持統天皇の歌(『新古今和歌集』夏・百人一首2)。
- 原文:春過ぎて 夏来にけらし / 白妙の 衣干すてふ 天の香具山
- 現代語訳:春が過ぎて、もう夏が来てしまったらしい。真っ白な衣を干すという、あの天の香具山に。
第二句「夏来にけらし」の「けらし」は過去の推定をあらわし、ここでは終止形(言い切りの形)です。「夏が来たらしい。」と一度切れているので二句切れ。前半で言い切り、後半でその根拠の景色を続けています。
三句切れ──係り結びの結び(連体形)で切れる

源宗于(みなもとのむねゆき)朝臣の歌(『古今和歌集』冬・百人一首28)。
- 原文:山里は 冬ぞさびしさ まさりける / 人めも草も かれぬと思へば
- 現代語訳:山里は、冬がとりわけさびしさが増すのだなあ。人の訪れもなくなり、草も枯れてしまうと思うと。
第二句の係助詞「ぞ」を受けて、第三句の句末「まさりける」の「ける」が連体形になっています(これが係り結び)。「ぞ」の結びは連体形、というルールどおりです。この連体形で意味が切れているので三句切れ。前半で言い切り、後半で理由を述べています。
残りの型も実例で確認
初句切れ・命令形・四句切れも、同じく句末のサインで見分けられます。
- 初句切れ(詠嘆の「よ」):玉の緒よ / 絶えなば絶えね…(式子内親王・『新古今和歌集』恋一・百人一首89)。「玉の緒よ」の「よ」=詠嘆で切れる。続く「絶えね」の「ね」は命令形で二句切れにもなる。
- 三句切れ(命令形):天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ…(僧正遍昭・『古今和歌集』雑上・百人一首12)。第三句「吹きとぢよ」の「とぢよ」=「閉ざせ」の命令形で言い切るので三句切れ。
- 四句切れ(係り結びの已然形):…さびしきに 人こそ見えね / 秋は来にけり(恵慶法師・『拾遺和歌集』秋上・百人一首47)。「こそ」を受け「見えね」が已然形で切れる。結句の「けり」は詠嘆。
句切れなし──最後までひとつづき
山部赤人(やまべのあかひと)の歌(『新古今和歌集』冬・百人一首4)です。
- 原文:田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
- 現代語訳:田子の浦に出て、ふり仰いで見ると、真っ白な富士の高い峰に、雪がしきりに降り続いていることだ。
この歌は、どの句末にも終止形・命令形・係り結び・詠嘆の言い切りがありません。最後の「降りつつ」の「つつ」は「〜し続けて/〜していることだ」の意味で、言い切らずに余韻(よいん)を残します。最初から最後までひとつづきの一文なので、句切れなしです。
なぜ句切れが大事なの?
句切れがわかると、和歌の構造と強調点が見えます。句切れの前は「作者がまず言い切りたかったこと」、後は「その説明・理由」であることが多く、感動の中心が前半に置かれているとわかるからです。
入試でも句切れは「何句切れか」「感動の中心はどこか」という形で記述・選択の両方で問われ、現代語訳や心情の読み取りにも直結します。和歌の表現をさらに学びたい人は、こちらもどうぞ。 → 和歌の修辞法
句切れと「切れ字」はどう違う?
「句切れ」と似た言葉に切れ字(きれじ)があります。混同しやすいので、ここで整理しておきましょう。句切れは「歌のどこで意味が切れるか」という“場所・現象”の名前、切れ字は「そこで切る働きをもつ語」という“言葉”の名前です。たとえば「玉の緒よ」の「よ」は切れ字で、その切れ字によって生まれた初句の切れ目を「初句切れ」と呼ぶ、という関係です。切れ字には詠嘆の終助詞「かな・や・よ」や、言い切りに使われる助動詞「けり」などがあります。「切れ字を答えよ」と問われたら語そのものを、「何句切れか」と問われたら切れる位置を答える、と覚えておくと取りちがえません。
なお、句切れは一首に一つとは限りません。歌によっては二か所で切れることもあり、その場合は「初句切れ・三句切れ」のように両方を答えます。「句切れは一つだけ」と思いこむと見落とすので注意しましょう。
つまずきやすいポイント3つ
句切れの問題で点を落とす原因は、だいたい次の三つに集約されます。先に弱点を知っておけば、本番で慌てません。
- 終止形と連体形を見分けられない。たとえば「咲く」は四段活用なら終止形も連体形も同じ形ですが、上に「ぞ・なむ・や・か」があれば連体形(係り結びの結び)として読みます。係助詞があるかどうかを先に確認するのがコツです。
- 「つつ」「て」「ば」など、続きを予感させる語を切れ目と勘違いする。これらは接続助詞で、文を次へつなぐ働きをします。句末がこの形なら、そこは切れていない合図です。
- 意味の切れ目とリズムの切れ目を混同する。句切れは原則として各句の終わり(五音・七音の切れめ)で起こります。句のとちゅうで意味が変わっても、それは句切れとは呼びません。
入試・定期テストではこう問われる
句切れは、和歌が出題されるとほぼ必ずといってよいほど顔を出すテーマです。問われ方には決まったパターンがあるので、形式に慣れておきましょう。
- 「この歌は何句切れか」……いちばん基本の問い。句末のサイン(終止形・命令形・係り結びの結び・詠嘆)を順にチェックして答えます。
- 「切れ字を抜き出せ」……「かな」「や」「よ」「けり」など、言い切りや詠嘆をつくる語を本文からそのまま抜き出します。
- 「感動の中心はどこか」……句切れの直前に作者の言いたいことが置かれることが多いので、句切れの位置が手がかりになります。
- 「現代語訳」「心情説明」……句切れで文を区切って訳すと、意味のまとまりが正しくとらえられ、訳の精度が上がります。
つまり句切れは、それ自体が一問になるだけでなく、訳・心情・主題の読み取りすべての土台になります。和歌が苦手な人ほど、まず句切れを確実にとれるようにすると得点が安定します。
ミニ練習問題(解答つき)
ここまでの内容を、記事で扱った歌で確かめましょう。まず自分で考えてから、下の解答を見てください。
問1.「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山」(持統天皇)は何句切れか。また、その根拠となる句末の語を答えよ。
問2.「山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人めも草も かれぬと思へば」(源宗于朝臣)は何句切れか。係助詞とその結びの形にも触れて説明せよ。
問3.「田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ」(山部赤人)は何句切れか。理由も答えよ。
解答1.二句切れ。第二句末の「けらし」が終止形(言い切りの形)で、「夏が来たらしい。」と一度言い切っているため。
解答2.三句切れ。第二句の係助詞「ぞ」を受けて、第三句末「まさりける」が連体形で結ばれている(係り結び)。「ぞ」の結びは連体形というルールどおりで、この連体形で意味が切れるため三句切れになる。
解答3.句切れなし。どの句末にも終止形・命令形・係り結び・詠嘆の言い切りがなく、最後の「降りつつ」も言い切らずに余韻を残す接続助詞なので、最初から最後までひとつづきの一文になっているため。
よくある質問(Q&A)
Q1.句切れは必ずどこかにあるのですか?
A.いいえ。途中で切れず最後までひとつづきの歌もあり、それを「句切れなし」と呼びます。山部赤人の「田子の浦に…」がその例です。句切れがあるかないかを判断すること自体が、問題のねらいになることもあります。
Q2.「五句切れ」とは言わないのですか?
A.言いません。第五句(結句)は歌の終わりそのものなので、そこで切れるのは当然です。区切りとして意味があるのは初句から第四句までの切れ目で、最後まで切れない場合は「句切れなし」と表現します。
Q3.句切れと係り結びはどう関係していますか?
A.係り結びは句切れを見つける有力な手がかりです。句末に「ぞ・なむ・や・か」があれば連体形、「こそ」があれば已然形で結ばれ、その結びの形が言い切りとなって句切れを生むことが多いからです。係助詞を見つけたら、その結びの句で切れていないか必ず確認しましょう。
句切れを攻略する手順(最終チェック)
最後に、句切れを見つけるときの手順をまとめます。この順番でチェックすれば、勘に頼らず確実に答えられます。
- 歌を五・七・五・七・七の五つの句に区切る。
- 各句の句末の形を確認する(終止形・命令形・連体形・已然形・終助詞のどれか)。
- 歌の中に係助詞「ぞ・なむ・や・か・こそ」がないか探し、あればその結びの句に注目する。
- 句末が終止形・命令形・係り結びの結び・詠嘆(かな・や・よ・けり)になっていれば、そこで切れる。
- 「つつ・て・ば」など続きを予感させる語で終わっていれば、そこは切れていない。
- 切れる句が分かったら「○句切れ」、どこも切れなければ「句切れなし」と答える。
句切れがとれるようになると、和歌は急に読みやすくなります。意味のまとまりが見え、作者がいちばん伝えたかった気持ち(感動の中心)も自然と浮かび上がってくるからです。まずは百人一首の有名な歌で、句末のサインを探す練習をくり返してみましょう。
まとめ
- 句切れ=和歌の途中で意味やリズムが大きく切れるところ。文の「。」にあたる。
- 種類は初句切れ・二句切れ・三句切れ・四句切れ・句切れなしの5つ。切れる句で名前が決まる。
- 見分け方は句末をチェック。①終止形 ②命令形 ③係り結びの結び(ぞ・なむ・や・か→連体形/こそ→已然形)④詠嘆・終助詞(かな・や・よ)や「けり」の詠嘆があれば、そこで切れる。
- 実例:初句切れ「玉の緒よ」(百人一首89)/二句切れ「夏来にけらし」(2)/三句切れ「冬ぞ…まさりける」(28)・「吹きとぢよ」(12)/四句切れ「人こそ見えね」(47)/句切れなし「雪は降りつつ」(4)。
- 句切れがわかると、歌の構造・強調点・感動の中心が読め、記述・選択の問題に強くなる。
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