古文の「給ふ」は、敬語の識別問題で頻出のテーマです。同じ「給ふ」でも、四段活用なら尊敬の補助動詞、下二段活用なら謙譲の補助動詞になります。意味も訳もまったく違うため、活用の段で見分けることが必須です。

「給ふ」って尊敬?謙譲?どっちで使うの?

活用の段で決まるよ。四段活用なら尊敬(お〜になる)、下二段活用なら謙譲(〜ております)。連体形を見れば一発で見分けられる。
この記事では「給ふ」の識別を、最終確認できる早見表 → 全体像をつかむ判別フローチャート → 基本パターンを一覧するSTEP 0 → 本丸のSTEP 1・2(四段尊敬と下二段謙譲) → 例文で仕上げる、の順で解説します。
【結論】古文「給ふ」の識別、これで完結

「給ふ」の判別は、活用の段を見るだけ。原則は2パターンです。
- 四段活用「給は/給ひ/給ふ/給ふ/給へ/給へ」 → 尊敬の補助動詞(お〜になる/〜なさる)
- 下二段活用「給へ/給へ/給ふ/給ふる/給ふれ/給へよ」 → 謙譲の補助動詞(〜ております/〜です・〜ます)
- 共通:動詞の連用形のあとに付く補助動詞として使われる
四段と下二段の見分けで一番速いのは連体形。「給ふ」のままなら四段(尊敬)、「給ふる」になっていたら下二段(謙譲)と一発で判定できます。
「給ふ」の識別:判別フローチャート【図解】

まず直前と直後を必ずセットで確認します。活用の段がはっきりすれば、敬意の種類は即決できます。
- 四段活用(動詞の連用形+給ふ、直後に尊敬の助動詞) → 尊敬「お〜になる/〜なさる」
- 下二段活用(給ふ+助動詞の連用形、直後に謙譲の助動詞) → 謙譲「〜ております」
四段は地の文・会話文の双方で広く使われる一方、下二段の「給ふ」は会話文・心内文に限定される傾向が強く、しかも「思ふ/知る/覚ゆ/見る/聞く」などの動詞のあとに来ることがほとんど、という特徴も覚えておきましょう。
【STEP 0】「給ふ」の基本パターン早見表

STEP 1・2に進む前に、「給ふ」の基本パターンを頭に入れておきます。直前と直後を確認すれば、必ずこのどちらかに収まります。
- ①尊敬(お〜になる):四段活用。例「仰せ給ふ」(おっしゃる)
- ②謙譲(〜ております):下二段活用。例「思ひ給ふる」(思っております)
STEP 1で①、STEP 2で②を詳しく見ます。四段と下二段で活用がまったく違うため、活用表を並べて覚えるのが最短です。
【STEP 1】四段活用=尊敬の補助動詞

「給ふ」が四段活用のとき、それは尊敬の補助動詞です。動詞の連用形のあとに付いて、動作の主体(主語)への敬意を表します。訳は「お〜になる/〜なさる」。
- 訳:お〜になる/〜なさる
- 活用:給は/給ひ/給ふ/給ふ/給へ/給へ(四段)
- 主語は貴人(高い身分の人物)
例文:「歌詠ま給ふ」(歌をお詠みになる)、「読み給はず」(お読みにならない)。主語が貴人(帝・大臣・公達など)なら尊敬の四段「給ふ」と即決できます。地の文・会話文の双方で広く登場します。
【STEP 2】下二段活用=謙譲の補助動詞

「給ふ」が下二段活用のとき、それは謙譲の補助動詞です。動詞の連用形のあとに付いて、話し手(書き手)の謙遜を表します。訳は「〜ております/〜です・〜ます」。
- 訳:〜ております/〜です・〜ます
- 活用:給へ/給へ/給ふ/給ふる/給ふれ/給へよ(下二段)
- 話者の謙遜表現として使われる
例文:「思ひ給ふる」(思っております)、「知り給へず」(存じておりません)。連体形が「給ふる」、已然形が「給ふれ」になるのが下二段の最大の特徴。文中で「給ふる/給ふれ」を見たら謙譲と即決できます。
下二段の出現条件
下二段の「給ふ」は会話文・心内文に限定され、しかも前にくる動詞は「思ふ/知る/覚ゆ/見る/聞く」などの感覚・思考動詞がほとんど。地の文ではまず使われません。
例文5選で確認
四段尊敬と下二段謙譲の用例を5つの例文で確認します。活用の段と主語に注目して判定しましょう。
例文1:帝、歌詠み給ふ
正体:四段・尊敬 訳:帝が歌をお詠みになる
主語は「帝」(貴人)、終止形「給ふ」は四段。地の文での尊敬用法と確定。
例文2:思ひ給ふる
正体:下二段・謙譲 訳:思っております
連体形が「給ふる」になっているので下二段。話し手が自分の思いを謙遜して述べる謙譲用法と確定。
例文3:仰せ給ふ
正体:四段・尊敬 訳:おっしゃる
「仰せ」は「仰す」の連用形。終止形「給ふ」は四段。主語の動作(言うこと)への敬意を表す尊敬と確定。
例文4:見給ふれば
正体:下二段・謙譲 訳:見ておりますと
已然形が「給ふれ」になっているので下二段。前の動詞「見」も感覚動詞で下二段謙譲の典型。話し手の謙遜と確定。
例文5:読み給はず
正体:四段・尊敬 訳:お読みにならない
未然形「給は」+打消「ず」。下二段なら未然形は「給へ」になるはずで、「給は」は四段。尊敬と確定。
よくある誤解・ミスポイント
「給ふ」を見たら全部尊敬と決めない
地の文では四段尊敬が圧倒的多数ですが、会話文・心内文に入ったら下二段謙譲の可能性が常にあります。連体形「給ふる」、已然形「給ふれ」、未然形「給へ」を見たら下二段と即決しましょう。
未然形「給は」と「給へ」の違いに注意
四段の未然形は「給は」(給はず)、下二段の未然形は「給へ」(給へず)。「ず」が付いた形でどちらかを判別できます。
本動詞「給ふ」もあることを忘れない
「給ふ」は補助動詞だけでなく、まれに本動詞として「お与えになる」の意味で使われることもあります。動詞の連用形に付いていなければ本動詞の可能性を疑いましょう。
テスト直前|「給ふ」3秒チェックリスト
- □ 連体形は「給ふ」or「給ふる」? → 給ふる=下二段謙譲
- □ 已然形は「給へ」or「給ふれ」? → 給ふれ=下二段謙譲
- □ 未然形は「給は」or「給へ」? → 給は=四段尊敬、給へ=下二段謙譲
- □ 主語は貴人? → 四段尊敬の可能性大
- □ 会話文・心内文+感覚動詞? → 下二段謙譲の可能性大
そもそも「補助動詞」とは?「給ふ」の文法的な立ち位置
「給ふ」を正しく見抜くには、まず補助動詞という言葉を理解しておく必要があります。補助動詞とは、「お与えになる」のような本来の意味(実質的な意味)がうすれ、直前の動詞に敬意などの意味だけを添える役割を担う動詞のことです。現代語で言えば「読んでみる」「歩いていく」の「みる」「いく」のように、前の動詞にくっついて補助的にはたらく形をイメージするとわかりやすいでしょう。
「給ふ」が補助動詞であるときは、必ず直前に動詞の連用形があります。「歌詠み給ふ」なら「詠み」(詠むの連用形)、「思ひ給ふる」なら「思ひ」(思ふの連用形)が直前にあります。この「連用形+給ふ」という形を見たら、「これは補助動詞だ」とまず判断し、つぎに活用の段で尊敬か謙譲かを決める——この二段構えの手順が、識別の土台になります。
逆に、直前に動詞の連用形がない「物を給ふ」「禄を給ふ」のような形では、「給ふ」は本動詞として「お与えになる・くださる」(尊敬の本動詞)の意味で使われています。補助動詞か本動詞かをまず切り分け、補助動詞のときだけ「四段=尊敬/下二段=謙譲」の判別に進む、と整理しておきましょう。
なぜ「連体形」を見れば一発で分かるのか
四段活用と下二段活用は、終止形こそ同じ「給ふ」ですが、連体形・已然形・未然形がはっきり違います。下の対応を声に出して比べてみてください。違いが目で見えると、識別が一気に速くなります。
- 未然形:四段「給は」(給はず)/下二段「給へ」(給へず)
- 連用形:四段「給ひ」/下二段「給へ」
- 終止形:四段「給ふ」/下二段「給ふ」(ここだけ同じ=紛らわしい)
- 連体形:四段「給ふ」/下二段「給ふる」
- 已然形:四段「給へ」/下二段「給ふれ」
- 命令形:四段「給へ」/下二段「給へよ」
このうち、文中でいちばん出会いやすいのが連体形です。連体形は「下に体言(名詞)が続く形」や「文が連体形で結ばれる形(係り結びなど)」で現れます。「給ふ」のままなら四段=尊敬、語尾に「る」が付いて「給ふる」になっていれば下二段=謙譲。たった一文字「る」の有無で決まるので、「連体形で一発判別」と言われるわけです。
古典作品から学ぶ「給ふ」の用例
実際の古文では「給ふ」がどのように使われるのか、典型的な形で確認しましょう。原文の一節と現代語訳を並べて、活用の段→敬意の種類の流れを体に覚えさせてください。
四段=尊敬の例
原文:「帝、いとかしこく遊ばし給ふ。」
現代語訳:帝は、たいそう見事に演奏なさる。
「遊ばし」は「遊ばす」の連用形、その下の「給ふ」は終止形。主語は「帝」という貴人で、動作の主体(演奏する人)を高めています。地の文で身分の高い人物が主語になっているときは、まず四段=尊敬を疑うのが定石です。
下二段=謙譲の例
原文:「うれしくこそ思ひ給ふれ。」
現代語訳:うれしく思っております。
「思ひ」は「思ふ」の連用形、その下の「給ふれ」は已然形。「こそ」の係り結びで已然形で結ばれており、四段なら「給へ」になるはずのところが「給ふれ」になっています。これは下二段=謙譲。話し手が自分の「思う」という心の動きをへりくだって述べる形です。会話文・心内文に出てくること、前が「思ふ」という思考動詞であることも、下二段謙譲のサインとそろっています。
入試・定期テストでの問われ方
「給ふ」は、敬語の単元でも特に出題されやすいテーマです。問われ方には決まったパターンがあるので、形で覚えておくと本番で慌てません。
- 活用の種類を答えさせる:「傍線部『給ふる』の活用の種類を答えよ」→ 下二段活用
- 敬語の種類を答えさせる:「この『給ふ』は尊敬・謙譲のどちらか」→ 活用の段で判断
- 敬意の方向を答えさせる:尊敬なら「動作の主体(主語)」へ、謙譲なら「話し手(書き手)自身がへりくだる」
- 現代語訳に反映させる:尊敬は「お〜になる/〜なさる」、謙譲は「〜ております/〜ます」と訳し分ける
特に差がつくのが「給ふる」「給ふれ」を見つけられるかです。長文の中にまぎれていると見落としがちですが、語尾の「る」「れ」に気づければ即座に下二段=謙譲と判定できます。逆に、これらの形を見落として「給ふ」と思い込み、尊敬と誤答してしまうのが典型的な失点パターンです。
ミニ練習問題(解答つき)
ここまでの内容を、短い問題で確かめましょう。まず自分で判定してから、解答を確認してください。
- 「中宮、文書き給ふ。」の「給ふ」は尊敬・謙譲のどちら?
- 「いとあはれと聞き給ふる。」の「給ふる」は四段・下二段のどちら? その敬語の種類は?
- 「え見給へず。」(心内文)の「給へ」は四段・下二段のどちら?
解答
(1) 尊敬。主語は「中宮」という貴人で、終止形「給ふ」は四段。「書き」は「書く」の連用形で、その下に補助動詞「給ふ」が付いた形。訳は「中宮が、お手紙をお書きになる」。
(2) 下二段・謙譲。連体形が「給ふる」になっているので下二段。話し手が「聞く」という自分の動作をへりくだって述べる謙譲。訳は「たいそうしみじみと聞いております」。
(3) 下二段。四段の未然形なら「給は」になるはずが「給へ」なので下二段=謙譲。心内文で感覚動詞「見」に付いている点も下二段のサイン。訳は「見ることができません」。
よくある質問(Q&A)
Q. 終止形だけ見たとき、四段か下二段か分からないときは?
A. 終止形は四段も下二段も「給ふ」で同じなので、終止形単独では決められません。そのときは主語が貴人かどうか、地の文か会話文・心内文か、直前の動詞は思考・感覚動詞かを手がかりにします。主語が貴人で地の文なら四段尊敬、会話文・心内文で「思ふ・知る・覚ゆ・見る・聞く」などに付いていれば下二段謙譲の可能性が高いと判断します。
Q. 下二段の「給ふ」は、なぜ会話文・心内文に多いの?
A. 下二段の「給ふ」は話し手(書き手)が自分の動作をへりくだる謙譲表現だからです。地の文(語り手の説明)では自分のことをへりくだる場面が少なく、登場人物が「私は〜と思っております」のように自分について語る会話文や心の中の言葉(心内文)でこそ自然に使われます。だから「会話文・心内文=下二段謙譲の出やすい場所」と覚えておくと便利です。
Q. 「給へ」が出てきたら、四段と下二段どちらと判断する?
A. 「給へ」は四段の已然形・命令形にも、下二段の未然形・連用形にもなり得るので、形だけでは決まりません。直後を確認しましょう。「給へず」のように打消「ず」が続けば未然形なので下二段、「給へり」「給へば」のように已然形に付く語が続けば四段、と直後の語で見分けます。やはり直前(連用形か)と直後(接続)をセットで見るのが鉄則です。
総まとめ|「給ふ」識別の最終チェック
最後に、識別の流れをもう一度たどっておきましょう。まず直前に動詞の連用形があるかを確認し、あれば補助動詞、なければ本動詞「お与えになる」と切り分けます。補助動詞なら活用の段を見て、四段なら尊敬「お〜になる」、下二段なら謙譲「〜ております」と決めます。
段の見分けは、連体形「給ふ/給ふる」と已然形「給へ/給ふれ」、未然形「給は/給へ」の違いがカギ。語尾に「る・れ」が見えたら下二段謙譲、「給は+ず」なら四段尊敬と、形で瞬時に判断できるようにしておきましょう。さらに、主語が貴人か/会話文・心内文か/前が思考・感覚動詞かという文脈の手がかりを合わせれば、迷う場面はほとんどなくなります。例文を声に出して何度も読み、「形を見た瞬間に答えが出る」状態を目指してください。
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