古文の多義語をやさしく整理|一語で意味が変わる重要単語9語

古文単語

「一語=一訳」では読めない! 多義語をやさしく整理しよう

古文の単語には、一つの語で複数の意味を持つもの(多義語)がたくさんあります。やっかいなのは、現代語と形が同じなのに意味がちがう語が多いことです。たとえば「あく」は今の「飽きる」ではなく「満足する」。ここで取りちがえると、文章全体の意味が反対になってしまうこともあります。

この記事では、入試でねらわれやすい重要な多義語を10語選び、それぞれの代表的な意味(入試標準訳)と短い用例で整理します。暗記の負担を減らすには、「なぜその意味になるのか」をイメージでつかむのが近道です。まずは表で全体を見て、そのあと一語ずつ確認していきましょう。

単語 おもな意味(入試標準訳)
あく【飽く】 満足する・十分だと思う
おこたる【怠る】 ①(病気が)よくなる・治る ②なまける・油断する
ありく【歩く】 歩き回る・あちこち動き回る
わたる【渡る】 ①(場所を)移動する・通り過ぎる ②一面に〜する・ずっと〜し続ける
おどろく【驚く】 ①はっと気づく ②目を覚ます
ときめく【時めく】 寵愛を受けて栄える・時流に乗って栄える
ふす【伏す・臥す】 ①横になる ②病気で寝込む
おこす【遣す】 (こちらへ)よこす・送ってくる
いと ①たいそう・非常に ②(下に打消で)それほど〜ない

1. あく【飽く】=満足する

現代語の「飽きる(うんざりする)」とはちがい、古文では「満足する・十分だと思う」が基本です。打消をともなって「飽かず(満足できない=もの足りない・名残おしい)」の形でよく出ます。

【練習例】月の出るを飽かず思ふ。(月が出てくるのを、いつまで見ても満足できない=もの足りなく思う。)

2. おこたる【怠る】=治る/なまける

(病気が)よくなる・治る、②なまける・油断するの二つを必ず覚えます。①は現代語にない用法なので特に大事です。「病、おこたる」と来たら「治る」と読みます。

【練習例】日ごろの病、ようやくおこたりぬ。(数日来の病気が、しだいによくなった。)

3. ありく【歩く】=あちこち動き回る

ただ「歩く」だけでなく、「あちこち動き回る・出歩く」という広い意味が中心です。乗り物で移動する場合にも使えます。「歩む(あゆむ)」が一歩ずつ進む動作なのに対し、「ありく」は活動範囲の広さを表します。

【練習例】所々を尋ねありく。(あちこちを訪ね歩く=動き回って探す。)

4. わたる【渡る】=移動する/ずっと〜する

(場所を)移動する・通り過ぎるという本動詞の意味のほか、ほかの動詞について②「一面に〜する/ずっと〜し続ける」という補助動詞的な使い方をします。②に気づけるかが差のつくところです。

【練習例】霧、野山に立ちわたる。(霧が野山一面に立ちこめる。=②の「一面に〜する」の例。)

【練習例】川をわたりて、向かひの岸に着く。(川を渡って、向こうの岸に着く。=①の「移動する」の例。)

5. おどろく【驚く】=気づく/目を覚ます

現代語の「びっくりする」だけで読むと外します。古文では①「はっと気づく」、②「目を覚ます」が中心です。「夢からおどろく」なら「目を覚ます」です。

【練習例】風の音にぞおどろかれぬる。(風の音で、はっと(秋の到来に)気づかされた。)

6. ときめく【時めく】=寵愛を受けて栄える

現代語の「胸がときめく」とは無関係です。古文では「(主君などの)寵愛を受けて栄える・時流に乗って栄える」の意味です。宮中の女性や臣下が、権力者にかわいがられ羽振りがよい様子を表します。

用例:「いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。」――『源氏物語』桐壺の巻。たいして高貴な身分ではないのに、格別に(帝の)寵愛を受けて栄えていらっしゃる方があった、の意。

7. ふす【伏す・臥す】=横になる/寝込む

「横になる」、②「病気で寝込む」の二つです。文脈に「病」や苦しむ様子があれば②で読みます。「うつぶす」「ひれ伏す」などの複合語のもとにもなります。

【練習例】心地あしくて、日ごろふしたり。(気分が悪くて、数日来寝込んでいた。)

8. おこす【遣す】=よこす・送ってくる

「(こちらへ)よこす・送ってくる」という、自分の方に向かう動きを表します。反対に、向こうへ「やる・送る」のは「やる(遣る)」です。手紙や使いを「おこす」=送ってくる、という形で頻出します。

【練習例】文をおこせたり。(手紙をよこした=こちらへ送ってきた。)

9. いと=たいそう/(打消で)それほど〜ない

多義の副詞として加えておきましょう。①ふつうは「たいそう・非常に」と程度を強めますが、②下に打消の語をともなうと「それほど(たいして)〜ない」と意味が変わります。下に「ず・じ・まじ」などがないかをセットで確認します。

用例:「いとをかし」(たいそう趣がある)。一方、「いと……ず」の形なら「それほど〜ない」と訳します。

まとめ

  • あく【飽く】=満足する(「飽かず」=もの足りない)。現代の「飽きる」と混同しない。
  • おこたる=①病気がよくなる・治る ②なまける・油断する。
  • ありく=歩き回る・あちこち動き回る。
  • わたる=①移動する ②一面に〜する・ずっと〜し続ける(補助動詞的)。
  • おどろく=①はっと気づく ②目を覚ます。
  • ときめく=寵愛を受けて栄える・時流に乗って栄える。
  • ふす=①横になる ②病気で寝込む。
  • おこす=(こちらへ)よこす・送ってくる(⇔「やる」)。
  • いと=①たいそう ②(打消で)それほど〜ない。
  • コツ:多義語は「どの意味か」を単独で決めず、まわりの言葉(打消・「病」・主従関係など)から文脈で選ぶ。迷ったら全部の意味を当てはめて、いちばん自然に通じるものを採る。

語の覚え方をもっと知りたい人は単語の覚え方を、現代語と意味がずれる語をまとめて確認したい人は古今異義語まとめもあわせて読んでみてください。

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