古文の多義語をやさしく整理|一語で意味が変わる重要単語9語

古文の多義語をやさしく整理|一語で意味が変わる重要単語9語 古文単語

「一語=一訳」では読めない! 多義語をやさしく整理しよう

古文の多義語は文脈で意味を選ぶ 全体図
生徒
生徒「あく」って「飽きる」じゃないんですか? 単語帳のとおりに覚えたのに、意味が反対になっちゃいます…。
先生
先生そこがまさに落とし穴。古文の「あく」は「満足する」なんだ。今日は入試でねらわれる多義語を9語、文脈で意味を選ぶコツと一緒に整理しよう。

古文の単語には、一つの語で複数の意味を持つもの(多義語)がたくさんあります。やっかいなのは、現代語と形が同じなのに意味がちがう語が多いことです。たとえば「あく」は今の「飽きる」ではなく「満足する」。ここで取りちがえると、文章全体の意味が反対になってしまうこともあります。

この記事では、入試でねらわれやすい重要な多義語を9語選び、それぞれの代表的な意味(入試標準訳)と短い用例で整理します。暗記の負担を減らすには、「なぜその意味になるのか」をイメージでつかむのが近道です。まずは表で全体を見て、そのあと一語ずつ確認していきましょう。

単語 おもな意味(入試標準訳)
あく【飽く】 満足する・十分だと思う
おこたる【怠る】 ①(病気が)よくなる・治る ②なまける・油断する
ありく【歩く】 歩き回る・あちこち動き回る
わたる【渡る】 ①(場所を)移動する・通り過ぎる ②一面に〜する・ずっと〜し続ける
おどろく【驚く】 ①はっと気づく ②目を覚ます
ときめく【時めく】 寵愛を受けて栄える・時流に乗って栄える
ふす【伏す・臥す】 ①横になる ②病気で寝込む
おこす【遣す】 (こちらへ)よこす・送ってくる
いと ①たいそう・非常に ②(下に打消で)それほど〜ない

1. あく【飽く】=満足する

現代語の「飽きる(うんざりする)」とはちがい、古文では「満足する・十分だと思う」が基本です。打消をともなって「飽かず(満足できない=もの足りない・名残おしい)」の形でよく出ます。

【練習例】月の出るを飽かず思ふ。(月が出てくるのを、いつまで見ても満足できない=もの足りなく思う。)

2. おこたる【怠る】=治る/なまける

(病気が)よくなる・治る、②なまける・油断するの二つを必ず覚えます。①は現代語にない用法なので特に大事です。「病、おこたる」と来たら「治る」と読みます。

【練習例】日ごろの病、ようやくおこたりぬ。(数日来の病気が、しだいによくなった。)

先生
先生コツは「近くにという言葉があるか」を見ること。あれば「おこたる=治る」「ふす=寝込む」と読めばいい。手がかりは本文の中にあるんだ。

3. ありく【歩く】=あちこち動き回る

ただ「歩く」だけでなく、「あちこち動き回る・出歩く」という広い意味が中心です。乗り物で移動する場合にも使えます。「歩む(あゆむ)」が一歩ずつ進む動作なのに対し、「ありく」は活動範囲の広さを表します。

【練習例】所々を尋ねありく。(あちこちを訪ね歩く=動き回って探す。)

多義語①あく・おこたる・ありく 一覧図解

4. わたる【渡る】=移動する/ずっと〜する

(場所を)移動する・通り過ぎるという本動詞の意味のほか、ほかの動詞について②「一面に〜する/ずっと〜し続ける」という補助動詞的な使い方をします。②に気づけるかが差のつくところです。

【練習例】霧、野山に立ちわたる。(霧が野山一面に立ちこめる。=②の「一面に〜する」の例。)

【練習例】川をわたりて、向かひの岸に着く。(川を渡って、向こうの岸に着く。=①の「移動する」の例。)

5. おどろく【驚く】=気づく/目を覚ます

現代語の「びっくりする」だけで読むと外します。古文では①「はっと気づく」、②「目を覚ます」が中心です。「夢からおどろく」なら「目を覚ます」です。

【練習例】風の音にぞおどろかれぬる。(風の音で、はっと(秋の到来に)気づかされた。)

6. ときめく【時めく】=寵愛を受けて栄える

現代語の「胸がときめく」とは無関係です。古文では「(主君などの)寵愛を受けて栄える・時流に乗って栄える」の意味です。宮中の女性や臣下が、権力者にかわいがられ羽振りがよい様子を表します。

用例:「いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。」――『源氏物語』桐壺の巻。たいして高貴な身分ではないのに、格別に(帝の)寵愛を受けて栄えていらっしゃる方があった、の意。

多義語②わたる・おどろく・ときめく 一覧図解

7. ふす【伏す・臥す】=横になる/寝込む

「横になる」、②「病気で寝込む」の二つです。文脈に「病」や苦しむ様子があれば②で読みます。「うつぶす」「ひれ伏す」などの複合語のもとにもなります。

【練習例】心地あしくて、日ごろふしたり。(気分が悪くて、数日来寝込んでいた。)

8. おこす【遣す】=よこす・送ってくる

「(こちらへ)よこす・送ってくる」という、自分の方に向かう動きを表します。反対に、向こうへ「やる・送る」のは「やる(遣る)」です。「おこす」と「やる」は向きが正反対なので、手紙や使いを「おこす」=送ってくる、という形で頻出します。

【練習例】文をおこせたり。(手紙をよこした=こちらへ送ってきた。)

9. いと=たいそう/(打消で)それほど〜ない

多義の副詞として加えておきましょう。①ふつうは「たいそう・非常に」と程度を強めますが、②下に打消の語をともなうと「それほど(たいして)〜ない」と意味が変わります。下に「ず・じ・まじ」などがないかをセットで確認します。

用例:「いとをかし」(たいそう趣がある)。一方、「いと……ず」の形なら「それほど〜ない」と訳します。

多義語③ふす・おこす・いと 一覧図解

なぜ古文の多義語は「文脈」で意味を選ぶのか

多義語が苦手になる一番の原因は、「単語=一つの訳」で覚えようとすることです。たしかに英単語の暗記ならそれでうまくいく場面も多いのですが、古文の多義語は、同じ語が場面によって違う顔を見せます。たとえば「おこたる」は、病気の話なら「治る」、仕事や勤行の話なら「なまける」と、まったく別の訳になります。一つに決め打ちして暗記すると、もう一方の意味が出てきたときに文章が読めなくなってしまうのです。

では、どうやって正しい意味を選べばよいのでしょうか。コツは、その語の「もとになるイメージ(中心の意味)」をつかんでおくことです。多くの多義語は、ばらばらの意味を持っているように見えて、じつは一つの核となるイメージから枝分かれしています。たとえば「わたる」は「ある地点からある地点へ移っていく」という核があり、そこから「川をわたる(場所の移動)」も「鳴きわたる(鳥が空を移動しながら鳴き続ける=ずっと〜する)」も生まれています。核さえつかめば、知らない用例に出会っても見当がつきます。

もう一つ大切なのは、意味を決める「手がかりの言葉」を周りからさがすことです。下に打消の「ず」があるか、近くに「病」「心地あし」などの言葉があるか、主語が帝や貴人かどうか――こうした手がかりが、どの意味で読むべきかを教えてくれます。次の章で、その見分け方を具体的に整理します。

意味を見分ける3つの手がかり

多義語の訳を選ぶとき、やみくもに「どっちかな」と悩む必要はありません。次の3つの手がかりを順にチェックすれば、ほとんどの場合は自然に答えが決まります。

  1. 下に打消の語があるか……「あく(飽く)」は打消「ず」がつくと「飽かず=もの足りない・名残おしい」、「いと」は打消がつくと「それほど〜ない」と、意味がはっきり変わります。文末や直後に「ず・じ・まじ・なし」が見えたら、まず打消との組み合わせを疑います。
  2. 近くに状況を示す言葉があるか……「病・心地あし・苦し」などがあれば、「おこたる=治る」「ふす=寝込む」のように、病気にかかわる意味で読みます。逆に勤めや学問の話なら「おこたる=なまける」です。
  3. 主語や人間関係はどうか……「ときめく」は、帝や主君が主語の人をかわいがる場面で「寵愛を受けて栄える」となります。誰が誰に対しての動作かを確かめると、敬語とあわせて意味が定まります。

この3つでも決まらないときの最終手段が、「すべての意味を当てはめて、いちばん自然に通じるものを採る」という方法です。多義語は文脈の生き物ですから、前後のつながりがなめらかになる訳がほぼ正解です。テストの本番でも、一つに決めつける前に「もう一つの意味だったら?」と一度だけ問い直すクセをつけると、取りちがえがぐっと減ります。

生徒
生徒打消・病・主語の3つをチェックすればいいんですね。それでも迷ったら、両方の意味を当てはめてみる、と。

例文でつかむ――もう一歩ふみこんだ用例集

表と練習例だけでは物足りない人のために、まぎらわしい語を例文でくらべてみましょう。原文の一節と現代語訳をセットで読み、「なぜその訳になるのか」を確かめてください。

「あく(飽く)」――満足する/飽かず=もの足りない

  • 原文の一節:花を見て、心ゆくまで飽きぬ。
    現代語訳:花を見て、心ゆくまで満足した。
  • 原文の一節:別れの飽かず惜しき。
    現代語訳:別れがもの足りなく名残おしい。(打消「ず」がつくと「満足できない」の意になる点に注意。)

「おこたる」――治る/なまける

  • 原文の一節:日ごろの病、やうやうおこたりて、起き出でぬ。
    現代語訳:数日来の病気が、しだいによくなって、起き出した。(近くに「病」があるので「治る」。)
  • 原文の一節:つとめをおこたりて、人にそしらる。
    現代語訳:勤めをなまけて、人に非難される。(勤め・仕事の話なので「なまける」。)

「わたる」――移動する/ずっと〜し続ける

  • 原文の一節:橋をわたりて、向かひに行く。
    現代語訳:橋を渡って、向こうへ行く。(本動詞の「移動する」。)
  • 原文の一節:雁、空を鳴きわたる
    現代語訳:雁が、空をずっと鳴きながら飛んでいく。(ほかの動詞について「ずっと〜する」を表す補助動詞的な用法。)

「おこす」と「やる」――向きの正反対に注意

  • 原文の一節:京より文をおこせたり。
    現代語訳:都から手紙をよこした(=こちらへ送ってきた)。
  • 原文の一節:使ひをやりて、消息を問ふ。
    現代語訳:使いを行かせて(=向こうへ送って)、安否を尋ねる。

「おこす」は自分の方へ向かってくる動き、「やる」は自分から向こうへ向かう動きです。手紙や使いが「どちらへ動いているか」をつかむと、登場人物の位置関係まで見えてきます。

つまずきやすいポイントと、入試での問われ方

多義語は、傍線部の語の意味を選ばせる「単語の意味問題」や、傍線部の現代語訳問題でねらわれます。とくに次のような「現代語と意味がずれる語」は、知らないと正反対に訳してしまうので要注意です。

  • あく……現代語の「飽きる(うんざりする)」につられない。古文は「満足する」。「飽かず」を「飽きない=退屈しない」と訳すのは×で、「満足できない=もの足りない」が正解。
  • おどろく……「びっくりする」だけで読まない。「目を覚ます」「はっと気づく」が中心。「夢よりおどろく」は「夢から目を覚ます」。
  • ときめく……現代語の「胸がときめく(恋でどきどきする)」とは無関係。「寵愛を受けて栄える」。主語が誰にかわいがられているかを確認する。
  • おこたる……「なまける」だけで覚えていると、「病おこたる=病気が治る」を読み落とす。病気の文脈ではむしろプラスの意味になる。

選択肢問題では、出題者はわざと「現代語の意味」をまぎれの選択肢として並べます。たとえば「あかず」の訳として「飽きてしまって」という選択肢を置く、といった具合です。多義語を見たら「現代語のままで訳していないか?」と一度立ち止まる――これだけで失点が大きく減ります。

ミニ練習問題(解答つき)

覚えた知識をその場で確かめてみましょう。次の傍線部の語の意味として、文脈に合うものを選んでください。答えは下にまとめてあります。

  1. 「月を飽かず見る。」の「飽かず」の意味は? (ア) 飽きずに (イ) 満足できないほどに(もの足りなく)
  2. 「重き病、おこたりぬ。」の「おこたり」の意味は? (ア) なまけた (イ) よくなった
  3. 「夢に人を見て、おどろきぬ。」の「おどろき」の意味は? (ア) びっくりした (イ) 目を覚ました
  4. 「人より文をおこせたり。」の「おこせ」の意味は? (ア) よこした(送ってきた) (イ) 送った(向こうへやった)
  5. いとうれしとも思はず。」の「いと」の意味は? (ア) たいそう (イ) それほど(〜ない)

【解答と解説】

  1. (イ)。「飽く」は「満足する」。打消「ず」がついて「満足できない=もの足りなく(いつまでも見ていたい)」の意。
  2. (イ)。「病」とあるので「よくなる・治る」。
  3. (イ)。「夢に〜見て」とあるので「目を覚ました」。
  4. (ア)。「おこす」は自分の方へ向かう動きなので「よこした(送ってきた)」。向こうへ送るなら「やる」。
  5. (イ)。下に打消「ず」があるので「それほど(うれしいとも)思わない」。打消がなければ(ア)の「たいそう」。
先生
先生5問とも解けたら上出来。多義語を見たら「現代語のままで訳していないか?」と一度立ち止まる――その一手間が、本番の失点をぐっと減らしてくれるよ。

よくある質問(Q&A)

Q1. 多義語の意味を全部丸暗記しないとダメ?

すべてを丸暗記する必要はありません。まずは「現代語と意味がずれる急所の語(あく・おどろく・ときめく・おこたる)」を確実に押さえ、そのほかは「中心のイメージ」をつかんでおけば十分です。残りは問題を解きながら、出てきた用例ごとに覚えていくのが効率的です。

Q2. テスト中、どっちの意味か迷ったら?

本文をもう一度見て、「打消があるか」「病など状況を示す言葉があるか」「主語は誰か」を確認しましょう。それでも迷ったら、両方の意味を当てはめて、前後が自然につながるほうを選びます。文章は必ずどこかで意味が通るようにできています。

Q3. 多義語と「古今異義語」はどうちがうの?

「古今異義語」は、昔と今で意味がちがう語(例:「あさまし」=おどろきあきれる)を指す呼び方です。多義語は、一つの語が複数の意味を持つ語のこと。両者は重なる部分も多く、「あく」のように「古今異義語であり多義語でもある」語もあります。あまり区別にこだわらず、どちらも「現代語のまま訳すと危ない語」としてまとめて警戒しておけば大丈夫です。

まとめ

現代語と外す急所4語 あく おどろく ときめく おこたる
  • あく【飽く】=満足する(「飽かず」=もの足りない)。現代の「飽きる」と混同しない。
  • おこたる=①病気がよくなる・治る ②なまける・油断する。
  • ありく=歩き回る・あちこち動き回る。
  • わたる=①移動する ②一面に〜する・ずっと〜し続ける(補助動詞的)。
  • おどろく=①はっと気づく ②目を覚ます。
  • ときめく=寵愛を受けて栄える・時流に乗って栄える。
  • ふす=①横になる ②病気で寝込む。
  • おこす=(こちらへ)よこす・送ってくる(⇔「やる」)。
  • いと=①たいそう ②(打消で)それほど〜ない。
  • コツ:多義語は「どの意味か」を単独で決めず、まわりの言葉(打消・「病」・主従関係など)から文脈で選ぶ。迷ったら全部の意味を当てはめて、いちばん自然に通じるものを採る。

語の覚え方をもっと知りたい人は単語の覚え方を、現代語と意味がずれる語をまとめて確認したい人は古今異義語まとめもあわせて読んでみてください。

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