大学入学共通テストの古文は、200点満点中45点を占める重要分野です。配点が大きい一方で、対策の仕方が分からず点数が安定しない受験生が多くいます。共通テストの古文には独特の出題傾向があり、それを理解した上で対策すれば、短期間で得点を大きく伸ばすことができます。
結論から伝えます。共通テスト古文を完全攻略する鍵は四つです。第一に出題形式(語句問題・文法問題・内容説明・心情把握など)の傾向を把握すること、第二に時間配分(古文に15〜20分)を意識した解き方を身につけること、第三に複数資料を読み比べる新傾向問題への対応力を養うこと、第四に過去問演習で本番のリズムに慣れることです。
この記事では共通テスト古文の出題傾向を整理し、得点を伸ばす実践的な解き方をステップごとに解説します。さらに学習者がつまずきやすい誤解と本番での時間配分まで踏み込みます。共通テストで安定して8割以上を得点するための具体策をまとめました。
共通テスト古文の基本(出題形式と配点)

共通テストの古文は、毎年同じような形式で出題されます。出題形式を事前に把握しておくことで、本番で迷わず解答できるようになります。
出題される文章のジャンル
共通テストの古文では、物語・日記・随筆・歌物語・説話など様々なジャンルから出題されます。近年は『源氏物語』『大鏡』『枕草子』など定番作品だけでなく、マイナーな作品からも出題されるため、初見の文章でも対応できる読解力が求められます。文章の長さは1000〜1500字程度で、和歌が含まれることが多くあります。
問題の構成
共通テストの古文は通常大問1問・小問6〜7問で構成されます。配点は語句・文法・内容説明・心情把握などの小問の合計で45点です(2025年度入試から、従来の50点より変更されました)。後半の内容説明問題が配点が大きく、得点差がつきやすい論点です。
新傾向:複数資料の読み比べ
2021年度から始まった共通テストでは、複数の資料を読み比べる問題が出題されます。本文と注釈・関連文献を組み合わせて、複数の視点から内容を読み取る力が問われます。和歌の解釈、本文と論評の比較など、形式は多様化しています。
共通テスト古文の解き方(ステップごとに解説)

本番で安定して得点するための実践的な手順を四つに分けて解説します。本番の時間配分を意識しながら、これらの手順を体に染み込ませてください。
ステップ一:リード文と注釈を最初に読む
本文を読み始める前に、まずリード文(前書き)と注釈を必ず確認します。リード文には登場人物・場面設定・物語の前提が書かれており、本文理解の道しるべになります。注釈には現代では読みづらい単語の意味や、当時の風習が説明されています。これらを先に押さえれば、本文の読解スピードが2倍になります。
ステップ二:本文を一読しながら主語を補う
本文を読みながら、省略された主語を頭の中で補っていきます。「誰が」「誰に」「何を」したのかを、助詞・敬語・身分関係から特定します。主語の特定が古文読解の最大の壁なので、ここで集中力を使ってください。和歌が出てきたら、詠み手と相手を必ず確認します。
ステップ三:設問を選択肢ごとに丁寧に検討
設問は基本的に4〜5択の選択式です。選択肢を1つずつ本文と照合して、根拠を持って正誤を判断します。間違った選択肢には、本文と矛盾する部分が必ずあります。「言い過ぎ」「逆」「無関係」など、典型的なひっかけパターンを意識すると正解率が上がります。
ステップ四:時間内に解き終わるリズムを作る
共通テストは時間との戦いです。古文は15〜20分で解き終わるリズムを作ります。1問にかける時間を意識し、迷ったら印を付けて先に進む判断も大切です。過去問演習で本番のリズムを体に覚えさせてください。
よくある誤解・ミスポイント

共通テスト古文の対策で典型的につまずきやすいポイントを整理します。事前に押さえておけば、効率的に得点を伸ばせます。
単語・文法ばかりで読解演習が不足
単語と文法の暗記に時間をかけすぎて、実際の文章を読む練習が不足する受験生が多くいます。単語・文法は読解の道具であり、それ自体が目的ではありません。基本的な単語・文法を覚えたら、できるだけ早く長文読解の演習に進んでください。
注釈を読み飛ばす
共通テストの注釈は、本文理解に必要な情報が凝縮されています。注釈を読み飛ばすと、本来取れたはずの得点を落とします。注釈は必読と心に刻んで、本文を読む前に必ず目を通してください。
選択肢を直感で選ぶ
5択の選択肢を直感で選んでしまうと、ひっかけにはまります。本文の根拠を1つずつ選択肢と照合する習慣をつけてください。「この選択肢のここが本文と一致する」「この選択肢のここが本文と矛盾する」と明確に判断できる選択肢が正解です。
和歌の解釈を後回しにする
本文中に挿入される和歌は、心情把握の鍵になることが多くあります。和歌を読み飛ばすと、後の内容説明問題で躓きます。和歌は時間をかけても丁寧に解釈し、詠み手の心情を読み取ってください。
本番の時間配分(90分の使い方)

共通テスト国語は90分で、近代以降の文章3題(評論・小説・実用的な文章)・古文・漢文の大問5題を解きます(2025年度入試より試験時間・大問構成が変更されました)。各大問の時間配分を意識することで、最後まで解き切れます。
推奨時間配分
評論:20分/小説:20分/実用的な文章:10分/古文:15〜20分/漢文:15分/予備:5分
この配分が一般的ですが、自分の得意・不得意に合わせて調整してください。古文が苦手なら多めに、得意なら短めに設定します。
古文15分の内訳
リード文・注釈の確認:1〜2分/本文の通読:4〜5分/設問1〜3(語句・文法):2〜3分/設問4〜6(内容説明・心情):5〜7分/見直し:1〜2分
本番では計画通りにいかないことも多いので、過去問演習で実際の時間配分を試して、自分なりのリズムを作ってください。
頻出論点ベスト5
共通テスト古文で特によく問われる論点を5つ紹介します。これらは過去問でも繰り返し出題されており、対策必須です。
① 語句問題(古今異義語)
「あさまし」「うつくし」「ありがたし」「をかし」など、現代語と意味が違う古今異義語の意味を問う問題が必出します。市販の単語帳の頻出語を完璧に押さえてください。
② 文法問題(助動詞・助詞の意味)
「べし」の意味(推量・意志・可能・当然・命令・適当・予定)、「なり」の用法(断定・伝聞推定)など、助動詞・助詞の意味を文脈で識別する問題が頻出します。当ブログの個別識別記事を活用してください。
③ 主語把握・心情把握
「傍線部の主語は誰か」「このときの心情は何か」を問う問題が後半で頻出します。敬語と助詞の手がかりから主語を特定し、文脈から心情を読み取る訓練が必要です。
④ 和歌の解釈
和歌の現代語訳や修辞法(掛詞・縁語)を問う問題が出題されます。和歌の修辞法を体系的に押さえることが、安定した得点につながります。
⑤ 複数資料の読み比べ(新傾向)
本文と関連文献・注釈を組み合わせて読み解く新傾向問題が増えています。複数の視点を統合する読解力が求められるため、過去問で慣れておくことが大切です。
押さえておきたい重要古文単語ベスト10
共通テスト古文では、現代語とは意味の異なる「古今異義語」が選択肢の判断を左右します。意味を取り違えると本文全体の理解がずれ、内容説明問題まで連鎖的に失点します。ここでは特に出題されやすい単語を厳選し、現代語訳と一緒に整理します。丸暗記ではなく「なぜその意味になるのか」を意識すると忘れにくくなります。
- あさまし:(予想外のことに)驚きあきれる。良い意味でも悪い意味でも使う。現代語の「あさましい(さもしい)」とは違う。
- うつくし:かわいらしい、いとおしい。小さいものへの愛情を表す。現代語の「美しい(端麗だ)」とは異なる。
- ありがたし:めったにない、珍しい。「有り難し(存在しにくい)」が原義。感謝の意味は後から生まれた。
- をかし:趣がある、興味深い、すばらしい。明るく知的な美を表す。
- あはれなり:しみじみと心を打たれる。しんみりとした情趣を表す。
- かなし:いとおしい、かわいい(愛し)。悲しい(悲し)の意味もあるので文脈で判断する。
- やうやう:だんだん、しだいに。現代語の「ようやく(やっと)」とはニュアンスが違う。
- つとめて:早朝。また、(何かの)翌朝。時刻を表す名詞。
- おどろく:はっと気づく、目を覚ます。びっくりする意味だけではない。
- めでたし:すばらしい、立派だ。「愛づ(ほめる)」に由来し、祝い事だけを指すのではない。
これらは共通テストだけでなく私大・国公立二次でも必出する基礎語です。単語帳を一周したら、過去問の本文中で実際にどう使われているかを確認すると、生きた知識として定着します。
文法のヤマ場:助動詞の識別を得点に変える
文法問題で最も差がつくのが、同じ形でも意味が変わる助動詞の識別です。共通テストでは「傍線部の文法的説明として最も適当なものを選べ」という形で問われます。代表的な識別ポイントを整理します。
「なり」の識別(断定か、伝聞推定か)
「なり」には、断定の助動詞(〜である)と、伝聞推定の助動詞(〜だそうだ・〜のようだ)の二種類があります。見分けの基本は接続です。体言・連体形に付けば断定、終止形(ラ変は連体形)に付けば伝聞推定です。たとえば「男なり」は体言接続なので断定、「鳥の声すなり」は終止形接続なので伝聞推定(声がするようだ)と判断します。伝聞推定は聴覚に関わる場面で多く使われる点も手がかりになります。
「べし」の意味(推量・意志・可能・当然・命令・適当)
「べし」は文脈によって多くの意味を持ちます。主語が一人称なら意志、二人称なら命令・適当、三人称なら推量・当然と傾向をつかむと判断しやすくなります。打消「べからず」とともに「禁止(〜してはならない)」になる点も頻出です。
「る・らる」の四つの意味
「る・らる」は受身・尊敬・自発・可能の四つを持ちます。下に打消や反語があれば可能、心情語(思ふ・泣く・案ず等)に付けば自発、動作の主が目上で敬意の対象なら尊敬、それ以外で「〜に〜される」となれば受身、と順に当てはめると整理できます。
敬語から主語を見抜く方法
古文最大の壁である「主語の省略」を突破する鍵は敬語です。古文では身分の上下で使う敬語が決まっているため、敬語の種類を見れば「誰の動作か」「誰への動作か」が逆算できます。
- 尊敬語(給ふ・おはす・のたまふ等)…動作をする人(主語)への敬意。主語が身分の高い人だと分かる。
- 謙譲語(奉る・聞こゆ・参る等)…動作を受ける人(相手)への敬意。「誰に対してか」を示す。
- 丁寧語(侍り・候ふ)…読み手・聞き手への敬意。会話文・手紙文で多い。
たとえば帝と臣下の場面で「のたまふ(尊敬)」とあれば、その発言の主は帝だと判断できます。逆に「奏す」という最高敬語が出てきたら、その動作の相手は帝・上皇であると確定します。敬語の方向を意識して読むだけで、主語把握の精度は大きく上がります。
和歌の修辞法を素早く見抜くコツ
共通テストでは本文中の和歌が心情把握の核になります。修辞法を知っていると、和歌の二重の意味を読み取れて、内容説明問題で大きく差がつきます。代表的な技法を押さえましょう。
- 掛詞…一つの音に二つの意味を重ねる。例:「まつ」に「松」と「待つ」、「あき」に「秋」と「飽き」。ひらがな表記の箇所は掛詞を疑う。
- 縁語…ある語と関連の深い語をちりばめる。例:「糸」に対して「乱る・縒る・切る」。
- 枕詞…特定の語を導く五音の決まり文句。例:「ちはやぶる→神」「あしひきの→山」。訳さないのが原則。
- 序詞…ある語を導くための前置き。多くは七音以上で、訳に反映させる。
- 本歌取り…有名な古歌の表現を取り入れて重層的な意味を持たせる。
和歌が出てきたら、まず「詠み手は誰か」「誰に向けた歌か」を確認し、次にひらがなの多い部分から掛詞を探すと効率的です。掛詞が分かると、表向きの景色(景)と心の中(情)の二重構造が見え、心情問題が解きやすくなります。
ミニ練習問題(解答つき)
ここまでの内容を確認できる短い問題を用意しました。本文を読むつもりで、まず自分で答えを考えてから解答を見てください。
問1 次の傍線部「うつくし」の意味として最も適当なものを選べ。
「ちごの、ひひなを取りて見せたるを、いとうつくしと思ふ。」
(ア)端麗で美しい (イ)かわいらしい (ウ)気の毒だ (エ)見事だ
問2 次の傍線部「なり」は断定・伝聞推定のどちらか。
「物のけはひして、人の来(く)なり。(=物音がして、人が来るようだ。)」
問3 次の「れ」の意味(受身・尊敬・自発・可能)を答えよ。
「故郷のことが思ひ出でられて、涙ぞこぼるる。」
問4 和歌「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む」の「まつ」に掛けられた二つの意味を答えよ。
【解答】
問1=(イ)かわいらしい。小さい子どもがひな人形を見せるかわいらしい場面で、現代語の「美しい」ではない。
問2=伝聞推定。カ変動詞「来」の終止形「く」に「なり」が付いており(終止形接続)、物音という聴覚にもとづいて「人が来るようだ」と推定している。これが体言や連体形に付く「男なり」「来たるなり」なら断定になる点と区別する。
問3=自発。「思ひ出づ」という心情語に付き、「自然と思い出されて」の意味になる。
問4=「松」と「待つ」。「いなば(因幡/往なば)」も掛詞で、在原行平の有名な歌である。
よくある質問(Q&A)
Q1.古文単語は何語覚えればいいですか。
A.共通テストレベルなら市販単語帳の300〜500語で十分対応できます。まずは頻出の200語を完璧にし、過去問の本文で出会った語を補強していくのが効率的です。英語ほど語彙量は必要ありません。
Q2.文法はどこまでやればいいですか。
A.用言の活用、助動詞の意味・接続・活用、主要な助詞、敬語の三分類を押さえれば土台は完成です。特に助動詞の識別は配点に直結するので、識別問題を繰り返し演習してください。
Q3.本文の主語がどうしても分かりません。
A.敬語の方向と助詞「を・に・が・の」、接続助詞「て・して(同じ主語が続く)」「を・に・ば(主語が変わりやすい)」を手がかりにしてください。リード文と注釈の人物関係を先に整理しておくことも有効です。
Q4.古典常識は必要ですか。
A.必要です。当時の結婚(通い婚)、官位、年中行事、出家の意味などを知っていると、行間が読めて選択肢の判断が速くなります。単語・文法と並行して、古典常識のまとめも一読しておきましょう。
Q5.過去問はいつから始めればいいですか。
A.基礎単語と文法を一周したら、できるだけ早く始めてください。共通テスト本試・追試、試行調査、各社の予想問題集を使い、必ず時間を計って解くことで、本番のリズムが身につきます。
まとめ
共通テスト古文を一言で表すと、「200点中45点の配点で、出題形式が安定している得点源にしやすい分野」です。出題傾向を把握し、適切な対策を行えば、短期間で8割以上の得点を狙えます。
攻略の核心は四つです。第一にリード文・注釈を必ず最初に読むこと、第二に主語を補いながら本文を読むこと、第三に選択肢を本文の根拠で1つずつ照合すること、第四に過去問演習で時間配分のリズムを体に染み込ませることです。
共通テスト古文は、英語のように膨大な単語を覚える必要がなく、300〜500語の古文単語と基本文法、そして読解の練習で十分対応できます。古典常識・和歌の修辞法も並行して押さえれば、安定して高得点が取れるようになります。当ブログには個別の文法・識別記事や、古典常識・和歌の修辞法の総まとめ記事もあるので、合わせて活用してください。共通テスト古文を得点源に変えて、国語全体の点数を底上げしましょう。
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